第2部 第1章:新入りの謎
シーン1-1:新しい派遣社員
春の柔らかな日差しが工場の敷地を照らすその朝、組合事務所に一本の連絡が入った。
「今日から、新しい派遣の子が来るそうだ」小林が書類をめくりながら言う。
リアナは少し胸を高鳴らせた。
新しい仲間が加わることは、職場の空気を変える。
それは改善にも混乱にもつながる。
“現代社会の変動要因”を、リアナは慎重に観察しようとしていた。
点呼が始まると、小柄な少女が緊張した面持ちで現れた。
「はじめまして…如月ルカです。よろしくお願いします」
その瞬間、リアナの心が微かに震えた。
(この気配…間違いありません。異世界の残滓…)
少女の瞳の奥に、魔力の微細な揺らめきが見えたのだ。
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シーン1-2:不可思議な感覚
朝礼後、リアナは休憩所でルカをそっと観察していた。
ルカの動きはぎこちなく、現代社会のルールに不慣れな様子が目立つ。
佐藤が眉をひそめた。
「新人にしては妙に周りを気にするな。迷子みたいだ」
「ええ…何か戸惑っている感じがします」
リアナは慎重に言葉を選んだ。
“異世界人”である可能性をそのまま口にすることはできない。
ルカはふいに機械のパネルを見てつぶやいた。
「魔導機…に似てる…」
リアナの指が止まる。
(やはり…彼女は異世界の記憶を持っている)
だが問題は、それが“味方”か“脅威”かだ。
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シーン1-3:危うい失敗
その日の午後、ルカはミスを連発した。
包装ラインのボタンを押し間違え、ラインが停止する。
周囲がざわつく中、ルカは顔を青くして震えた。
「ご、ごめんなさいっ…!」
森川が慌てて駆け寄る。
「まあ、最初は誰でも失敗するさ」
しかしリアナは別の違和感を覚えていた。
(ただの不慣れではない…機械の動き方に“異世界の感覚”で反応している)
まるで、魔導装置に対する“魔力の流れ”を読むような仕草。
それは、この世界では逆に混乱を招く。
リアナは静かに決意する。
「彼女を放っておけば、危険です。
でも…守らなければならない存在でもある」
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シーン1-4:二人だけの会話
夕方、仕事が終わりかけた頃。
リアナは意を決してルカに声をかけた。
「如月さん、少しお話できますか?」
ルカはびくりと肩を震わせる。
「わ、私…何か迷惑かけましたか…?」
「違います。ただ、あなたは――
この世界の人ではないのですよね?」
ルカの瞳が大きく見開かれた。
しばらく沈黙が続き、やがて小さな声が漏れる。
「…どうして、わかったんですか…?」
リアナは静かに微笑む。
「私も…かつてそうでしたから」
ルカの涙がひと粒、頬を伝う。
第2部の物語が、ようやく動き出した瞬間だった。




