ルンペルシュティルツヒェン
【第14話前書き】
(^-^;こんにちは♪ユリウス・ケイです♪
この話しは1万3千文字に及ぶ長編になりました。
少し長いですが、読みやすくしてあるので、楽しみながら読んで戴くと嬉しいです(*^^*)♪
深夜、ふと目覚めると酷く頭痛がした。
身体からの発汗も凄い。
汗だくで寝間着が湿っていて、寒気が襲って来る。
熱があるのかと額に触れてみると、焼けるように熱い…。
起き上がるのもかなり辛いが、生憎ひとり暮らしなので、フラフラな身体を無理矢理起こして、冷蔵庫まで行くと、冷凍庫からアイスノンを取り出して、頭に当てながら、薬箱を引っ張り出すと、解熱剤を2回分、無造作に口に放り込み、やおら水がないと気がついて、再び冷蔵庫まで戻ると冷えたペットボトルの水を取り出して、蓋を開けるとそのまま口に冷たい水を流し込んだ。
そしてフラフラと猫背で歩きながら、そのままベッドに倒れ込む様に入ると、枕と額でアイスノンを挟みながら、腹這いに寝る。
身体の寒気のせいか震えは止まらないが、頭の痛みはアイスノンのお陰で少し和らぐ。
余程瞳さんに助けを求めようかとも考えたものの、今はまだ朝の支度前で深い眠りについている頃だろうからと断念して、そのまま我慢していた。
するとしばらくすると寒気は止んで来たが今度は途端に身体が燃えるように熱くなって来て、正に死ぬかと思う程の苦しさに心が折れた…。
先日久し振りに外出する機会があったので、たまにはと百貨店の書籍コーナーで3時間ほど、ブラブラとしていたのだが、その時にでも貰って来たのかも知れない。
感覚的には、流感ではないかと感じていた。
しばらく熱さと寒さが交互に遣って来て、何度も心が折れた。
そうしている間にいつの間にか、意識を失った。
『……』
そこは如何にも郊外の、というよりは田舎の田園地帯を想像させる風景だった。
風車が風を受けて廻り、その動力で粉を挽いている。
挽かれた粉は大きな編み袋に詰められて運ばれ、やがてはパンを作るための原料になる。
但し貧しい農村の粉挽きでは、生産出来る粉にも限界はあった。
このままでは近い将来、生活そのものが出来なくなってしまうに違いない。
そこで粉挽きは仕方なく娘を売りに出す事にした。
そう言うと人身売買の様に聞こえるが、それは現代の見識を持つ、ちゃんとした教育を受けているために感じる感覚であって、昔は口減らしという名目で、貧しい家の子供たちは、住み込みで働きに出されたり、貰ってくれる家に里子に出されたりしていた。
まだそれなら良い方で、娘が慰み物になるのを承知の上で売りに出す、酷い親も居たようだ。
貧しい粉挽きは、同じ売りに出すなら、高値で売ろうと、一計を案じて娘にきつく言い含めると、村の庄屋のところに連れて行った。
庄屋は始め渋っていたが、よく見るとなかなか気立ての良い娘で、愛くるしい顔をしている。
これはひょっとしたらいい儲け話かも知れぬと、頭の中で計算が立つと、貧しい粉挽きから100金で買い取る事にした。
(;^_^Aかなり酷いお話ですが、懲りずにお読み下さい…(汗)
粉挽きは100金を片手に喜んで帰って行った。
それを見送るとその足で、庄屋は娘を小間使の年寄りに預けると、身体を磨いて髪を整えるようにと命じた。
お風呂に入れて磨き、髪を整えてやると、肌の白さが引き立ち、なかなかの可憐な娘に仕上がった。
親と別れた寂しさとこれからの不安とで、娘は目に涙を溜めているが、それがまた愛らしさを増幅させていて、庄屋は一定の満足を覚えた。
これなら気に入る者が居るに違いない!
