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三匹の子豚

昔、在るところにお母さんブタと三匹の子ブタが仲良く暮らしていました。


お母さんブタの名前はムッタ。


三匹の子ブタは三つ子ですが、


長男の名前はランビ。


次男の名前はホルビ。


末男の名前はアーチ。


と言いました。


お母さんは子供たちがみんなそれぞれ逞しく成長したので、そろそろ三匹を独立させる事にしました。


三匹はお母さんに呼ばれて、ひとりずつ自立するように(うなが)されます。


彼らもそろそろ身体が大きくなって来て、今のお家では、少々手狭になって来たのがわかっていたので、賛成しました。


お母さんは三匹の息子たちが独立するお祝いとして、それぞれ平等に250金ずつの独立資金を与えました。


これはお父さんブタのファタが残してくれた一家の大切な財産で全部で1000金ありました。


お母さんブタのムッタは残りの250金で、老後を過ごす事にしたのです。


ムッタは少し心配だったので、息子たちにそれぞれどんな仕事に()くのかを尋ねました。


長男のランビは『僕は農家を経営する。』と言いました。


次男のホルビは『僕は山を買って林業を営む』と言いました。


末男のアーチは『僕は建築の資格を取って建築家になります。』と言いました。


ムッタは始めは不安でしたが、息子たちそれぞれが、ちゃんと考えがある事に安心して、三匹を見送りました。


長男のランビは広大な敷地の農家を営みながら、藁葺き屋根の立派な家を建てました。


次男のホルビは大きな山をひとつ買い込んで、毎日木を伐採しながら、これも立派な総檜梁りの家を建てました。


末男のアーチはお兄さんブタの立派な生活ぶりを横目に見ながら、とても羨ましい限りではあるのだけれども、今は我慢の時と、ひとり離れて街に出て、ボロアパートに住みながら、時間をかけて建築家の資格を取りました。


お陰さまで建築家になれた末男のアーチは、村の外れに戻って来ると、建築の仕事に精出す傍ら、学んだ技術を使って、立派なレンガ造りの家を建てました。


こうして三匹の兄弟はしばらく平和に暮らしていました。


ところがある日の事、村に一匹のオオカミがやって来ました。


オオカミの名はロッコと言いました。


ロッコは小さい頃に親を亡くしてはぐれ者として生きてきました。


そして長い間、裏街道の仕事を請け負いながら、辛酸を舐めて来たのです。


でもひょんな事から父親の友人だったというハイエナと出会いました。


ハイエナはユダと名乗ります。


ユダはロッコの父親は村に住むブタのファタに騙されて、1000金もの大金を失ったため、死ぬ羽目になり、やがて奥さんも悲しみの中で亡くなった事を知らされます。


ロッコは激怒しました。


必ず復讐してやると誓いました。


ユダは力を貸してやると言ってくれたので、ロッコは大いに助かります。


ロッコはまずファタの家を突き止め、訪ねますが、もうそこには誰も住んでいませんでした。


あらら…母親のムッタはどこに行ってしまったのでしょうか?


ロッコは近くに住むコヨーテのマダンに消息を知らないか尋ねました。


マダンは依然ファタとムッタに恨みがあったので、喜んで行き先を教えてしまいます。


ロッコはファタが既に亡くなっており、ムッタが消息不明と聞いてガッカリしましたが、三匹の子ブタの兄弟が手広く幸せに暮らしている事を知り、復讐の炎が再び燃え上がりました。


