どうして
これは、真広くんの物語です。
まずは自己紹介をしよう。俺の名前は溝口 真広いたって普通の高校1年生だ。
こんな自己紹介をしてなんだが、普通というのがいまいちよく分からない。ネットで調べてみても『いつ、どこにでもあるような、ありふれたものであること。』と、こちらとしてはいまいちよく分からない回答をされる。理解はできる、でもなにかが否定してくる。何が普通なのか、兄から暴力を受けることは普通なのか。
昔までは兄はとてもいい人だったと思う。
自分に優しくしてくれてお菓子を買ってくれるような兄だった。
しかし兄が中学生になり、世間一般的に言われる反抗期になってから変わった。
自分に対し気分が悪いことがあると暴力をふるい、
親に対しても学業面や生活面でいろんな迷惑をかけてきた。
自分も今述べたことにはしっかり出来たかについては頷けるものでもないが、
兄に関してはそんな自分が可愛く思えるほど、凄惨なものだった。
そんな兄は 地域未来留学 と言われる進学で地方の高校に進学した。
兄が遠くに行っていた3年間はまさに天国だった。
誰にも殴られることもなく、何にも縛られない自由な楽園と言っても差し支えないような生活だった。
ただしお盆や正月となってくると流石に兄も帰省してくるのでそこだけがストレスだった。
毎回帰って来るごとに殴られないようにしてきたがそれでも帰省期間に1回は必ず殴られてきた。
兄が大学生となり俺の自由な楽園生活は終わりを迎えた。毎日びくびくしながらの生活。ちょうど帰ってきたとき、自分が中学3年生という受験シーズンだったこともあり、自分があまり勉強しないことに兄が勝手に腹を立てて暴力を振ることなんて数え切れないほどあった。
「もっと勉強しろ」や
「母さんに迷惑をかけるな、気持ちを考えてやれ」
など当時の自分のことは棚に上げて俺に言いたい放題言ってきた。
そんな俺も偏差値50程の高校に進学し、家庭内とは違い楽しく高校生活を謳歌し、いい友達も出来て日々を楽しく過ごしている。
そんなときに兄は
「高校生活楽しいか?」、
「なにか辛いことないか?」
などいい兄貴ヅラをしてくる。こちらとしてはそのように見えることが心外だし、俺の人生を限りなく辛いものにさせた元凶が今更何言っているんだ、という心境である。いじめなどを心配しているつもりなんだろうがその発言によってこちら側が不愉快な気分になるということが分からないのだろうか。
今になっては家より高校のほうが楽しく過ごせるようになってきた。自転車で15分程の道を漕ぎ、今日も学校に行く。
「おっすーまひまひ。」
こいつの名前は北島 詩季 (きたじま しき)同じクラスの友達だ。
ちなみに俺は”まひまひ”というあだ名がクラスの中で定着している。
「詩季ちゃん勉強した?」
今はテスト期間なので、このようなテンプレと化した会話をする。
こういうとき人は基本全然勉強してないと言うのだが、
「全然してない笑」
彼も例に漏れずこのような回答をする。
「優くん勉強した?」と詩季がクラスメイトに話しかける。
「いや全く」彼の名前は 深山 優介 (みやま ゆうすけ)彼も同じクラスの俺の友達だ。
「どうする?今日教室残って勉強する?」
「いや、どうせ残ってもみんなでゲームするやん」
結局そう。どうせみんなで残っても遊ばないわけがないのだ。
「いやまぁ、それはそう。それはそうとなんで関西弁?」
別に関西弁かどうかは怪しいのだが一応質問されたので回答しておこう。
「あー、父さんが徳島出身だからその影響があるかも」
「へー、徳島ってどういうところなん?」
質問してきた本人も関西弁か怪しい発言をしているのだが、それは置いといて
「いいところだよ。まじで人生に1回はいったほうがいい」
正直自分でも過大評価しているかもしれないがおすすめしたい気持ちは本当なので正当評価ということに自分の中でした。
俺は自分のことをあまり話さない。
話す頻度で行ったら家族より友達のほうが倍以上多いと思う。
家族には最低限必要なことを話すか全く話さないのがほとんどだ。
いつから話さなくなったんだろう。 なぜ話さなくなってしまったのだろう。
自分のことでもわからないことはある。
人の気持ちが完全に理解できないように自分のことも完全に理解できているわけではないのだ。
今は地理の授業。地理の授業は視聴覚室で行い、教室がかなり広いのでゲームをしたり、学校で強制購入させられたパソコンなどで動画配信サイトの動画を見ている生徒がかなり多い。
自分もその生徒の一人なわけだが、名前の関係上席が後ろなのでバレることはほとんどない。
しかし今はテスト期間なので、内職をしなければならない。
今回の試験科目に地理はないため必然的に他の教科をするわけだが、勉強している途中でふと思い出す。
昔は勉強が好きだったはずだ。
親にもそのことで褒められていた。
いつから勉強が嫌になったのだろう。
そうだ。小学6年生からだ。
小学6年生のまさに卒業するタイミングで、俺は自分の意見も通せずに勝手に塾に入らされた。
一番酷かったのは卒業式の日にも授業が入っていたせいで卒業後、ロクに友達と遊べずに塾にいかなければならなかった。ここを皮切りに俺はどんどん勉強が嫌いになっていったんだ。
勉強なんて基本強制されるようなものではない。寧ろ何にも縛られない方が伸びやすい子もいる。