そう…庄屋もまた娘を預かるつもりなどさらさら無く、箔を付けて転売しようというのである。
庄屋は高く売るためなのか、はたまた少しは気が咎めたのかは判らぬが、亡くなった妻の形見の指輪を娘に与えると、庶民の身なりでは上等な部類の服を着せて、馬車に乗せるや、街に連れて行った。
そして街の一等地に屋敷を構える男爵に面会を求めると、男爵は庄屋だと言うので、嬉々として喜び、逢うことにした。
何故か…そうなんです!実はこの娘が始めてではなかったのでした。
庄屋と男爵の間では可憐な娘の取引が度々行われていたのです。
貧しい粉挽きがそこまで知っていて、庄屋の家に娘を連れて行ったのかは判りませんが、依りに寄ってこんな恐ろしい人達の餌食になろうとしているとは、娘さん本人はまだ知らないのでした。
可哀想な娘さんはどうなってしまうのでしょうか?
男爵は着飾った身なりの娘を差し出されると、頭の先から足の先までジロジロと、舐めるように値踏みしながら、娘の周りを3周した。
そしてようやく悦に入った様にひとり御馳た。
そして『うん♪うん♪』と頷くや、庄屋に2000金で引き取ると伝えたのである。
『儲かる!』と踏んでいた庄屋もこれには驚いた!
1000金に成れば大儲けと踏んで居たのに、さらに倍額が提示されたのだから、嫌とは云わない。
それどころか、男爵の気が変わらぬうちにと、娘にきつく言い含めると、さっさと2000金貰って、とっとと帰って行ったのだった…。
こうして娘は男爵の手に委ねられた。
娘は男爵の慰み物になってしまうのでしょうか?
ところがこの男爵というのも、余り娘には関心がないようで、大好きなのはお金でした。
男爵も高々2000金でこれだけの上玉が手に入るとは、めっけ物…万金で売りつけようと画策します。
年寄りの召し使い頭に命じると、風呂に入れて、泡立たせ、キラッキラに身体を磨かせて、髪にも上等な油を塗らせ、顔にも白粉をまぶして、綺麗な貴婦人のドレスを着せると、あら不思議!どこから見ても美しい貴族の娘にしか見えません。
これを見た男爵は嬉々として喜び、自分の見立てに間違いが無かったと自負するのでした。
当の娘さんはもはや何が起こっているのか判らなくなっていて、大変困っていますが、既に涙も枯れ果ててしまい、為すがままなのでした。
男爵は庄屋が身につけさせた指輪を見咎めますが、よく見るとそんなに悪くありませんので、そのままつけさせておき、自分はこれぞと思う上等なネックレスを自ら娘の首に着けてやると、少し離れて、再び値踏みしている様です。
そして満足したのか、娘を連れると、上等な馬車に乗せて、そのままお城に連れて行きました。
王に謁見を求めると、日頃何かと役立っている男爵ですから、直ぐに許可が降りて、謁見の運びと成ります。
男爵は王に娘を引き合わせると、王は愛らしい娘をひと目で気に入り、是非貰い受けたいと申し出ます。
いつもなら、「はいそうですか」と一声で承諾する男爵も、この娘がかなりの上玉である事が判っているので、流石に二つ返事では首を縦に振りません。
困った王は5000金というところを7000金と言って半ば強引に引き取ろうとしますが、男爵は万金欲しいと逆に申し出ました。
(^-^;ヤバい連中ですね…もう読むの嫌かも知れませんが、もう少し我慢して下さいね(汗)
王は少し考えていたものの、万金は出せぬ…もし何かその娘に特別な取り柄があるなら考えても良いと言ったのでした。
