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第003話 青色の魔法少女

 そして、中学校内の廊下にて――。


 青髪の魔法少女は、強盗集団『混沌こんとんズ』の3人と対峙たいじしていた。


「いつまでっても、りない……」

「まあ、それはね……」


 混沌ズのリーダーは、堂々とした態度で言った。


「諦めないことが何よりも重要であることを私たちは知っているから、いつまで経っても懲りないのよっ!」

「諦めないの使いどころが、間違っている……」

「何が間違いよ! 今日こそは、お前を倒してやるんだから! この魔法少女!」


 そう言い、リーダー女は右手を突き出した。


黒い霧(ブラック・ミスト)!」


 まるで呪文のようなその言葉を放った瞬間、リーダーの右手のひらの中心部に黒色の球が出現した。

 それは火の玉のように、ごうごうとうごめいている。

 そして、その黒色の球から、真っ黒の霧が放出された。

 魔法少女の視界が、奪われる。


「続けて――カラスの幻影(クロウ・ファントム)よ!」


 更にリーダー女は、2つ目の特殊攻撃を発動する。

 リーダー女の周囲に、3つのカラスがたの、漆黒物体が出現した。

 そのカラス形の物体が、羽を動かしながら、魔法少女へ向かう。


「くらえっ!!」


 視界の遮断されている魔法少女への、奇襲攻撃。

 普通の人間であれば、回避困難であろう。

 しかし相手が悪かったと言うべきか。

 その魔法少女は、基礎戦闘能力にけていたのだ。


 視覚が奪われようとも、聴覚は奪われていない。


 ――そこ。


 魔法少女は、カラスの幻影を、音情報だけで大方おおかた捉えることが出来ていた。

 だから、位置情報を予測して、あとは跳躍して攻撃を避けるだけ。

 カラス形の物体は、魔法少女と直撃することができず、壁と激突し、コンクリートの粉砕と共に消滅する。


 魔法少女は、着地。

 青色のプリーツスカートがひらりと舞い上がった。


 そして――


青の剣(アズール・ソード)


 魔法少女の右手に、青色の水魔法で形成された、細長の剣が握られる。

 魔法少女は、その剣を横一線にぎ、空気を切り裂いた。


 ――刹那せつな


 混沌ズリーダーのばらまいた黒い霧が、綺麗に吹き飛ぶ。

 視界が、晴れ渡った。

 リーダー女は、くちびるむ。


「相変わらずの化け物ね……!」

「次は、私が相手をしますよ」


 そう口を開けたのは、高校制服を身にまとう混沌ズメンバーの1人。


「頼むわよ」

「ええ、任せてください」


 高校生女子は、お金の入ったに布袋を地面に置き、首元に両手を添えた。


「――暗黒騒音ダーク・ノイズ


 その技は、彼女の持つ強力な攻撃手段であった。

 その身から、対象の脳の奥へ、不快音を響かせる。暗黒の騒音を奏でる技。


 高校生女子は――


「あー、あー」


 あー、としか言わないのだった。


「あのー……早く攻撃してくれないかしら?」

「無理です。まだ私の声の調子が整っていないみたいですので」

「またそれかよ」

「ええ。マイクチェックと同じです。必須なんですよ」

「そろそろ、その足枷あしかせからも解放できそうだって、この前言ってなかった?」

「予感は、所詮しょせん予感です。ダメでした」

「…………レアムは、今日は使えない日と」


 魔法少女は、青い剣を構え、混沌ズ3人の場所へ接近していた。

 高校生女子は、金銭の詰まった布袋を再び持ち上げ、口を動かす。


「リーダー、ヤバいですよ」

「げっ……! 時間を消費しているうちに、攻撃体勢に入ってやがる……!」


 魔法少女は、跳躍。

 青い剣を、混沌ズに向けて振り下ろした。


「ぎゃあああ……っ!!」


 混沌ズの3人は、間一髪でその剣撃から逃れる。

 青い剣は、地面を針状にえぐっていた。

 魔法少女は、3人を見つめる。


「次は、当てる……」

「い、いやいや! あなたが私たちを撃退するのは勝手だけどね! でも卑怯ひきょうだとは思わないの!? 人のマイクチェックの時に攻撃するとか! 卑怯よ! この卑怯者!!」


 魔法少女は、ジト目で言った。


「卑怯は、一番あなた達に言われたくない言葉……」


 魔法少女は、再び剣を構える。


「ちょ、ちょっと! このままだと、また敗北するわよ! 私たち……っ!」


 己の現状に、慌てふためくリーダー。


「リーダー!」


 そんな彼女に、明るい声を掛ける人間がいた。混沌ズの、もう1人の仲間である。

 黒髪セミロングヘアの、小柄な少女。

 彼女が、とある1個の道具を見せる。


「これを使う時が来たんだよ……!」

「そ、それは……っ!」


 小柄少女の持ち構えていた『それ』とは、プラスチック製のスプレー容器であった。

 手のひらサイズのもの。


「この、悪活性あくかっせいスプレーを、金ぴかトロフィーにワンプッシュすれば……!」

「そ、そうね……! もう一か八か、この新兵器にけるしか無いわね……!」


 小柄少女は、自身の左手に収められた金色のトロフィーに向かって、悪活性スプレーと呼称する『それ』を噴射させた。


 ――瞬間。


「――おおっ!」


 トロフィーは、真っ白色に染まる。

 空中へ浮かび、巨大化した。

 なぜか純金の手足も生える。


 元の金色に戻り、『トロフィーモンスター』へと、姿を変貌へんぼうさせたのだった。


 そのトロフィーモンスターは、目の前の青髪魔法少女を見下ろす。


「こ、これは……?」


 初めて見るそのいびつな光景に、警戒心をあらわにする魔法少女。


 トロフィモンスターは、人差し指を地面へ指し、喋った。


「――こうべを垂れよ」


 その声を耳に入れた瞬間。


「――っ!」


 魔法少女は、青色の剣を地面へ手放していた。


 そして正座し、視線が自身の太ももに向けられる。


「え……?」


 勝手に、身体がそうしていたのだ。

 トロフィーモンスターの指示通り、頭を垂れたくないのに、頭を垂れていた。

 トロフィーモンスターは、次なる指示を出す。


「真っすぐ、気をつけをしろ」

「――えあっ!?」


 魔法少女は、その指示になぜだか従っていた。

 従いたくないのに、身体が勝手にそう動く。

 勝手に立ち上がり、勝手に手足を真っすぐ伸ばして、勝手に気をつけの状態となってしまう。


「な、なに、これ……?」


 困惑に満たされる魔法少女。


 混沌ズの3人組は、その状況を確認して、表情が一転する。

 勝利を確信した顔。

 リーダー女は、意地悪な笑みを浮かべていたのだった。


「あらあら、魔法少女さん。どうしちゃったのかなー? 大人しく、気をつけなんてしちゃってさー」

「こ、これは……っ」

「ねえ、トロフィーモンスター」

「何でしょうか?」

「私からも、魔法少女へ命令をくだして、強制的に従わせることは出来るのかしら?」


 トロフィーモンスターは、返事をかえした。


「あなた方の指示を、私が代読だいどくすれば良いだけです」

「ほうほう。それは、面白くなってきたわね……」


 リーダー女は、したなめずりをした。


 魔法少女は、反撃をすることができない。

 気をつけの姿勢から、抜け出せれないから。


 ――ど、どうすれば……っ。


 唐突に、ピンチの状況に追い込まれた。

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