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第009話 伊豆島水穂の優れた戦闘技術

 トロフィーモンスターに対して、油断することなく、警戒の視線を向ける水穂みずほ

 彼女は、とある違和感を抱いていた。


 ――このモンスターは、自身の攻撃を封じられたにも関わらず、少したりとも慌てていない。


 その点が、疑問を生んだ。


 もちろんトロフィーモンスターは、人間とは違う存在だ。

 感情の種類や行動理論、物事の価値観など、人間の基準では考えたらいけないところもあるだろう。


 このトロフィーモンスターには、慌てる――という感情が無いのかもしれない。


 だが、水穂がトロフィーモンスターに攻撃を命中させた時は、大きな悲鳴を上げていた。

 まるで、痛覚を感じている様子だった。

 人間に近い要素も、見られる訳だ。


 だから、慌てる――という感情が存在する可能性も、おおいにありる。


 ――仮に……。仮にだけど、このモンスターに慌てるという感情があるとすれば……。


 ――攻撃を封じられたにも関わらず慌てていないということは、慌てる必要が無いということになる。つまり、別の有効な攻撃手段が残っている可能性が……。


 ――別の攻撃手段……それは例えば、命令する形式が、複数存在するとか……。


 ――言葉を伝える手段は、何も声だけではない。


 ――命令を伝える手段も同じだ。声を発する以外にも、命令を伝える形式は存在する。


「次なる手は――」


 と言う、トロフィーモンスター。


 トロフィーモンスターの手のひらからは、B2タペストリーに近いサイズのホワイトボードと、野球バットに近いサイズの黒ペンが出現していた。

 ホワイトボードに上に、黒ペンが走る。

 その光景を視界に捉えた水穂は、一瞬でその行動の意図いとが予想できた。


 ――文字で命令をする……っ!?


 つまり、である。


 ホワイトボードに命令文を記し、それを水穂に見せるのだ。その文章を目に映した時、彼女はトロフィーモンスターの言いなりになってしまうだろう。

 命令に従わせられる条件が成り立つ訳だ。


 そのような未来を実現させる訳には、いかない。


 ――視界を、暗くする……っ。


 魔法少女は、瞳を閉ざした。

 命令を脳に認識させないために、命令文を見ないようにしたのだ。


 しかし、目をつむることで、何が起こるのか?


 当たり前のことであるが、水穂は視覚を封じるというハンデを背負って戦わなければいけなくなる。


 ――聴覚を使って、封じた視覚をカバーして、敵を倒さなければいけない……っ。


 不利な状況であった。


「…………」


 水穂は、音情報だけで、脳内に『目の前の光景』を組み立てた『想像』を展開させる。

 息づかいの音や、足のれる音、音量の大小などから、物体や生き物の位置を把握するのだ。


 超人的な力である。

 だがやはり、視覚はあった方が良い。

 一目で敵の動きが把握できる方が、戦闘に集中できるのだ。


 それに、聴覚とその情報を処理する脳の負担は、それなりに大きい。


 ――やりづらいけど、やるしか無い……。


 水穂は、青色の剣を構えた。

 そしてまずは、ペンの走る音に目掛めがけて、剣を振るう。


 ホワイトボードを粉々にできれば、文字の命令手段を封じれて、一時的にでも視覚を解放できるはず――という考えだ。


 しかし、そう簡単にうまくは行かない。


 ――ガン……ッ!


 接触音が響き、剣がはじかれた。


「硬い……っ」


 ホワイトボードには、亀裂すら入らない。

 そのことを、接触感覚と聴覚だけで理解する青髪の少女。


いつく――」


 と口を開けたトロフィーモンスターへ、ホワイトボードという盾代わりになる『それ』が邪魔しない部位――本体へ直接、剣撃を与える魔法少女。


「――うぐあぁっ!!」


 強制的に、命令言葉を中断させる。

 だが、攻撃の中断成功にホッとしている間もない。


 混沌ズリーダーの放つ『カラスの幻影(クロウ・ファントム)』が、水穂の眼前がんぜんにまで迫っていたのだ。

 トロフィーモンスターの対処をしているすきに、リーダーが放った一撃だった。


「――っっ!」


 そのカラスがた異能弾いのうだんを、魔法少女は右方向に身体を飛び込ませることで、ギリギリ回避させる。

 しかし、魔法少女の行き着いた先には――


「――私の攻撃もくらう?」


 小柄な少女――ヘイルがいた。


 水穂の背中側から、ヘイルは異能の力を振り向けようとする。

 だが魔法少女も、実力者だ。

 その場所にヘイルがいることは、あらかじめ分かっていた。

 だから、瞬時に対応ができた。


「まずは、1人……」


 水穂は、剣の柄頭つかがしらを、背後にいるヘイルに勢いよくぶつけた。


 瞬間――


「――ぶわああああああっ!!!!」


 ヘイルは、突風に吹き飛ばされた傘のように、魔法少女に突き飛ばされ、廊下上で仰向あおむけに倒れる。


 ピクピクとしか動かなくなり、完全な戦闘不能状態であった。

 魔法少女は、混沌ズメンバーの1人を倒すことができた。

 しかしまだ、敵は3体残っている。


「目を閉じてても、この強さなのね……っ!」


 混沌ズリーダーは、単純に化け物級で強い魔法少女に、険しい面持ちを向けていた。

 そんなリーダーに対して、高校制服を身に着ける少女――レアムが提案をする。


「リーダー」

「な、何よ? レアム」


 彼女は、涼しい笑みを浮かべた。


「――魔法少女と、同じ戦法で戦いましょう」

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