すると今度は男爵の方が困ってしまいます。
元を正せば、単なる貧しい粉挽きの娘ですから、何が出来る訳でも在りません。
仕方なく男爵は苦肉の策で嘘をつく事にしました。
「この娘は藁を紡いで金に変えることが出来ます!」
それを横でおとなしく聞いていた娘さんは驚きの余り、叫びそうになりますが、あらかじめ男爵からキツく言い含められているので、そんな事をしたら後でどんなに酷い目に逢うか判りません。
一生懸命気持ちを強く以て我慢するのでした。
(;^_^Aみんな…いたいけな娘さんにキツく言い含めているのですね…鬼畜達の競演ですな…。
するとそれを聞いていた王様は、少々驚いたものの、今まで貢献して来た男爵の言葉を、まさか嘘とは思いませんでした。
そこで『褒美』として、万金を男爵に渡して賞すると、男爵は『してやったり!』と喜び勇んで帰って行きました。
ついに気の毒な娘さんは、100金→2000金→万金と100倍の値打ちある娘として王に見初められる事になったのでした。
こうして見ると、お金の厭らしい部分は抜きにすれば、悪い待遇でも無い様に思えますが、実はこのお話はここからが大変だったのです…。
王様がそのまま娘さんに優しく接してくれればハッピーエンドなのですが、この娘さんが『藁を金に変える』力を持っていると聞いているのですから、そのままで済む筈が在りませんでした。
案の定、王様は娘さんに藁を金に変える様に命じました。
ところが娘さんは元々そんな事は出来ませんから、「うん」とは言いません。
業を煮やした王様は、娘さんを塔の上に糸車と藁と供に閉じ込めると、明日の朝までに金が紡げないと命は無いと脅しました。
可哀想な娘さん…酷い男達のせいで殺されてしまう事になるのでしょうか?
娘さんはショックの余り、塔の上で泣き崩れてしまいました。
時間は刻々と経ちますし、端から金など紡げないのですから、このままでは死ぬしかありません。
するとここで不思議な事が起こりました。
娘さんが泣いていると一匹のドワーフ(小人)が、いつの間にか塔の端からこちらを覗いています。
そしてそのまま這い上がって来ると、汚れた手で娘さんの肩をトントンと叩きました。
その異様な顔立ち、醜い風体と余りに衝撃的な臭さに、娘さんは見るなり気絶してしまいます。
するとどこから持って来たのかは判りませんが、革袋に入った汚水を頭から掛けられて、びっくりした余り、叫びながら跳び起きました。
娘さんはそのまま塔の端に掴まったまま固まってしまいますが、そんな娘さんにドワーフは取引を持ち掛けます。
「聞いたよ♪明日の朝までに金を紡がないとあんた死ぬ事になるんだろう?その綺麗なネックレスをくれるなら、儂が代わりに紡いでやろうじゃないか?どうするよ?」
相手は恐ろしいドワーフですが、けして悪い話ではありません。
娘さんはどうせこのまま朝を迎えれば死ぬ運命ですから、正に藁をも掴むという気持ちでした。
そこでネックレスを首から外すと、取引に応じました。
ドワーフはネックレスを受けとると、嬉しそうに自分の首から下げて、ニタニタっと笑っています。
そして満足すると、ようやく腰から下げている革袋から不思議な粉を取り出しました。
その粉を藁に絡めながら、糸車を器用に操ると、アッという間に金を紡いでしまいました。
そしてそれを娘さんの方に放り出すと、またニタニタ笑いながら、塔の端を降りて行き、あっという間に消えてしまったのです。
