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第44話 夜・ボトル子と進捗報告と明日への予感

夜。お腹がすいた。今日いっぱい動いた。動いてないか頭だけ。タッチパネルでカレーライス注文。カレー!


ウィーンとトレーが出てくる。カレーとスパイスの匂い。


出てきたカレーライスめっちゃ美味しそう。休息日の締めはカレー!


スプーンですくって一口。美味しい!辛い!ルーが濃厚。明日からまた頑張るぞっていう気持ちになる!お肉も大きい。お肉ゴロゴロ入ってる!


もぐもぐ食べながらも私は専門書から目が離せなかった。読みたい。本を開きながらカレーを食べる。ながら食べ。ページをめくる。これも面白い。知らないテクニック、新しい発想。へぇ、そうやるんだ。私のやりたいことがこの本の中に全部書いてある。すごい、すごいよ。


カレーを食べ終わって口を拭く。ごちそうさまでした。


ボトル子に興奮気味に話しかけた。


「ボトル子、これ見て、興奮する!」


「この本、宝の山だよ!もっとリアルなモデルが作れるかもしれない!」


一人で興奮。本を見せる。


「ほらここ見て!このテクニック使えそう!」


ボトル子はにっこりと笑っている。そうだよね、わかってくれる。


でもふと思った。今まで私どれくらい進んだんだろう。


私はこれまで自分が作ってきた時間の化石(タイム・フォッシル)をもう一度見返してみることにした。全部見てみよう。フォルダを開く。港、学校、アパート、発電所、給水塔、防波堤。いっぱい作ったな。一つ一つはそれなりに上手くできている。頑張った。でも島全体で見るとどうなんだろう。全体で見たら。バラバラなのかな。


私はこれまでのデータを一つのプロジェクトにまとめて、統合処理をかけてみることにした。港、学校、病院、市場——全部入れて、実行ボタンをクリック。


PCがこれまでで一番大きな唸りを上げた。


「壊れる!?壊れないよね!?」


プログレスバーは亀の歩み。数時間後、ようやく——ピコン。


画面に現れたのは、軍艦島の、まだ不完全なミニチュアモデルだった。


「おお……」


歯抜けだらけ。穴だらけ。あちこちに空白。でも——島だ。島の形になってる。軍艦島だ。


マウスでぐるぐる回す。港がある。学校もある。病院も。


感動。


私ここまで作ったんだ。


進捗を計算してみる。えーっと。全70棟の建物のうちまだ15棟くらいしか終わっていない。15棟。進捗20%ってところかな。


まだ20%。先はまだまだ長い。あと80%。でも絶望はなかった。無理じゃない。きっと無理じゃない。


ボトル子に話しかける。


「ねえボトル子、見て」


画面を見せる。


「島のミニチュアモデルできたよ。まだ20%だけど。あと80%。うん、無理じゃないきっと無理じゃない」


ボトル子は笑ってる。


「そうだよね、頑張れるよね」


私はボトル子と、そして自分自身に力強く言い聞かせた。この本棚の知識があれば。専門書を見る。残りの80%はもっとすごいものになるはずだから。もっといいものが作れる。拳を握りしめる。頑張る。


3番さんにも報告。


「3番さん、見てる?20%まで来たよ。あと80%、頑張るね」


そして、ふと思い出す。昨日の足跡。ペットボトル。


「誰か……いる……」


この島に私以外の誰かがいる。その人は誰なんだろう。明日、もっと探してみよう。いや、探さなくても、きっと。


「きっと、また会える……気がする……」


なぜかそう思った。


【残り日数:16日】


画面の数字を見る。赤い数字。冷たい数字。


あと16日。


休息は次へのジャンプのための準備期間だ。明日からまた頑張る。もっといいものを作る。そして、もしかしたら。


「もしかしたら……その人に……会えるかも……」


ううん。会うだけじゃない。話してみたい。何者なのか、いつからいるのか、聞いてみたい。


でも——どうやって? 声は届かない。近づこうにも、間には崩れた建物と、海風と、百メートルの距離がある。


「手紙……でも、どうやって渡すの……」


方法は、まだ分からない。それでも、明日からの島歩きに、一つ目的が増えた。撮ることと、もう一つ。あの人に、近づくこと。


おやすみ3番さん。おやすみボトル子。


今夜も一人じゃなかった。そして明日からは、本当に一人じゃないかもしれない。


静寂が、部屋を包む。

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