表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

6/21

第006話 ピンチの人間を見捨てることができないタイプ

 危機的状況に迫られると、性格や言動が大きく変化する人間が、この世には存在する。


 それは例えば、普段幽霊が怖くないと胸を張って言っている人物が、実際にお化け屋敷に行けば一番怖がっていたり。


 それは例えば、普段綺麗事を熱弁している人間が、いざ誰かが意地悪をされている現場を目撃すれば、見て見ぬふりで対応したり。


 またそれは例えば、普段弱々しい言動を見せている人間が、他人を攻撃しているヤンキーを見かければ、勇気を振り絞って立ち向かったり……。


 と、人間という生き物は、異常事態に直面すると、無意識の領域内で普段からは考えられない行動に出るパターンが、少なからず存在する。


 宮西みやにし真桜まおも、その異常事態に直面すると言動が変わる生き物、に含まれていたのだろう。

 他人がピンチの状況を、見捨てることができない、そんな人間だった。

 救わないといけない――と本能が判断するタイプ。


 本物の正義感が、内に宿る少女。


 カラスがたの純黒物質を放とうとする、赤髪女性へ――


「――やあああああああぁっ!!!!」


 ――真桜は、飛び掴んでタックルしていた。


 両手で身体を包み込み、押し倒す。


「――な、何っ!?」


 いきなりの展開に驚愕きょうがくを隠しきれない赤髪女性――混沌ズのリーダー。

 それは、その場にいる皆がそうだった。


「え……っ?」


 魔法少女もまた、困惑している。


 誰? 何が起こっているの? と。


 ――ドンッ!


 混沌ズリーダーの背中が、地面と衝突した。

 そして――


「――あ」


 混沌ズリーダーのチャージしていた黒色の物質が、反射的に放たれる。

 それは、真桜が彼女を押し倒したことにより、方向がズレて、天井へ向かっていた。


 ――ドカアァン……ッ!!


 純黒の物質と天井のコンクリートが直撃し、瓦礫がれきの破片が、雨のように廊下へ降り落ちた。


「――うあああああぁ……っ!」


 混沌ズ3人組は、その降ってくる瓦礫の豪雨を見て、パニック状態となる。


「と、トロフィモンスター! そこのピンクポニテに攻撃しなさいっ!」

「――了解しました」


 ――しゃ、喋った!?


 大きなトロフィーがたの物体が言葉を発したことに、ビックリする真桜。

 だが、驚き続けている場合で無いことも、よく分かる。


 攻撃しなさい――という指示に、了解しました――と返事をしていた。


 敵意は、むき出しだ。

 ぼーっとしていたら、やられてしまう。

 その未来は、避けなければならない。


 真桜は、赤髪女性の上半身を掴む腕を離して、立ち上がった。

 眼前には、天井へ届きそうな程の大きさをした、トロフィモンスターが立ちはだかっている。


 ――たぶん……というより絶対に、私ではこのトロフィーの怪物を倒せない。逃げるしか無い……っ!


 背後で『気をつけ』の姿勢を維持している魔法少女を連れて。


 トロフィモンスターが、口を開けた。


こうべを――」


 その瞬間、魔法少女が言葉を重ねる。


「――逃げてっ!!」


 そして、トロフィモンスターが言い切った。


「――れよ」


「…………」

「…………」

「…………」


 しかし、何も起こらなかった。


 トロフィモンスターは、真桜に対して『頭を垂れよ』と指示を出したのだが、真桜は顔を上げ続けていたのだ。

 頭を垂れてなどいなかった。


 その事実に、トロフィモンスターは混乱する。


「な、なぜ頭を垂れない??」

「ぎゃ、逆になんで、頭を下げないといけないの??」


 真桜もまた、意味不明だと感じているのだった。


「まさか……」と魔法少女がつぶやく。


 トロフィモンスターは、手をグーの形にした。


「こうなったら、物理攻撃で制するのみだ。くらえっ!!」

「――っ!」


 トロフィモンスターのグーパンチが、真桜へ迫り来る。


 ――ど、どうしよう……っ!


 そして、真桜の視界に『それ』が映った。


 地面上に寝転がっている――青色の剣。

 魔法少女が落とした武器――『青の剣(アズール・ソード)』だ。

 真桜は、反射的にそれのつかを握り、そして――


「――はああああぁぁっっ!!!!」


 トロフィモンスターに、振り当てた。


「ぐわあああああっ!!!?」


 トロフィモンスターが、その剣撃をまともに受け、音を立てながら倒れる。


 その影響なのか、魔法少女は『気をつけ』の状態から解放されていた。


 そして、真桜の握っていた青色の剣は、細かい粒子となり消滅していた。


「――っ!」


 魔法少女は、真桜の手首を急いで掴む。

 そして、言った。


「一旦、ここから逃げよう……! 危険だから……」

「う、うん……!」


 2人は、その場から退散する。

 背後からは、混沌ズリーダーの声が聞こえて来た。


「――逃げたって無駄よ! 絶対に……! 絶対に、仕返ししてやるんだから……っ!」


 そのセリフに構わず、2人はひたすら足を動かした。

 そして、今は安全な保健室の中へと入室する。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