娘さんはドワーフが居なくなるとホッとして、緊張が取れたのか、そのまま寝入ってしまいました。
明くる朝、王様が塔の扉を開けてみると、そこには疲れて寝込んだ娘さんとそれは見事な金の糸がとぐろを巻くようにたくさんあったので、王様はとても喜びました。
『男爵の言った事に嘘は無かった』と思い込んだのです。
そこで娘さんを起こして、気遣いをすると、立派な身なりに整えさせて、美味しそうな食事をご馳走してくれました。
娘さんも一晩の苦しさから一旦解放された喜びに浸る事が出来たのです。
そして王様もそれで満足したのか優しく接してくれるようになりました。
娘さんも幸せな日々の中、健やかに過ごす事になります。
ところがしばらくすると、王様は再び娘さんに藁を金に紡ぐ様に強制します。
そして有無を言わせず、塔に閉じ込めるのでした。
娘さんは再び困ってしまいました。
すると、どこから聞きつけて来たのかまたあのドワーフがニタニタ笑いながらやって来ました。
娘さんは今度は指輪と引き替えに藁を金に紡いで貰ったのです。
ドワーフは指輪を嬉しそうに指にはめると再び消えて行きました。
王様はまたまた喜び、しばらくは優しく接してくれます。
ところが娘さんも馬鹿じゃありませんので、また王様が豹変する事を恐れていました。
というのも、彼女にはもう交換するべき物が無かったからでした。
しかしながら、案の定、王様は豹変して、娘さんにまた藁を金に紡ぐ様に命じます。
娘さんはもう交換する物がないので、頭が混乱していましたが、このままでは一生この繰り返しになるのが目に見えていましたので、一計を案じてこう言いました。
「王様、判りました。やります。でもこれが最後に成ります。私は力を使い果たしてしまい、もう今回を限りに力を失うでしょう…。どうか憐れとお想いならば、これを最後に私を解放して下さい。贅沢は言いませんから、僅かばかりの支度金を持たせて、どこぞの殿方に腰入りさせて頂ければ恩に着ます。」
そう言うと、藁と糸車と供に自ら塔に登って行こうとした。
すると、王様はそれを引き留めて、こう応えた。
「お前の気持ちは判った。もしお前さえ良ければ、ここに残り、私の妃になってはくれまいか?今までの罪滅ぼしも含めて、これからはお前に報いよう…。返事は明日の朝まで待つから考えてくれ!それでもお前が望むなら、支度金をたんまり与えて、結婚相手を捜してやろう!」
そう言いながら塔の扉を閉じたのだった…。
(;^_^Aおいおい…それが本音ならもう辞めてやれよ♪…そう突っ込みたいところだが、これはそういうお話なので仕方がない(^-^;…アーメン。
さて…変な勢いから再び窮地に立った娘さんでしたが、何となく、ドワーフが現れる予感はありました。
間もなく現れるでしょう…。
でもどうしよう…もう交換する物がありません。
あれこれと無い知恵を絞りますが、解決策が見いだせぬまま、ついにあの気味の悪いドワーフが塔の端を這い上がって来ました。
相変わらず、ニタニタ笑いながら近づいて来ます。
「またまたお困りの様だね…お嬢ちゃん!どれどれ儂が代わりに紡いでやるぞ♪でも何かと引き替えだけどね♪」
ドワーフは然も愉しそうにそう言いながら、汚い手を差し出して、くれくれと物欲しそうに目をギラギラさせながら、涎を垂らす始末でした。
ところが娘さんは黙ったまま応えず、困り果てています。
