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「あ、あれ……?」
突如、周りの雰囲気が変わった。少女が窓辺に手を置いたその瞬間に。
驚いた少女は、歌を口ずさむのを止めた。
すると、その歌を引き継ぐように、空から別の歌声が聞こえてきた。
白い影が、遠くから近づいてきた。それは、近づくにつれ、はっきりとした形をもちはじめた。丸い耳、小さなしっぽ、まんまるな目……クマのぬいぐるみだ。
「グルー……!?」
少女は、泣きそうになりながらも、必死でその姿を目に留めた。そして、これは白昼夢だということを悟ったのだ。
「……」
グルーは無言で近寄ってきた。
身軽に、全ての重荷を降ろした風のように。
少女は窓を全開にし、隣の屋根にいるグルーに向かって叫んだ。
「ごめん!ごめんねっっ!
今まで、悲しい思いをさせて……!
本当にごめん……!
……6年間、私なんかと遊んでくれて……本当に、ありがとう……。
もっと楽しい思い出、作れたら良かったのにね……。
ごめん、ね……」
少女はひざをついて泣いた。もう、自分の力では、溢れてくる涙をどうすることもできなかった。
そのとき、グルーが寄ってきて、少女をぎゅっと抱きしめた。
「……ボクは、幸せだったよ。とっても。
だから、そんなに泣かないで。そんなに謝らないで。
キミは、覚えてないの?
いっぱい、ボクと遊んでくれたよね……?」
グルーが少女の額に触れた。そのとき、少女の全ての記憶がよみがえった。