ロッコはまずテンガロンハットを深くかぶって、オオカミだとばれないように、長男のランビの家を訪問しました、


ランビは毎年自分の畑の作物を一括で購入してくれるというロッコの申し出を(いぶか)り、信用しませんでした。


するとそこへ街の大金持ちのユダが来て、心配ならワシが保証してやると、太鼓判を押してくれたため、喜んで契約書にサインをしてしまいます。


するとその契約書は作物の売買契約書ではなく、広大な敷地の契約書だったため、ランビは騙されたと知って、ロッコを探しましたが見つかりません。


街に出ていき、ユダを訪ねましたが、お金は払ったので保証は出来ない。契約書をしっかり読まないお前が悪いと、叩き出されてしまいます。


ランビは泣く泣く家に帰りますが、何と畑の作物は全て刈り取られた後で、藁の家からは炎が吹き上がっていました。


留守の間に火をつけられたようでした。


藁の家はよく燃え広がり、あっという間に灰になってしまいました。


ランビはお金を受けとる際に、紙幣で受け取っていたために、一緒に灰になり、一文無しで路頭に迷います。


弟たちに助けを求めようと一度は思いましたが、恥ずかしさから、そのまま行方知れずになってしまいました。


土地の権利を持っていたロッコは約束通り、そこをユダに譲りました。


ユダは元々お金を出したので、そのお金を回収する意味で、畑の作物を売り払い、土地も高値で買う客が居たので売り払い、何と買値の倍の利益を得ました。


こうしてロッコはひとつ目の復讐を果たしました。


ロッコはすぐに今度は次男のホルビの家を訪ねます。


またテンガロンハットを深々とかぶり、今度は山師となって現れました。


ホルビは山を丸ごと買い取るというロッコの話に乗りません。


ところがそこに街の大金持ちのユダが来て、ここは近いうちにトンネルが出来て、電車が通るから、今のうちじゃないと高く売れない。


公共事業が始まる直前には、どうせ強制的に立ち退きをさせられる。


そうなれば、二束三文でしか売れなくなるが、今なら高く買ってやるから、おとなしくお金を持って他所に移れと脅されます。


ホルビはこれ幸いとユダにお礼を言い、土地の権利書と引き替えに大金を手にしますが、ちょっとした油断の隙に今度は空巣に入られて、お金を奪われた挙げ句に総檜梁の家も燃え盛る炎で全焼しました。


ホルビはやはり兄弟たちに相談するか迷いましたが、恥ずかしさから行方知れずになってしまいます。


ロッコは権利書をユダに譲り、そのお陰で、ユダは山を売り払い、お金も取り戻したお陰でまたまた丸儲けです。


何と空巣はロッコの仕業でした。


何と悪どい連中なんでしょうか?


ロッコはいよいよ末男のアーチの家を訪ねる事にしました。


ここまでは、ユダの協力もあって大いに復讐を果たせて、彼は大満足でした。


再びロッコはテンガロンハットを深くかぶり、アーチの家を訪ねました。


ところがあいにくとアーチは留守でした。


アーチはそもそも建築家で、持ち物と言えば、レンガの家しか在りません。


お金は家の中に保管してあるに違いない。


一度空巣に手を染めているロッコは、再び空巣に入ろうと考えて、忍び込もうとしますが、何とも頑丈なレンガ造りの上、建築の技術の(すい)を尽くした設計です。


鍵もとても頑丈でなかなか中に入れません。


ロッコは仕方なく、出直そうと(きびす)を返そうとしましたが、その時、ふと屋根の上の煙突に気がつきました。


しめしめ…。これは幸いと屋根に登り、煙突の中に入って下に降りていきます。


ところが途中滑って転げてそのまま墜ちてしまいました。


そしてトンネルを抜けた先には何と罠が待ち受けて居ました。


これは最近ネズミが侵入するために、アーチが仕掛けた罠だったのですが、それにまんまとロッコの足が掛かってしまったのでした。


ロッコは足枷を外そうと必死になりますが、どうしても外れません。


これではアーチが帰って来たら見つかってしまいます。


一方でユダは必ず出番が来ると、助け船を出して来ました。


そのお陰でランビの時もホルビの時も上手くいったのです。


その点ユダはロッコと違い、天才的な悪党でした。


今度もアーチの家の側で出番を待っていたのですが、ロッコが中に入ったまま、いつまで経っても出てこないので、少々心配になって来ました。


そこで仕方なく屋根に登り、煙突の口から中に声を掛けました。


すると、ロッコが助けを求めています。


しかしながら、ユダは、『はいそうですか』と助けに入るような間抜けではないのです。


どうやらロッコは罠に掛かったらしいので、自分も危ないかも知れぬと、この際ロッコを犠牲にして、我先に逃げてしまう事にしました。


どうせあんなはぐれ者がゲロしたところで、大金持ちのワシに火の粉は及ぶまい。


バックレてしまえば済むと『じゃあな、アバヨ♪』とわざわざロッコに告げるやゆるゆると屋根を降りはじめました。


ロッコは裏切られたと知って泣き喚き、その怒号が聞こえてきますが、知った事では在りません。


ユダは屋根から降りると、汚れた手をはたきながら、帰途に着こうと(きびす)を返しました。

(※屋根から降りる時は背中向きになる)