するとそれに気づいたドワーフはニタリと気味の悪い顔をしながら「ヒエッヒエッヒエッ♪」と笑うでは在りませんか…。
「儂はお前さんがもう何も持っちゃいない事は知ってたのさ♪それを承知で来ておる…どうだ!儂の取引を聞いてみるかね?まぁお前さん次第で良いがね♪」
と然も余裕しゃくしゃくといった呈である。
娘さんはいったい何を強制されるのかと戦々恐々だが、事ここに至っては仕方無い。
「いったい私をどうするつもりなのです?」
そう開き直るように気丈に訊き返した。
するとドワーフは厭らしい顔をしながら、
「お前さん王様に求婚されたそうだな?そうだよな?」
と念を推すように訊いて来る。
『…どうして知ってるの?…』娘は絶句していたが、
「そうよ…それがどうしたのよ?」
と訊き返した。
すると再びドワーフは気味の悪い声で、
「儂の望みは王様の子供が欲しいのよ…クラウンチャイルド♪…それなら金にも優るお宝だ♪それと引き替えならば紡いでやってもいいぜ♪」
そう言うと、「どうするよ?」と恫喝して来た。
娘さんは気が滅入って来た…。
あのすぐ豹変する王様と結婚するのも汚らわしいのに、子供を産んで、さらにその子をこんな気持ち悪い化け物に差し出すなんて…そう思うだけで気絶しそうになった。
それを見ていたドワーフは交渉が決裂すると困るので、少し譲歩してある提案を持ち掛ける事にした。
どうしてもクラウンチャイルドが欲しいらしい。
「どうしても嫌なら王子様の子供でも良いぜ♪あの糞な王様にもなかなかハンサムで利発な息子がいるらしいぞ…それで手を打ってやっても良い(笑)」
そう言うと、「ファイナルアンサー??」とどこぞの局でやっていたクイズ番組さながらに含み笑いをする…。
娘さんはほかに道がないので、ついに心が折れた。
「解ったわ…王子様と結婚します。そして初めて出来た子を引き換えにお渡しします…。」
そう悔やみながら応えた。
「約束は守れよ♪でないと一生祟るからな…。」
そう言うとアッという間にまた金を紡いでしまった。
「アバヨ♪子供が産まれたらまた来るぜ♪」
ドワーフは踵を返すと、塔の塀に足を掛けるや、スルスルと降りて行き、その言葉を最後にまた鮮やかに消えてしまったのでした。
娘さんは遣り切れない想いを胸に秘めながら、泣きじゃ繰りました。
そうして泣いているうちに疲れ果てて寝てしまいました。
明くる朝、王様が塔の扉を開けると、またまた金の糸がたくさん巻いてありました。
王様は喜んでそれを手に取ると、寝ている娘を揺すり起こしました。
娘さんはハッとして跳び起きると、いつぞやの状況と同じく王様が笑顔で見ています。
娘さんは気丈に振る舞うと、王様に「お暇を!」と願い出ました。
そして約束通り、結婚相手を捜してくれる様に求めたのです。
王様は考えました…。
この娘はもう力が本当に無いのか?
もしかしたら嘘をついているかも知れない…。
そう想ったのでした。
あのやらしい男爵は信用するのに、いたいけな娘さんは信用しないのですから、もはや本末転倒です。
しかも元々娘さんには力など無いのですから、馬鹿馬鹿しいったら無いのですが、この王様はやはりどこかネジが抜けているのかも知れませんね…。
それにこの王様が急に求婚したのも、実は裏が在ったのです。
娘さんが力を一時的に無くしても、またいつか甦るかも知れない…ならば自分の手元に置いておけば安心だ♪
何て酷い王様でしょうか?
