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第13話 トイレは我慢しない方がいい

「それでは学園生活の説明をする前に、五分の休憩とする」

 ディアマンテの言葉と共に弛緩する教室内。


 改めてチームメンバーを確認するが――


 男性恐怖症(カボチャパニック)に、無痛覚者(ノー・ブレイカー)と、二名の保健室案件を擁し、

 エリートの皮を被った乙女(ポンコツ)を一名配備した、我が六班。

 見れば見るほど、終わった感があるな。


 そんな中この六班、唯一の癒し。幼女のハイネへ声をかける。


「おーいハイネ。俺たちがこの班を支えていこうなー。他はあんな感じだし……って、え?」


 歩み寄った俺に、ハイネはキャピっと笑顔。

 だがな、ハイネ。聴力に関しても常人を遥かに超越した魔王様の地獄耳を舐めるなよ? 喉の奥から漏れ出た本音、全部筒抜けなんだわ!


(……はぁ? 何この黒髪、さっきから距離感バグってね? 馴れ馴れしく話しかけてくんな。マジ不快、酸素の無駄。このゴミ班、初手で減点とか地雷踏み抜きすぎだろ。頼むからハイネを巻き込まないでほしいんだけど。……あとお前、調子に乗ってマジファック。秒でぶっこだわー)


 こら、クソガキ。

 毒のキレが幼女のそれじゃねーんだよ!


「おい、ハイネ!」

「は、はい!? なんでしょうかダイチさん」


 ハイネは即座に表情を切り替え、首をコテンと傾けてみせる。


「いや、俺のこと酸素の無駄とか言わなかったか? ゴミ班とか、地雷とか。全部聞こえてんだけど?」

「ふえぇ!? ハイネ、そ、そんな怖いこと言わないでっす……」


 足は内股、胸の前で小さな手を握りしめ、


「なあおい、秒でぶっこしてもらおうか?」

「ハイネは仲間じゃないですか。どうしてそんな酷いこと……」


 上目遣いで目を潤ませ、


「それを言いたいのは俺の方なんだが?」

「折角一人っ子のハイネに……お兄ちゃんができたと思ったのに……う、ううう」


 ついには顔を覆い、大声で泣き喚き、


「うわああああああん。ダイチお兄ちゃんがいじめるよおおおおおお――っ!」


 教室内の視線を独り占めにした。


「ちょ、お前ふざけんな! あとお兄ちゃんってところをもう一回!」


 必死の抵抗虚しく、お兄ちゃんが妹を泣かすと……、


「ちょっとドン引きなんだけどダイチ。セシルに続いて今度はハイネ? あんた問題を起こし続けないと死ぬの? いい年して子供を泣かすんじゃないわよ!」


 どんなに非が向こうにあろうとも、あなたはお兄ちゃんなんだからね!

 で、一件落着である。


 シータを味方につけたハイネは顔を覆い、表情を隠しながらも、俺の視線に飛び込んできた口角だけは感情を隠せていなかった。


 駄目だこの班(こいつら)。誰一人としてまともな奴がいない。


「よし席に着け!」

 ディアマンテが手を打ち鳴らし、再び教室は静まり返る。


「先ほどの話で仲間の大切さについて少しは理解してもらえたと思う。実際に勇者として魔王討伐の任に就いた場合、君らはそんな仲間と共に広い大地を行軍し、街を巡り、行く先々で人々を救い、艱難辛苦を乗り越え魔王城へとたどり着き、巨悪と戦うわけだ」


 あ、ごめんなさい。魔王さんってば既にここにいます。


「それを可能にする根底にあるのは、仲間との共存と共生。つまりは絆だ。よって、諸君らには、そんな絆を深めるためにもチームごとに一つ屋根の下で寮生活を送ってもらう」


 ラブコメ展開キタ――ッ! 

 なんてようやく訪れた、お風呂でバッタリフラグに浮かれたのも束の間。


 カボチャ……、

 毒舌……、

 ポンコツ……、


 六班の……いや、コメディー班の奴らを舐め回すように見ていき、すぐさま頭を抱えることになった。


 ラブ要素……どこいった?


「自炊に始まり掃除洗濯。普段の生活すべてを五人で協力して行うように。抜き打ちで寮を見回るからな。もちろん、その結果如何で、加点もあれば減点もあるぞ」


 項垂れる俺を蔑ろに、粛々と話を進めるディアマンテが取り出したのは、

 ルームキー。


「それでは各班のリーダー、取りにこい」

 その言葉に凪の教室が僅かにそよぐ。


 リーダー。つまりは、各班の代表者。

 今にして思えば、五分の休憩はそれぞれの立ち位置を決める時間だったのか。

 もちろん、各班、リーダーを決めてる様子などなく、顔を見合わせる。


 ――六班以外は。


 シータはさも当然のように席を立ち、


「六班リーダー、シータ。ルームキーを受け取りに来ました」

 声高らかにリーダーとして自らを表明した。


「六班に加点1ポイント」

 ディアマンテは加点を告げると、


「六班以外は何をしている。今この場に魔物が襲いかかってきた場合、指示は誰が出す? 戦う、逃げる、その決断は誰が行う?」

 顔を見合わす残りの五組を戒める。


「対して、六班は既に不測の事態に対する心構えができていた」


 あ、先生? それ違います。この人、相談もなく勝手に行ったんですよ。


「リーダーとして誰よりも素早く魔物の前に立ち塞がる。今のシータのように。それがリーダー足りえる素質だ」


 違うんです。買い被りです先生。

 この人リーダーという言葉に自然と体が反応しただけなんです。


「ディアマンテ先生。よしてください。仲間のために真っ先に命を懸けるなんて当然のことじゃないですか。むしろもう死んでもいい。さあ私を殺してください」


 お前もちょっと落ち着けって! ルームキーを貰うだけで死ぬ勇者がどこにいる。


「その心意気。アルスの血がなせる業かも知れないな。シータに拍手を!」


 ちょ、先生もうやめて。あ、ほら。シータが目も虚ろにプルプル震えてる。

 これ以上褒めるとこいつ、うれションをしかねない!

 足を内股、吐く息粗く、席に戻ってくるシータ。


「これは一本取られたねぇ~」

「はぁはぁ」

 チャドはお手上げのポーズで出迎え、


「し、シータさん、す、凄いです!」

「はぁはぁ」

 セシルは羨望の眼差しを向け、


「お帰りなさい! ハイネたちのリーダーッ!」

「…………んっ、あ?」

 ハイネに止めを刺され、


 シータはトイレに駆け込んだ。


 うん。


 もーダメだ、この班。

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