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第二十一話 破壊〜クライシス〜

 辺りを見渡すと、そこは一面真っ暗になっていた。

「これは一体……」

 ルルシアは呟く。全員の姿は見える。しかし先ほどまであった景色はどこにも無い。

「おいおい、まさかまた滅ぼされちまったのか?」

 そう悔しそうにコーストは言った。一度目ならず二度までも……。


――もはや諦めるしか無いのか。

 そう思ったその時、デューセルが口を開く。

「待て、そうではない」

 何かに気付いたのだろう、彼はその空間に手をかざした。ポツポツと淡い光がルルシア達の周りを覆う。

〝真の力を発揮する時が来た〟

 どこかで聴いた声が響く。

「まさか……神聖族の魂達?」

 エラが思い出したように言った。それは塔の中で、頂上へと導いてくれた姿を持たない存在だった。

〝汝らの力を解放せよ〟

 その言葉と共に彼女達の周りに集まる光は不思議な模様を形成する。

「私達の力? 一体どうすれば」

〝信じるのだ、己自身を。そして同志を〟

 その言葉に皆は顔を見合わせる。そうしてルルシアは一歩前に出た。

「ええ! もちろんよ!」

 彼女の一言を合図に、真っ暗な世界が砕け散る。割れた破片が過去の全てを映し出す……


――


 五千年前のあの日。世界は極寒に覆われ、人々は生存のため争い始めた。その原因は一つだけでは無かったのだ。様々な事が重なり、結果として大きな戦争が起きてしまう。しかしもはやそれは神にすら止められないものだった。彼らはそれぞれ大切なものを守るために、あらゆるものを奪い・壊してゆく。人の命も何もかも……。


 その最中、ある力に目覚めた一人の人間が立ち向かった。それが五千年前のフォルク。彼もまた全てを奪われ全てを壊されていたのだ。彼はそうして得た破壊の力を使い、全てを終わらせることにした。例え永遠にその魂が蝕まれようとも……。


――


 映像はそこで途絶える。そうして残った世界が、今こうして存在している。

「これが……真実……」

 ルルシア達はただ唖然としていた。次第に景色が元に戻っていく。彼女達の近くにフォルクの姿があった。

「私の力を受け切るほどの余力があるとはな」

 どうやら彼が放った力は、先ほど魂達が張った空間によって封殺されたようだ。しかし次は無い。意を決しルルシアはフォルクの元へと歩きだす。

「お、おい! 何やって」

 止めようとするコースト。だが彼女の意思は固い。

「絶対にあなたの事を止める! もう大切なものを滅ぼさせはしない!」

 そう言いながら武器も構えず、ゆっくりと歩を進めるルルシア。

「貴様如きに私を止められるものか」

「そんなの関係ないわ! だってあなたも私たちと同じだから!」

 フォルクは特に動じる様子もなく冷笑を浮かべる。

「フン、同じだと? 笑わせるな。貴様らは所詮滅びるだけに過ぎないのだ」

 そう言って左手に光の剣を出現させた。言葉が届かなくてもルルシアは声を上げ続ける。

「それでも私は、私はあなたを……!」

 彼女の言葉を遮るように、鋭い剣が振り下ろされた。


――



 暗闇に一筋の光が差す。他には何も見えず何も聞こえないが、なぜかそれだけはとても心地良く感じた。


 その光に照らされ、長い間さ迷っていたフルースは上を見上げる。

「僕、気付いたよ」

 誰もいない世界でただ一人、彼は呟く。

「あの時の君は、以前の君だったんだね」

 暗闇の中で出会った青年。どんなに壮絶な過去があったかまでは分からない。だが少なくともこれだけは言える。

「またいつか、前みたいに戻れる日が来るよ」

 なぜならまだその心が残っているから。だから諦めなくてもいい、もう壊さなくていいと。

「だから僕は君を……」


――


『信じる』


 二人の言葉が重なる。ほんの束の間の出来事だった。

「……!」

 フォルクの動きが止まる。振り下ろした筈の剣は寸前の所まで来ていた。

「馬鹿な……なぜだ」

 表情こそ変わらないが、明らかに動揺しているようだった。見る見るうちに殺意も重圧も消えていく。

「人なぞ取るに足らないものでは無いのか」

「だからこそ、私達は助け合うのよ」

 ルルシアは答えた。あの大戦争をたった一人で終わらせたフォルクにとっては予想外の返答だろう。もしかすると彼にもそういう仲間は居たのかもしれないが。

「……いいだろう、人の未来を見定めさせてもらう」

 そう言うとフォルクの翼が黒い粒子状となって消えた。同時にゆっくりと彼の体が傾く。

「フルース!」

 慌てて支えるルルシア。さっきまでの雰囲気は全く無い。彼は眠るように閉じていた目を開けた。

「……ルルシア?」

 間違いない、フルースだ。彼女は久しぶりに聞いた声が嬉しくてとうとう泣き出した。

「ごめんなさい、私っ……」

 ルルシアは僅かでも彼の事を疑ってしまった事を恥じた。慌てふためくフルースだったが、駆け寄ってきたコーストやエラの姿を見て安堵する。

「その……なんだ、あん時は悪く言ってすまなかった」

 コーストもまた少し照れ臭そうに謝った。しかしフルースは意味がよく分かっていないのか、キョトンとして首を傾げている。

「えっと、何の事だっけ?」

 以前と変わらない間抜けな表情。今はそれが何より嬉しく感じるルルシア達だった。少しの間、再会を喜んでいた彼らの元にデューセルとレイルナが近寄って来る。

「あれ? 君たちは……」

 もちろんフルースにとっては二人は初対面だ。だが間髪入れずデューセルは口を開く。

「詳しい事は後だ、まずはここを出る」

 そう言うと転移の魔法を発動する。辺りは白い光に包まれていった。

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