やめないでね
「絵が描けないの」
昔は何も考えないでただ好きな絵を書いてたのにね。今はその絵を描く意味とか上手いとか下手とかそんなことばかり考えている。
余計なことばっか。だからかな。
何も思い浮かばないんだ。描きたいものが。何も思い浮かばないんだ。
筆も動かせない。
幼い頃わたしの見る夢はあんなにも鮮明だったのに、だんだんとかすれていってしまってわからなくなってしまうのが怖くてたまらないんだ。今じゃモノクロ映画のように。このままいったら、透明になって、夢さえ見なくなってしまうのかな。
描きたいから描いてたのに、いつからこうなってしまったんだろうね。
あの頃はただ絵を描くだけで良かったんだ。ただ絵を描くだけで、私は幸せだった。
描きたいのに理由なんかいらなかったのに。
筆をとる。だけど、何も描けない。そうしてまた絶望する。
悲しい。
苦しい。
「描きたいのに、描けない」
みじめでどうしようもなくなって、ついに筆をおいた。
このまま、筆を捨ててしまおうか。臆病な魔物の声がする。そうしたら、楽になれるんじゃない。
……そうかもしれない。ああ、でも
「わたしは絵が描きたいの」
そう口にした瞬間わたしの中で迷いが消えた。
わかったんだ。
どんなにつらくても絵が描けなくても、それでもやっぱりわたしは絵が描きたいんだって。
よし。
わたしはもう一度、筆に手を伸ばした。
まともに小説を書いたのはこれが初めてです。が、はたしてこれは小説といえるのか。
ここまで読んで下さってありがとうございました。