自分もそっち側の人間だと思っていたのだが、強制されたせいで勉強に対するモチベーションが低くなっていった。
小テストの結果や模試の結果などで一喜一憂する毎日。
点数を取るために直前で詰め込んだ短期記憶。
こんなんじゃ伸びるものも伸びない。模試の結果が悪かったら親に険しい顔をされた。
その顔をされるたびに俺はどんどん心が締め付けられていった。
「授業を終了しまーす。気をつけ。礼。」
気づいたら授業が終わっていた。
結局ロクに勉強ができなかった。昔のことを思い出していたらきりがない。
そろそろしがらみを断ち切って前に進むべきなのかもしれない。
でもこのしがらみは硬すぎる。いつか解放されることはあるのだろうか。
「この問題出そうじゃね?」そう優介が言う。
詩季と優介でテスト問題の予想をしているようだ。
「正直予想したところで先生の出題パターンがわからないんだから意味ないんじゃね?」
そう言うが、
詩季が「予想したところに先生が問題を出せば、学生冥利だろ?」
某育児放棄父のようなことを言い出したが、先生の出題パターンを予想するより範囲のところを演習したほうが確実に点数を取れると思うのだが口にするのはやめておいた。
俺は働いている。
といってもただの寿司屋のチェーン店でバイトをしているだけなのだが、
それでも週に11時間ほど働くだけで月に5.6万円もらえる。
学生にこの額は大金と言っても過言ではないのだが、
親に半分ほど徴収されるので残り2.3万。
月に3千円ほど小遣いをもらっているのだが高校生がこの額で足りるわけがないので5千円ほど。
使い残りは漫画など趣味に使うので殆ど残らなくなる。
親にはもっと貯金しろと言われるが、貯金できない元凶がどの口で言ってるんだと言いたくなる。
正直親に徴収されるくらいなら発展途上国の生活が苦しい子どもたちに分けてあげたほうがこちらとしてはよっぽど気分がいい物になる。
兄には彼女がいた。
”いた” なのでもちろん今は別れている。
一人目は高校生のときの学校の同級生で長く続き大学1年生の最後の方まで関係は続いていたが、
彼女の浮気が発覚し別れる形となった。
二人目は大学二年生から付き合いだした。
こちらは関係は長く続かなかった。
理由は知らないが気づいたら別れていた。
今その二人に会ったら一言言いたい。”兄と別れた判断は間違っていなかった”と。
兄は顔や性格の外面だけを見れば内向的でとても接しやすい人に見える。
が、間柄が近づくほどその凶暴性が出てしまうのだろう。
ある時、一緒にラーメンに行く予定だったが兄が急に行く気分じゃなくなったと勝手なことを言い出した。
ラーメンが食べられなくなって、不貞腐れている顔になったであろう自分の顔に兄は腹を立てたのか、
近くにあるお茶を俺の顔に浴びせてきた。
まず自分が悪いというのに誤りも悪びれもせず、ましてや約束を破った相手にお茶を浴びせるという一連の行動を見ても意味のわからない行動をしている。
このように兄は近しい人ほどその性格の内側が出てしまうのだ。
元彼女の二人も少なからずその内側を見てしまったから、幻滅し別れたのではないだろうか。
今となっては証明する手立てはないが、ほぼ兄の性格が原因で別れたのだと思っている。
今日はバイトの日。飲食店バイトは高校生には大変な内容となっている。
自分の担当はデザートなのだが、ワンオペが基本なので注文が滞ってきたときには、かなり忙しくなる。
店のルールにより、成人していない者は9時以降働けないので、毎回9時に上がる。
シフトは毎週 金、日、月曜日に入っている。
特に金曜日はやはり人が多くなり、必然的に忙しくなる。今日は金曜日なので忙しく、へとへとになりながら、帰路についた。
今日はあまり帰りたくない。疲れたが、家に帰りたくないという日は今日が初めてだ。
結局選んだ選択は、近くの公園に寄り、ベンチに座って休憩することだった。
座った瞬間にため息を付き、上を見上げた。
色々疲れた。正直死にたくないかと聞かれたらあまりすぐには頷けない。
苦しまず死ねると言うなら選択を悩むだろう。
でも結局そんな勇気はないため、なんとなく今を生きている。
眠くなってきた。ここで寝たら家族に心配されるのだろうか。
『母さんを心配させるな』
とか言われて、殴られたりするのだろうか。
もうどうでもいい。今はただ疲れた。
目を閉じ、今まさに眠ろうとしたときに、ベンチの横に誰かが座った。
自分と同い年くらいの女性。
正直人が横に座るとは思っていなかったので、閉じかかっていたまぶたも全開まで開いた。
その人の顔色は確実に優れないものであった。
自分と同じように何かあったような顔。
「大丈夫でしょうか...?」
自分から心配する声が勝手に出た。それほど彼女の顔は今にも倒れそうな顔をしていた。
「え...あ、はい。大丈夫です。」
彼女はそう返したが、咄嗟のことで反射的に返したように見えた。
「...すいません。少し家族のことで色々あって...。」
「よかったら少し話を聞きましょうか? こっちも家族のことで色々あるので。
「...いいんですか?」
「はい。」
初投稿です。日常でできたストレスをこの小説で発散しています。
だいぶ至らない点があると思いますがどうか温かい目で見ていただけると嬉しいです。