正に鬼畜の所業ですね…。
『この豹変は一生繰り返す』そう感じた娘さんの懸念は大正解だったという訳でした。
当の娘さんを前にして、王様は流石に約束を違える事は出来ない事を悟りますが、ふと起死回生のアイデアを思いつきます。
世の中…悪党には妙な救いの手があるようでして…。
「ならば、私の息子の嫁になれば良い♪」
そう言ったのでした。
娘さんは言い出せずにいた事を王様から持ち掛けられて、びっくりしましたが、渡りに舟ですから、承諾する事にしました。
但し、この男の義娘になるのは少々嫌ですけどね。
でもドワーフとの約束を守らないと祟られますからやむを得無かったのです。
そして王様も娘を近くに置いておけると密かに喜ぶのでした。
こうして娘さんは王様の息子である王子様と結婚しました。
王子様はあのドワーフの情報通り、ハンサムな紳士で、利発な優しい人でした。
まさかあの王様の子種とは思えない程の人格者だったのでした。
(;^_^A子種…は言い過ぎですな…すみません。
そして王子様は北の辺境の地を守る為に王城とは別の城に住んで居ましたので、あの鬼畜な王様と同居しないで済み、娘さんも心穏やかに過ごせました。
しばらく時が経ち、二人の間にはとても可愛らしい珠のような男の子が産まれました。
王子様はとても喜んでくれて、娘さんをとても気遣ってくれます。
そして何よりも息子である赤子を甲斐甲斐しく抱きしめて、あやしてくれたり、話し掛けたりと、それはもう深い愛情で包み込んでくれたのです。
娘さんにとってもとても幸せな時間が育まれていたのだと言えるでしょう♪
ですがそんな幸せも長くは続かない…そう思わせる事実が娘さんに暗い影を落としていました。
そう…あのドワーフとの約束でした。
ある日の事…遂にその予感は現実に成ります。
王子様は娘さんが時折、見せる寂しげな顔に然り気無く気づいていて、何度か無関係な話の合間に訊いてみたのですが、そうすると急に娘さんは黙ってしまって、話そうとしません。
そこでなるべく遠出はしない様に努めて、二人の傍に居る様にしていたのです。
けれどもある日の事、急に北の国境から救援を求める使者が遣って来ました。
北の蛮族が蜂起したようでした。
そこで王子様はやむを得ず部隊を引き連れて救援に向かったのです。
するとその合間を縫う様に、あの忌まわしい顔のドワーフがヒョコっと遣って来ました。
そして娘さんに約束の履行を迫ります。
娘さんは約束の事は解ってはいますが、人間の気持ちというのは感情がありますから簡単ではありません。
ましてや自分が腹を痛めて産んだ大切な子供です。
『はいそうですか?』とは渡せるものではありません。
もちろん約束したのは自分ですが、この子には罪はありませんでした。
そして何よりもあの頃との違いは、彼女が母性本能に目覚めていた事でした。
『こんな事ならあんな約束はせず、自分があの時に塔から身を投げるのだった…。』
そこまで思い詰めていました。
あんなに可哀想な境遇の娘さんに、このドワーフは何という約束をさせたのでしょう?
正に天国から地獄に突き落とす悪魔の使者でした。
娘さんは子供を庇って必死に抵抗しました。
そしてはっきりと拒絶したのです。
とても勇気のいる行動でしたが、世の中の親とは本来、そういう者なのでしょう。
自分は親にたった100金で売られた身ですが、自分の子供には幸せになって貰いたい…そういう境遇でしたから、さらにその想いは強く働いて居たに違い在りません。
娘さんに必死に請われたドワーフは、娘が約束を守らないのに呆れていましたが、時間を掛けてしまい邪魔が入るのも却って面倒なので、吐き捨てるようにこう告げました。
「三日だけ待ってやる。それで腹を決めると良い。そうだな…お前も今まで可哀想な境遇だったのだから、ひとつ救いの手を差しのべてやろう!これも一興だ♪儂もあの糞な王様ほど、鬼畜では無い事を解らせてやるとしよう(笑)…そうだな…約束の三日後までに儂の名前を当てる事が出来たなら、子供を連れて行かないと約束しよう♪この儂は必ず約束は守るぞ♪あの糞な王様やお前の様に約束を違える事は無い!」