すると目の前にはアーチが立っています。


ユダはびっくりしました。


何しろ屋根から降りる所をバッチリ見られているのですから、言い訳のしようが在りません。


ロッコが捕まれば、関係性は嫌でも疑われます。


ロッコは助けなかった自分をさぞ恨んでいる事でしょう。


但し、まだアーチを振り払えば逃げきる事も可能かもしれません。


ユダは油断させるためにわざと身体の具合が悪そうな振りをして、同情を引き、アーチが駆け寄った隙をついて逃げようとしました。


ところが、仮病で(うずくま)ったユダの腕には、カチャリと手錠が掛けられていました。


全てお見通しだったようです。


頭を上げると、そこには犬のお巡りさんが、立って居ました。


そしていつの間にか沢山のキジや猿、タヌキ等の土木作業員たちも周りに集まって来ました。


こうしてハイエナのユダとオオカミのロッコは逮捕されて、調べ上げられました。


ロッコは自分の不注意とは言え、ユダに裏切られた事に腹を立てていたので、全て真実をぶちまけてしまいました。


アーチに復讐する事など、もはや忘れてしまったようです。


それだけ怒りが収まりきらなかったのでしょうね。


ユダは実は自分では上手く立ち回っているつもりでしたが、ひとりだけ甘い汁を吸う性格が災いしました。


それにほかの動物たちの(うらや)みも買いますしね♪(笑)


この際、よってたかってユダの悪事を暴露する証人が沢山現れて来て、憐れユダは財産没収の上、動物の国から追放されてしまいました。


ユダは路頭に迷い、行方知れずになります。


今でもハイエナが他の動物のおこぼれを掃除するように食べるのはこのためなのかも知れません(笑)


確証は在りませんが(爆)


