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6年前の夢の続きを見た  作者: NUTTY
プロローグ
2/4

6年後

 ある、夜のこと――


 15歳になった少女は、夢を見た。

 ベッドの下で、何かを見つける夢を。

 

 それは、暗闇の中で長い間、独りぼっちで少女を待っていた。

 埃にまみれ、黒く汚れてしまった白い体。ねずみにかじられ、ボロボロになった丸い耳。

 久しぶりに照らされた光の中、そのクマは、悲しそうなピンク色の瞳で、少女を見つめていた。

 電池は、切れていなかった。


 <<久しぶり>>

 

 画面にはそう表示された。


「わぁ……懐かしい……!」

 

 少女は感嘆の声をあげ、グルーを抱いた。


「あぁ、あぁ、こんなになっちゃって。

 小さい頃はよく遊んでたのに、いつの間にか、なくしちゃったのよね……。

 でもまさか、ベッドの下で見つけるとは思わなかったなぁ~!」


 画面の中のグルーは、空腹マークを出して食べ物をねだっていた。そして少女は、あることに気付く。


「ん?この数字、何だろう?

 ……『あと0日0時間03分』?」


 それは、ゲーム画面の右上に表示されていた、謎の数字。

 1分ごとにその数字は減っていき、いずれ0になるようだ。


「もしかしてこれって、制限時間……?

 ……育成ゲームなのに、そんなの、あるんだ。」


 グルーとは、あと1分でお別れ。そう考えると、何だか別れが名残惜しくなった。


「たかがゲームだったけど、今まで何もしてやれなかったなぁ~。

 ……育成ゲームなのに、食べ物は安物ばっかで、お散歩にも行かなかったし……。

 そして、何より6年間ずっと放置されて……。例えゲームでも、グルーは寂しかっただろうな。

 もっと、楽しくて充実した生活を送らせてやりたかったよ……。」


 少女は後悔した。そして、それゆえに、あることを思いつく。


「そうだ。もう一度、最初っからやり直せるかな。リセットしてさ。

 ……うん、そうよ!できるかも!

 これをクリアしたら、リセットしよう!

 グルーにもう1度、最高の人生を送らせてやるんだ。」


 少女はその考えにとても満足したようで、まもなく1回目のゲームクリアを果たすグルーを抱いて、静かに目をつぶった。

 

 ピピーッ


 そのとき、小さな電子音が鳴り響いた。


 画面に表示されたのは、


 <<今までありがとう>>


 

 



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