第2部 第6章:白峰の正体
シーン6-1:静寂の中の気配
内部告発の準備が進む中――
リアナは一人、古い倉庫に立っていた。
夜勤明けの工場は静まり返り、薄暗い蛍光灯がわずかに影を揺らしている。
その時、背後に柔らかい声が落ちた。
「お疲れですね、リアナさん」
白峰だった。
いつもの笑顔。だが、今夜はその奥に、深い闇が揺れていた。
リアナは身構える。
「何の用ですか?」
「あなたに興味があってね。
この社会で異質に輝く…そう、“光”のような存在だ」
その言葉の直後、空気が震えた。
じわり、と肌にまとわりつく冷たい圧。
(魔力…!?
この世界の人間が持つはずのない…)
白峰はゆっくりと微笑んだ。
「気づいたようですね。
私は――あなたの故郷と、深く関わる者ですよ」
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シーン6-2:異世界の記憶を持つ男
白峰は静かに語り始めた。
「私は“以前の世界”で、君と同じく異能を研究する部署にいた。
世界の歪みを観測し、境界を調べる組織だ」
リアナは驚きを隠せなかった。
「あなたも…異世界から来たのですか?」
「いや、違う」
白峰の声は淡々としている。
「私は“境界そのもの”を管理する側だった。
異世界からの干渉を監視し、必要に応じて排除する」
つまり――
異世界要因を“危険物”として扱う組織の人間。
リアナは理解した。
(白峰がルカを狙うのは…
彼女の正体を知り、“消去対象”だと判断しているから)
白峰は薄い笑みを浮かべる。
「この会社の改革も、現場の混乱も…
異世界由来の力を持つ者を炙り出すための準備だ」
その冷徹さは、異世界よりも恐ろしかった。
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シーン6-3:狙われるルカ
「君が守っている少女――ルカさん」
白峰の声は淡々としているのに、殺気を帯びていた。
リアナは無意識に拳を握る。
「彼女は“観測外転移者”だ。
普通なら転移直後に境界側の検知が働くが、記録がない」
リアナは息を呑む。
「それは…誰かが意図的に隠したから?」
白峰は目を細めて頷く。
「そう。君の故郷か、あるいは別の世界の力が介入している。
だからこそ、私は彼女を危険視している」
リアナの胸に強烈な怒りがこみ上げた。
(ルカが怯えながら生きてきた理由は…あなたが作った恐怖のせい)
白峰は一歩近づき、耳元で囁く。
「“不要な者”は、排除しなければならない」
リアナは静かに言った。
「…なら、あなたのその判断を止めるのが、私の役目です」
倉庫の空気が一気に張りつめた。
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シーン6-4:光と闇の衝突前夜
白峰は微笑んだ。
「いいでしょう。
いずれ“境界”が動き始める。
君も、少女も、この世界にいられなくなる」
そう言い残し、白峰は静かに闇に溶けるように姿を消した。
まるで、存在そのものが霧に溶けたかのように。
リアナは一人、倉庫で立ち尽くした。
魔力の痕跡がまだ空気に残っている。
(異世界と現代が…同時に動き始めている)
――守らなければ。
ルカを。仲間を。
この世界で共に働く者たちを。
リアナは拳を握り、決意を胸に刻む。
“戦いは避けられない”
それは、現代社会の闇と異世界の影が交差する、
大きな物語の幕開けだった。




