表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

17/18

第017話 まるで魔法少女のような……

 身体がピンク色の光に包まれ始める、宮西みやにし真桜まお

 まるで夜空に光り輝く月のように、彼女を取り巻く光は美しかった。


「なに、これ……?」


 とう本人ほんにんは、混乱している。

 何せ、発光している石に触れた途端とたん、自身も同じピンク色に発光し出したのだ。


 ――この現象は、何なのか?

 ――この光は、何なのか?

 ――この石は、何なのか?


 謎。

 謎。

 謎。


 日常とは真逆の非日常が、怒涛どとういきおいで真桜にそそいでいた。


 そして――


「――えっ?」


 きわめつけは真桜の容姿の急変――『変身へんしん』であった。


 彼女は今、中学校の制服を着用している。

 その服装が、変化する――


 紺色こんいろ膝上ひざうえまで伸びるスカートが、可憐かれんなピンク色のショートパンツに。

 黒色のソックスが、絶対領域を強調するニーソックスに。

 白色の上履うわばきが、足のサイズにぴったり合ったピンク色のブーツに。


 ――変化する。


 ポニーテールの髪留かみどめが、黒色のヘアゴムからピンク色の桜形さくらがたヘアピンに。

 白色のスクールシャツが、『肩がうっすらけて見えるチュール素材で出来上がった、桜模様に切り取られたそで』と『ショートパンツ上部までスカートのようにふわりと広がる、同じくチュール素材で出来上がったすそ』、『背中の腰部に付けられた大きな黒リボン』が装飾された、えりボタン付きの黒色トップスに。


 ――変化する。


 手には、肩と腕関節うでかんせつの中央部まで伸びる、レース仕様の黒色ロンググローブ。

 首元には、チョーカーが身につけられていた。

 真桜の手に包まれていたはずの不思議な石は、いつの間にかチョーカーのリング部に移動し、はまっていた。


 そして、真桜のまとっていたピンク色の発光が収まり消える。


「……!」


 真桜の現在の衣装。

 それはまるで……。


「魔法少女……?」


 彼女は、自身の服装を見下ろしながら、そんな言葉を発した。


 まさに、その言葉通りであった。


 今の真桜の姿は、魔法少女のようであった。


 そんなポニーテール少女を見たトロフィーモンスターは、口を開ける。


「なんて、綺麗なんだ……」


 自身の輝きにしか興味がないトロフィーモンスターさえも、輝かしいと思わせる真桜の姿。

 少女は、度重たびかさなる困惑に満たされていた。


「ど、どういう展開??」


 意味が分からない。

 理解が追いつけない。

 展開についていけない。


 水穂は、真桜にロッカーの鍵を渡していたが……。


 それはおそらく、その鍵で解錠かいじょうできるロッカー内に、ピンチの現状をひっくり返せる何らかのキーアイテムが眠っているものだと、真桜は予想していた。


「キーアイテムは、この石……?」


 一応ロッカーの中には、まだスポーツバッグが残っている。


「スポーツバッグの中に、本当のキーアイテムが存在する可能性も……」


 彼女は、スポーツバッグを手に取ろうとした。


「――我も、見とれている場合ではないな」


 しかし、トロフィー形の怪物も再び動き出す。


 ――ドガアァァンッッ!!


 教室の壁が、純金の拳によって崩れ落ちた。

 室内に、大きな穴がく。

 その穴から、トロフィーモンスターが――ズドン! ズドン!――と大きな足音を立てて、ポニーテール少女へ接近していった。


「遊びは、終わりだ」


 トロフィーモンスターは真桜へ、右手を伸ばした。

 まるで、落ちた野球ボールを拾う少年のように。

 宮西真桜を掴み取ろうとする。


「――っ!」


 真桜は反射的に、その()()を口に出していた。


「――桜の打撃(ブロッサム・パンチ)!!」


 瞬間――。


 真桜のグーの形に握りしめた右手から、濃いピンクの蛍光色けいこうしょくが、火花のように無数に飛び散った。


「――やああああああああっ!!!!」


 トロフィーモンスターの広げた手のひらのまとなかをパンチするかのごとく、強力な一撃を思い切り与える。


「――っ!?」


 トロフィーモンスターは……、


「――ぐっ、わああああああああっ!!!!」


 真桜の放った打撃によって、吹き飛ばされた。


 激しい勢いの、緩やかな放物線を描き、中庭の向こう側にある校舎へ轟音ごうおんを立てて激突した。


「これ、は……?」


 真桜は、自身の右拳を見つめる。


「なに……? この力……っ」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