6年後
ある、夜のこと――
15歳になった少女は、夢を見た。
ベッドの下で、何かを見つける夢を。
それは、暗闇の中で長い間、独りぼっちで少女を待っていた。
埃にまみれ、黒く汚れてしまった白い体。ねずみにかじられ、ボロボロになった丸い耳。
久しぶりに照らされた光の中、そのクマは、悲しそうなピンク色の瞳で、少女を見つめていた。
電池は、切れていなかった。
<<久しぶり>>
画面にはそう表示された。
「わぁ……懐かしい……!」
少女は感嘆の声をあげ、グルーを抱いた。
「あぁ、あぁ、こんなになっちゃって。
小さい頃はよく遊んでたのに、いつの間にか、なくしちゃったのよね……。
でもまさか、ベッドの下で見つけるとは思わなかったなぁ~!」
画面の中のグルーは、空腹マークを出して食べ物をねだっていた。そして少女は、あることに気付く。
「ん?この数字、何だろう?
……『あと0日0時間03分』?」
それは、ゲーム画面の右上に表示されていた、謎の数字。
1分ごとにその数字は減っていき、いずれ0になるようだ。
「もしかしてこれって、制限時間……?
……育成ゲームなのに、そんなの、あるんだ。」
グルーとは、あと1分でお別れ。そう考えると、何だか別れが名残惜しくなった。
「たかがゲームだったけど、今まで何もしてやれなかったなぁ~。
……育成ゲームなのに、食べ物は安物ばっかで、お散歩にも行かなかったし……。
そして、何より6年間ずっと放置されて……。例えゲームでも、グルーは寂しかっただろうな。
もっと、楽しくて充実した生活を送らせてやりたかったよ……。」
少女は後悔した。そして、それゆえに、あることを思いつく。
「そうだ。もう一度、最初っからやり直せるかな。リセットしてさ。
……うん、そうよ!できるかも!
これをクリアしたら、リセットしよう!
グルーにもう1度、最高の人生を送らせてやるんだ。」
少女はその考えにとても満足したようで、まもなく1回目のゲームクリアを果たすグルーを抱いて、静かに目をつぶった。
ピピーッ
そのとき、小さな電子音が鳴り響いた。
画面に表示されたのは、
<<今までありがとう>>