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第1章”Angel Strike!”

――俺がこのゲームの存在を知り、ただ一人のプレイヤーとしてログインするようになった、2036年の8月――


それは、サービス開始からおよそ半年後の

馬鹿みたいに蒸し暑い季節のことだった。


MMORPG・・・・・・

それは、ネット上で多くのプレイヤー達が同時に同じゲーム世界上を冒険できる

いわゆる「多人数参加型オンラインゲーム」

そのRPG版である。

電子機器会社である「アーガマ」から提供された、

「Angel Strike!」略して「AS」というタイトルも、そのMMORPGのひとつとして

サービス開始直後は結構な人気を博していた。

超大型サーバー『アトス』を搭載したその最新鋭のゲームは、まさに革命と呼んでいいほどのグラフィック

及び操作性を実現させ、自分の手足のようにキャラクターを動かせるとあって、

多くのゲーマーを魅了した。


――が。

サービス開始から約2週間後。

突如、当時最高ランクに位置していたプレイヤーが魔物に討ち倒され、

レベル及びアイテム等を初期設定に引き戻される――通常、魔物に倒された場合は多少のデスペナルティが発生するものの、

普通はステータスの微量な減少及びアイテムのランダムドロップ等、あまり厳しいものではないのだが――という事件が発生。

この異変を、そのプレーヤーはすぐさまGMに不具合として訴えたが、

こともあろうに、GM側からの回答は「それが仕様です。」というものだった。

そうして最初の犠牲者が出た直後から、この「Angel Strike!」というゲームの本質がさらけ出されていく。

まず、初期設定に戻されたプレーヤーを襲ったのは、通常のモンスターとは異なるということ。

――これはまあ、デスペナルティが重過ぎるという点から察することは出来るが。――

これはサービス開始時には明かされなかったシークレットの仕様である

『魔王の襲撃』という必起イベントのせいである。

これはプレイ時間が150時間に達したプレイヤーに起こる、回避不可の強制イベントとなっているのだが

内容がとにかくエグい。

=========================================================

・プレイ時間150時間を越えてフィールドを探索していると、『魔王』とエンカウントする。

・戦闘では、『逃げる』という選択肢は使えない。

・魔王に倒されると、デスペナとしてレベル等のステータス及びアイテム情報が初期化される。

・魔王のレベルは80である。

=========================================================

まあ、『レベル』というのは知ってのとおり、

そのキャラクターの『強さ』を表すパロメータなのだが

80というのは、明らかにプレイヤーの手には負えない数値である。

ゲーム廃人と化して、レベルがカンストしているような異常なプレーヤーキャラならともかくとして、

しかも150時間という制約が設けられている以上、

絶対にレベルがそこまで上がるという事にはならない。

実際、最初に殺されたプレーヤーはその時レベル18で、魔王には出会って3秒で殺されていた。


――とまあ、明らかにゲームバランスが崩壊してるだろオイ という批判が絶えず

しかしどういうわけか仕様が改善されるでもなく

次第にこのゲーム”AS”は、ユーザーの間で「史上まれに見るクソゲー」として評判となり、

やがて次々とユーザー数は減少していき、

結局誰も魔王倒した先の展開を拝むことなく

ついにログインプレーヤーが一人もいなくなってしまったのが、サービス開始からおよそ半年後


――俺がこのゲームの存在を知り、ただ一人のプレイヤーとしてログインするようになった、2036年の8月――


それは、サービス開始からおよそ半年後の

馬鹿みたいに蒸し暑い季節のことだった。



・・・・・・・・・

・・・・・・

・・・






「んで、これは一体どういう状況なんですか?アルさん。」

・・・・・・俺は、ゲームの中(?)にある何か牢屋的な場所で、縛られた状態でいた。

取り敢えず状況が全く読めないので、目の前に居る少女に事情の説明を請う。

「いえ、暴れられると困るので取り敢えず縛って地下牢でお話しすることにしたのですが」

「俺はモンスターか何かか?」

冷静なツッコみをお見舞いしてやる。すると

「嫌ですね。あなたが暴れたらむしろモンスターよりタチ悪いですよ?」

さらに冷ややかな、いや、むしろ嗜虐的な笑みを湛えて少女は返してくる。

「・・・・・・・・・・・・。」

「話を続けて構いませんか?」

「・・・・・・はい。」

最早口で何を言っても勝てそうになさそうだったので、もう相手に任せることにした。

そしてアルは口を開き、ここに至る経緯を話しだした。










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