39話 久遠鎮華の過去 Ⅲ
ムシャムシャ・・・カタッ
ご馳走様でした
2人は同じタイミングで食べ終えた。
・・・はっくしゅん!
ずびー!
「ん?どしたの?」
「あっ・・・鼻水やくしゃみが止まらな───」
はくしゅんっ!!
鎮華はいきなりくしゃみが止まらなくなった。
「もしかして・・・風邪?」
は・・・はっくしょん!
「多分そうかもで───」
ガバッ!
!!?
「な、何を───」
「これで・・・暖かいでしょ?」
露烙は服の中に鎮華を入れ、首元から鎮華の顔を出した。
「あ、暖かいですけど・・・」
「そっか、なら良かった」
そう言いながら暖かい笑顔を向けてきた。
「・・・あっ、暖かい・・・」
鎮華は今までの人生で、生まれて初めての暖かさ、安心感を感じ取り、少ししてから眠ってしまった。
・・・ちゃんと眠ったね
スッ、スタスタ
露烙は立ち上がり、川の近くまで歩いた。
・・・ねえ君?
「聞いていないと思うけど、あーし・・・6歳の時からずっと死にたいと思ってたのよね、何故かって?家では母親からDV、父親から性的暴行、そして学校ではクラス・・・学年中の皆があーしを目の敵にしてね、一年中休みの日関係なく、家に来たり外で遊んでるあーしの所に来て、場所関係なく殴る蹴る、レイプ寸前までやられた事あるんだよ」
すぅ~・・・すぅ~・・・
「でもあーしは強いからね、ずっとやり返してたの。でもね、何故かあーしだけがずっと先生に怒られたの、向こうから手を出してきたのにだよ?まあ、あーしとしても、あれは過剰防衛みたいな感じもあったけど、そもそもあれは向こうが先にあーしをレイプしようとしたからやった事なんだよね」
だからあーしは悪くない!
ぐぅ・・・ぐぅ・・・
「そんなイジメられ、嫌われ、除け者扱いされて約3年、9歳になった頃のあーしはもう、本格的に死のうとしてたんだよね、手首をカッターで切って、お風呂の中に入って死のうとしたり、学校の屋上から飛び降りて死のうとしたり、首を吊って死のうとしたり、様々な方法を試したんだよ、でも・・・何故かずっと死ねなかった・・・」
・・・
「今、私は18歳で、家出をしたのは約5年前、ずっと私はコンビニで万引きをしたり、パパ活をしたり、生きる為なら何でもやった。だけど・・・今日、これで私の人生を終わらせる」
「・・・でも、私は君を巻き込みたくない、もう少しだけでも生きていてほしい」
スッ
露烙は服の中から鎮華を出し、ゆっくりと川から少し遠くの場所に今、露烙が持ってる全財産の3万円と一緒に鎮華を置いた。
「私はもう充分に苦しんだ、もう何も未練はない・・・君も今は辛いと思う・・・だけど、どうか・・・私が楽しく幸せに生きられなかった分、君はもう少しだけ生きて・・・幸せになって欲しい・・・」
スタスタ・・・ガシッ、ひょいっ
ごめんね・・・1人で逞しく生きていてね・・・
ドボンッ!
露烙は鎮華を地面に置き、言葉を言った後、橋の上まで歩き、手すりに乗り、流れが強く、荒々しい川に飛び降りた・・・
ユサユサッ!
すいません、大丈夫ですか?
(・・・ん?何だ?)
鎮華はゆっくりと目を開け、身体を起こした。
すいませんが、ここら辺にいた出雲露烙さんを知っていますか?
眼の前に居たのは4人の男女の警官、そして橋の上、周りに何十人もの野次馬がいた。
「あの・・・出雲露烙さんがどうかしたんですか?」
何も知らない鎮華は聞いた。
いやっ、実はですね・・・その出雲露烙さんが上にある橋からその川に飛び降りたと言う通報を受けましてですね
!!?
「え!?」
今、私達がこの付近を調査しているんだけど・・・何か知っている事はありますか?
(まさか・・・露烙さんがそんな事を・・・)
嘘だっ!!
鎮華は眼の前にいる男の警官を突き飛ばし、横にあるお金を見て、すぐ持ち去り、何処かに行った。
ダダダッ!
はぁ!はぁ!はぁ!
「ろ、露烙さんがそんな事をするわけない!!あの人は・・・まだ少ししか会ってないけど!そんな自殺をする様な事をするわけがない!!」
鎮華は一心不乱に、行き先も分からずに走った。
ザァー!!
はぁ・・・はぁ・・・
「ろ、露烙さんも死んじゃった・・・俺と仲良かったり、話したりした人は全員何処かに行ったり死んだりしてる・・・」
俺・・・もうどうすればいいんだよ
鎮華は1人、大雨の中、大通りを静かに歩いた・・・