さて、ロッコがどうなったかという話は後回しにして、まずは、アーチの話をしておきましょう。


アーチはある日の事、突然母親が自分を訪ねて来たので、最初は喜びました。


母親は三匹の独立を待って、再婚していたのでした。


夫のファタが亡くなった後に、長年気持ちを支えてくれていた夫の親友と結ばれたのでした。


そして久しぶりに息子たちの家を訪ねようと戻って来たら、長男のランビは行方が知れません。


驚いたムッタは次男のホルビの所に行きますが、ホルビも行方知れずになっていました。


そこで慌てて末男のアーチの身を心配して尋ねたのでした。


アーチはびっくりしてしまいましたが、ここに居れば危ないかも知れないと、一旦母親を帰らせます。


母は帰り際、街の警察庁官が貴方の義父だから、何かあったらすぐに来るようにと話しました。


お母さんブタは警察庁官ブタと結婚していたのですね♪


アーチはすぐに自宅を出ると、真っ直ぐにかつての実家のあった隣に住む、コヨーテのマダンを訪ねました。


アーチはなかなか頭の回転が良いようです。


流石に伊達に建築家の資格を持っている訳ではないのですね♪


アーチはマダンしか三匹の独立を知っている動物がいない事を解っていたのです。


そしてマダンの弱みを知っていたので、やんわり脅しをかけました。


すると、マダンはオオカミのロッコに教えた事を話してくれました。


ロッコの名前を聞いて、アーチはハタと気がつきます。


生前の父・ファタがその名前を口にした記憶が在ったのです。


アーチは急いで街に行き、義父に面会を求めました。


挨拶もそこそこに話をすると、義父はロッコなら知ってると応え、びっくりしているようです


義父は話をしてくれました。


実はロッコの両親を死に追いやったのはハイエナのユダでした。


ユダはロッコの両親を騙して全財産を奪ったのでした。


それをたまたま知ったファタはユダを告発したのです。


その時に協力したのが、義父でした。


ところが後一歩というところでファタは、追い詰められたユダに殺されてしまいました。


しかしながら証拠がありません。


けっきょくユダを後一歩というところで逃がす結果になったのです。


それ以来ユダは街の権力を完全に掌握して、手出しが出来なくなったのでした。


ファタが死ぬ事になったのは跡に残されたロッコを保護するためでした。


通常証言者は守られますから、ファタは安全なはずでした。


ところが、ロッコが見つかったとの情報に、いても立っても要られず、探しに出たファタは、偽情報で誘きだされて、ユダの刺客に始末されたのです。


その時以来、義父はユダの尻尾を掴むために、必死に証言者を探しまくったと言い、母もそんな義父を手伝ううちに好きになっていったようです。


ロッコを捕らえれば活路があると義父は応えました。


ロッコは必ずアーチの家にも来るだろう。


そこで自宅のそばに家を借りてそこから見張る事にしたのでした。


当所はロッコを捕らえるだけの腹積もりが、間抜けにもトンビが油揚げに食いついてくれたお陰で問題解決となったのでした。


さてその後、ロッコはどうなったかと言えば…。


誤解とは言え、やった事の罪は罪なので、判決は有罪で刑に服したのですが、ムッタやアーチの情状酌量を求める姿勢に裁判所も減刑を決めたのでした。


その後、アーチは兄ランビとホルビを探しだして、レンガの家で三匹幸せに暮らしましたとさ♪(笑)ー


ー了ー


「どうです?三匹の子豚でする妄想はこんな感じですかね?」


蒼生は少々照れ気味に応えた。


今日の昼食は、スパゲティーボンゴレと抹茶ティーにグリーンサラダと例のスープである(笑)


久しぶりにまた夏蓮奈シェフが昼食を持って来てくれたので、何か話さなきゃ話題が続かない…と怖れた蒼生は先日の『小さい白い鶏』から考察した『赤ずきん』の話を振ってみたのだった。


女性との付き合い方が青葉マークの蒼生にとっては、話題を考えるだけでも大変なのだ(笑)


すると、瞳(夏蓮奈の名前)は、思いのほか興味を持って聞いてくれるので、蒼生は意外な反応にすっかり気を良くしてしまった。


それで上手く話がまとまるはずだったのだが、何と瞳は蒼生の想像以上に興味津々で、事もあろうに、何か妄想話を聞かせて欲しいとおねだりしてきた。


そうなると蒼生としては微妙だ。


何かのついでくらいに話す分には構わなかった。


しかし改めていちから話すとなると話は別だ。


何しろ本人が、妄想癖を支持してくれるギャラリーなど居るはずが無いと確信しているのだから、これ以上確かな事実は無いのだが、瞳は敢えてそれを求めているのだ…。


蒼生はチラッと瞳を観たが、目をキラキラさせながら、期待しているのだ。


こうなると蒼生はもう逃げようもない(汗)


一か八か…変な人と思われないか不安だが、やるしかない。


何しろほかでもない瞳が求めて要るのだ…。


そこで蒼生は『三匹の子豚』を題材とした妄想を披露したと言う訳だった。


瞳はニコニコ微笑みながら、感動している。


終わった途端に(たか)らかな拍手で迎えられた蒼生は少々戸惑いを感じてしまった程だった。


「ハイエナさんが、動物界のアウトローなのはそう言う訳なんですね…。」


瞳はたかが妄想に伏線が入っている事にかなり驚いている。


「ユダってやっぱり使徒の裏切りから来ているんだろうし…。」


瞳はそう言うと、ひとつ疑問が残るのか…蒼生の顔をチラッと見ながら、こう尋ねた。


「コヨーテのマダンさんが、なぜファタとムッタを恨んでいるのか?そしてアーチが握っているマダンの弱みって明らかにされてませんよね?どうしてなんです?」


瞳はなかなか利発な女性(ひと)だ。


蒼生はわざとボカしたつもりだったのだが、しっかりと聞き取られていた事に冷や汗を感じた。


蒼生は、サラリと(かわ)す事にした。


「あ!そうか…なるほど!気がつかなかったな。」


蒼生はそう言うと、頭に手をやり照れて見せた。


「僕もまだまだ修行が足りません…。」


蒼生は「ご馳走様でした♪今日も美味しかったですよ♪」とお礼を述べた。


夏蓮奈シェフは微笑みながら、皿を下げる。


「な~んだ♪特に意味は無いんですネ♪」


瞳はそう言うとそそくさっとトレイを持って帰っていった。


夏蓮奈シェフが引き上げるや、蒼生は「ふぅ~」と息を吐いて、一息ついた。


何とか危機は脱したようだった。


『さすがに意味があるとは言いにくい…。』


蒼生はそう呟くと、窓の外に広がる青空を眺めながら、抹茶ティーを口にした。

(*^^*)如何でしたか?


少々頭を捻ったつもりですが…(^-^;


マダンの謎解きは敢えてしませんでした。


どうしても知りたい方は夕方頃活動報告の中で解き明かしますので、そちらをお読み下さい。


長いお話を最後までお読み下さり感謝です♪


byユリウス・ケイ

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