第2章”英雄、再び”
ありのままに、今起こったことを話そう。
・眠らされて拉致されて気づいたら地下牢だった。
・しかも、ゲームの中らしい。
・魔王を倒せ とか言われた。
どうなってるんだよ一体・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
「で、そういうわけでこのオルタナにお連れしたわけです。」
一応のざっくりとした事情を話し終え、目の前の女―アル―は満足げに胸を張った。
(・・・・・・いや、何そのドヤ顔
まあ、はっきり言ってわけがわからない。
ここがゲームの中の世界だとか言われてる時点でもう俺の思考回路はショート寸前なのだが・・・・・・。
(魔王・・・・・・か。
再び甦り、世界を蹂躙し始めた新たな”魔王”。
その魔王から世界を救うため、かつて先代の魔王を打ち倒した俺に白羽の矢が立ったわけで。
それで、俺は再びこの世界に連れてこられた。
以上が、先ほどまでに繰り広げられた
アルさんのとても分かりやすい解説(自称 の全容である。
(いや、そもそもゲームの中に”連れて”来るってどういう・・・・・・
と、俺がずっと腕を組んで考えをまとめようとしていると・・・・・・
「あの、ライナさん。聞いてます?」
隣のアルが不機嫌そうに顔を傾げて言ってくる。
まあ、事情の説明を終えてからは、やれ今流行りのファッションだとかおすすめのモンスターグルメだとかくだらない話をし出したのでずっとシカトしてるのだが・・・・・・
(・・・・・・この体、感覚とかは偽者のようには思えない。
「あの、ライナさん?」
・・・・・・・・・
(しかし、なんだろうな?さっきからずっと、こう、肩が凝ってるような?感じがする。
「ライナさんっっっ!!!!!!!」
ぐわっ!
「うをっ!?」
胸倉をつかまれて叫ばれるまで、ずっとアルのことを無視していた。
「私の話、ちゃんと聞いてました?」
笑顔。凍りついた空気を纏った笑顔で、アルはそう尋ねてくる。
コクコクコクコクコクッ!
俺はただ無言で何度も頷いた。
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
さて、
この物語を始める前に、話しておかねばならないことがあるな。
半年前。俺が魔王を
初代魔王を倒したときの話だ。
・・・・・・
ある理由から、魔王を倒すほどの実力を得た俺はプレイ時間150時間を越えたとき、
街で補給をすませると、すぐさま魔王と会えるフィールド上へ向かった。
そして、まあ、勝った。
そうして、伝説的とも言えるだろう、だが誰にも知られることのない記録を打ち立てた俺は、
戦闘終了後の経験値処理とアイテムドロップ処理がおわると、すぐにメインメニューを開き
ログアウトボタンを押した。
その後、オルタナの地を踏むプレイヤーは誰も居なかった。
なので、魔王が倒された、その後。
その後の世界の行く末を知る者は、文字通り誰も居ない。
ただ一人それを見る権利を手にした青年は、
その権利をゲームで得た莫大な経験値やアイテムごと投げ捨てた。
そして俺は、二度とこのゲームを起動することは無かったのだが、
どういうわけか、また、ここにいる。
(ったく・・・・・・。何の因果なんだか。
思わずため息が出る。
この世界で目覚めてから何度目のため息だろうか。
(まあ、しゃーなしだな。
・・・・・・・
いつものように。
いつものように彼は割り切って、前を見てすすむ。
それしか出来ない。それしか知らない。
(取り敢えず情報収集からかな。
まあ、アルさんの分かりやすい解説(自称)だけでは全く足りないわけで。
英雄 ライナ・エドワード
オルタナの地 ユクモ村。
その地下牢にて、活動を再開。
まだ、彼の、彼らの冒険は、始まってもいなかった。
「何じゃこりゃああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!?????」
地下牢に、絶叫が響き渡る。 ・
体を拘束していた縄がアルによって解かれ、一応確認用に、とアルが取り出した鏡をみて、俺は言葉を失い、次の瞬間に先ほどの叫び声をあげた。
鏡に映っているのは、どうみても
どうみても、美しい女性の姿だった。
・・・・・・・・・
そう、まるでCGのように整った顔立ちの美しい少女が、鏡には映っていた・・・・・・。
英雄 ライナ・エドワード(♀)
オルタナの地 ユクモ村。
その地下牢にて、活動を再開。