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第007話 初めて生で見た魔法少女

 保健室の中。

 照明が消えている室内は、外と同じオレンジ色に染まる。


 ベッドに座り一時的に身体を休めている魔法少女は、対面側に立っている真桜まおに対して言った。


「助けてくれて、ありがとう……」


 真桜は、笑みを浮かべる。


「別に良いよ。私、ただ暴れまわっただけだし」

「暴れ回ったんじゃなくて、私を救ってくれた。おかげで、私はあの3人から捕獲されずに済んだ」

「3人から捕獲……?」

「うん。いろいろあって、私を捕獲したがっているの、あの人たち」

「だったら……あなたは、あの3人組から逃げている感じ?」

「そういう訳でもなくて。私は私で、悪事を働いているあの3人組を撃退するために、魔法の力を使って戦っている形」

「なるほど……いや、なるほどと言うほど情報は整理できていないけども……」

「…………」


 魔法少女は、急な質問をぶつけてきた。


「名前は?」

「……宮西みやにし真桜まお

「宮西さん……」

「真桜で良いよ。逆に、あなたは?」


 魔法少女は、言った。


伊豆島いずしま水穂みずほ

「水穂ちゃん、か……。その、水穂ちゃん」

「何?」

「水穂ちゃんは、本物の魔法少女なの?」

「一応は……本物」

「初めてなまで魔法少女を見た」

「そう、だよね」

「あの3人組と変なトロフィーがたの物体は、悪の組織的な立ち位置?」

「うん、そんな感じ。混沌こんとんズというチーム名の、異能力者3人で編成された悪党集団」

「い、異能力者? あの3人が……?」


 赤髪女性の放った、例の黒い謎物体が、その異能力に当たるのだろうか?


「そう。私が使うのは魔法だけど、あの3人が使うのは異能力。と言っても、名前が違うだけで、特殊な力を使うことに変わりはないから、似たようなものといえば似たようなものだけど……。でも異能力はなぜだか悪党に宿っているという共通点があって、逆に魔法は適正のある極々小数の女性にしか使えないという条件がある……と説明をしても、混乱を招くだけか……」

「うーん……割と気になるところではあるけども、現状、長々と話をしている場合で無いのも事実だもんね……」

「そうだね」

「赤髪の女性が放っていた、あの黒い物体が異能力に該当する感じ?」

「うん。あれが異能力」

「なるほど……。それと、あと1つ。異能力とは全く関係ないけど、気になることがあって」

「気になること?」


 真桜は、口を開けた。


「どうして、今の校内には全く人がいないの?」

「それは――」


 水穂は、答えた。


「――混沌ズの襲来で、皆が学校から退避したから」

「それは、単純な理由で良かった……。でも、大丈夫?」

「大丈夫……?」

「水穂ちゃんの正体がバレたりとか……。いくら人がいないからと言っても、私みたいな部外者が何も知らずに、ここへやって来る可能性があるし……」

「大丈夫。私が魔法少女だとバレる心配はない」

「でも現に私にバレて……」

「魔法と異能の無関係者は、一定時間が過ぎると、自身の脳内にある魔法と異能に関連する記憶が自動的に消えるようになっているの」

「そ、そうなの……っ!?」

「うん。記憶不可メモリー・アウトと呼ばれている現象なんだけど……。だから、真桜も今日の終わりくらいには、私のことは綺麗さっぱり忘れているはず」

「それは、水穂ちゃんという人間の情報、全てを?」

「魔法少女の私と出会って知り合った訳だから、必然的にそうなる」

「…………しょうがない事ではあるんだろうけど、何だか寂しいね」

「…………」


 水穂は、言った。


「さっき助けてもらったから、何らかの形で、いつかお礼はしたいと思っている……」

「だったら、それを楽しみに待っていようかな」


 そう話して、水穂は急に目を細めた。

 そして、真桜の手首を掴む。


「窓の方から、外に出よう」

「ど、どうして――?」

「――敵が来る」

「え……っ?」


 真桜は、水穂に身体を引っ張られる。

 そして、窓から外へ出て、壁に背中をつけ、2人してしゃがみ込んだ。


 ――瞬間。


 ガララッ――と、保健室の扉の開く音が耳に入ってくる。


「忌々しい魔法少女と、邪魔邪魔しいピンクポニテは、どこへ逃げたのかしら?」

「私たち3人をその表現でなぞると、バカバカしい……になるのかな?」

「ヘイルは、私の味方なの??」

「違いますよ、ヘイル。バカバカしいのではありません」

「レアムは、一生私の味方のようね……!」

「――もはや、普通にバカなんですよ」

「あんたもそのバカに含まれていることはお分かりでっ!?」

「バカとバカバカしいは、何が違うのかな?」

「文字数です」

「レアムは紛れもなくバカだ!」


 真桜の隣に座りこむ水穂が、ぼそりと小声でつぶやいた。


「――どうして私は、あの人たち相手に苦戦しているんだろ……」


 3人の物音は、聞こえ続ける。


「私の探偵の勘が告げているわね」

「探偵の勘ですか?」

「ええ! ズバリ――」

「ズバリ……?」

「この時間の保健室は既に閉店状態だから需要が無い! よって、需要の無いここに、奴らは現れないわ!」

「逆に、どの教室に需要があるのです?」

「…………職員室とか?」

「なぜ職員室と?」

「教師どもの裏金うらがねが――」

「――無いと思いますし、表金おもてがねは全部私たちが奪いました。第一、私たちみたいな小悪党にしか、金品は狙われませんよ」

「小悪党では無いわっ!! 私たち!」

「では、何でしょうか?」

「歩きスマホ以上当て逃げ未満!!」

「小悪党じゃないですか……」


 と会話をしながら、保健室の中をあさる3人。

 真桜の横で、水穂は半眼になっていた。


「――どうして私は、あの人たち相手、一方的にやられていたんだろ……」


 そして、3人は――


「ここに魔法少女たちは、いないみたいだね」

「次に行きます?」

「……そうね」


 3人及びトロフィーモンスターは、保健室内から退室した。

 真桜と水穂の2人は、再び窓から保健室内へと入る。


 水穂が、言葉を発した。


「真桜……」

「うん?」

「やっぱりここは危険だから、あなたは安全な場所まで離れた方が良い」

「…………」


 真桜は、沈黙した。

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