94話 痛み、苦しみ
私はずっとご主人様の側に居た。
そして・・・大好きだった。
格好良く、スタイルも良いし、私含む、仲間に滅茶苦茶優しい、私は、そんなご主人様に惚れていた。
でも、私とご主人様の関係は・・・スキルによって召喚され、物みたいな感じ・・・まあ、これは私が勝手に思ってるだけだけど・・・
それでも、私はご主人様を好きで、愛していた・・・
『し、しっかりしてください!!ご主人様!!』
雪女は急いで佳観阿の近くに駆け寄り、心臓の音を聞いた───
シーン・・・
『う、動いて・・・ない・・・』
佳観阿の心臓は、もう動いていなかった。
・・・ぐすんっ
『う、うわぁぁぁん!!』
雪女は、子供の様に、大声で泣いてしまった。
うわぁぁぁあ・・・
・・・ぐすんっ
『もう・・・もう終わらせよう・・・』
ダラッ・・・
バッ!
雪女の両目から、ドス黒く、怨念が籠もった血の涙を出し、服が闇よりも黒く、吸い込まれそうな程先が見えない漆黒に変化した。
伝説スキル発動 氷の結晶・雪の領域
スッ・・・ドゴォン!!
・・・スッ!パキパキッ!
ダラララッ!
雪女は地面を思いっ切り踏んだ。
踏み込んだ衝撃により、空に浮いた土の塊、小さな石を刹那で凍らせ、それらを周囲360°に発射した。
✡✡✡
・・・ふぅ
『ようやく・・・見えた』
雪女は周囲を破壊しつくし、視界を良くした。
そして、少し遠く、南方に大きな氷で出来た城が見えた。
・・・ダッ!
雪女は考える時間無く、無我夢中で走った。
✡✡✡
ふぅ・・・
「飽きちゃった」
はぁ・・・♡はぁ・・・♡
全裸で密着していた迅姫亜沙波とリキューラ・スペクラム。
亜沙波は、突然飽きてしまい、その場で立ち上がり、遠くに放った服を拾い、着始めた。
はぁ・・・はぁ・・・
(わ、私の・・・威厳が跡形も無く壊された・・・最悪・・・)
床に仰向けで寝転んで、ビクビクとしながら、スペクラムは思った───
シュンッ!
あれ?
『どしたん、スペクラム、全裸になって・・・』
突如、スペクラムの後ろに一人の男が現れた。
蒼髪センターパート、丸眼鏡、細目、モデルの様な顔立ち、襟が立った白く右胸の所に金色の剣の紋様があるカッターシャツ、下は黒いズボンを着ている。
あ、アルファ・・・ライン?どうして此処に・・・
この男の名はマルクス・K・アルファライン、神鬼の高揚と言うグループに所属している。
お調子者で、種族問わず、様々な生命と話す事が出来る。
どうして・・・か
『やりたい事が全て終わったから、最後に、お前と挨拶をとな』
・・・やる事?
ああ
『一体・・・何を?』
・・・ははっ
『それは・・・何時か分かる事だ』
・・・じゃあな、スペクラム
『元気で・・・いろよ?』
そう言いながら、アルファラインは何処かに消えた。
・・・
(凄く気になる・・・)
『な、なあ・・・亜沙───』
ズドォン!!
!!?
『な、何だ?』
スペクラムは、首だけ起こして、辺りを見渡した───
・・・居ない?
『一体何処に行ったんだ?あの両性具有は・・・』
無表情、遠近どちらから見てもわかる程の怒りの気迫を纏った雪女が現れた。
・・・?
「どうしたんですか?雪女さ───」
ガシッ!
!?
「え・・・ど、どうしたんですか!?」
雪女はいきなり、亜沙波の胸ぐらを掴んだ。
『此処に・・・両性具有の奴と、白髪ロングヘアの男・・・来てない?』
雪女は、ゆっくりと、静かに話した・・・
さ、さあ・・・
「知りませんよ?てか・・・此処は私達以外居ないと思いますが・・・」
・・・ホントに?
雪女は亜沙波の顔に
ぐいっ
自身の顔を近付けた。
ほ、本当です!!
「し、信じてください!!」
亜沙波は大声で、命乞いをするかの様に、そう言った。
・・・分かった
『信じる』
そう言いながら、服の襟元から手を離した。