そう言うと、再び窓から飛び出し消えてしまいました。
すると不思議な事には、王子様はその直後に戻って来て、救援の話しはデマカセだったと話してくれたのでした。
恐らくはあのドワーフの仕業に違いありません。
娘さんは改めてゾッとするのでした。
そしてそれからというもの、国中の名前という名前を集めさせて、ドワーフが使うで在ろう名前かを調べさせますが、誰も判らず、一向に進展しないのでした。
でもこれには、息子の運命がかかっていますので、諦める訳にはいきません。
ほとほと困っていますと、そんな事とは知らない王子様が、ふとこんな話をしてくれたのでした。
北の砦から帰る途中、森を通過した際に、奇妙な歌を歌うドワーフを見たのだけれども、とても愉しそうだったのだと。
確かこんな歌を歌っていたと…。
「今日はパンを焼き~♪明日はビール作り~♪そして明後日はクラウンチャイルドを迎えに行くぅ~♪儂の名前がルンペルシュティルツヒェンだとは~♪流石の神様も御存知あるまいぞ~♪ざまぁ見ろ~♪」
それを聞いた娘さんは『!!…何て事なの♪』とこの偶然の遭遇に感謝したのでした。
そして、これまで黙っていた自分の境遇を全て夫に打ち明けたのです。
王子様は始めはびっくりしていましたが、父親の所業にも薄々勘づいて居たので、全てを受け入れて、対応策を考える事にしました。
明日にはドワーフが我が息子を奪いに来る…。
王子様は子供を立派に守った娘さん…否、愛する妻に優しく口漬けをすると、「今度は私の番だ!」と妻と子を守るために、策を練りました。
あらかじめまた北の砦が危ぶまれると身動きが取れなく成るので、夜陰に紛れて兵を出し、北の砦を固めさせます。
そうして、朝一番に大騒ぎを演じて、自分に扮した部下に部隊を率いさせて、砦に向かわせたのでした。
その上で自分は息を潜めると、アンティークの書棚の陰に身を潜めて、その時を待ったのです。
毎回同じ手を使えば、人間など馬鹿だから引っ掛かると油断していたドワーフは、今日も慌てて砦に飛んで行く王子様と部隊を森の陰から冷やかな眼で笑いながら、城に着きました。
そして娘さんの前に遣って来ると、冷やかに最期通告をするのでした。
「さあ、期限は遣って来た♪儂の名前を言ってみろ♪判るかな?さぁ~判るかな?」
とまるでお祭り騒ぎの様に小馬鹿にしながら踊って居ます。
娘さんはそれを見ながら、鬼の首を取るかのような勢いで大きな声で叫びました!
「あんたの名前はルンペルシュティルツヒェン!」
それを聴いて激昂したルンペルシュティルツヒェンは「お前は神様から聞いたな!お前は神様から聞いたな!」と地団駄を踏んだが、後の祭りである。
逆上の余り、自分の目や耳や口や皮膚の孔からもピュ~とどす黒い血が吹き出して来て、やがて一面、真っ黒な血の海になり、その血の海は蒸発して黒い砂になると、そのまま風に拐われて、窓の外に流れて消えてしまったのであった…。
だからこの地方ではある季節になると真っ黒な砂塵が待って人々を喘息に似た季節風邪に掛けるという。
それはルンペルシュティルツヒェンの欲を掻いた哀しみの名残かも知れなかった。
さて待機していた王子様は、踊り出て来た時には手を下す間もなく、愛する妻や息子を抱き締めると、皆で無事を喜び合ったのだった。
それから三人は仲睦まじく幸せに暮らしたそうだ。
『……』
最期に蛇足に成るだろうが、後日談があるので、ご披露しておきたい。
鬼畜な王様は、その報いのためか、突如襲って来た蛮族に頭を斧で克ち割られて亡くなった。
そして金の糸で編んだ服を剥ぎ取られて、真っ裸でその最期を晒す事になる。
噂好きな民の間では、「金の糸事件」と呼ばれて後世まで恥を晒した。
『お金大好き』男爵はある時、売られて来た娘にナイフで刺されて亡くなった。
これも娘さんたちの怨霊の祟りだと噂になった。
もちろん男爵家はこれで断絶した。
庄屋は阿漕な儲けでたんまり溜め込んでいるというもっぱらの噂から、寝込みを強盗に襲われて、一家皆殺しという憂き目に合う事となる。
村人はそれ見た事かと、嘆く人は只のひとりも居なかったそうである。
貧しい粉挽きは…案の定食べていけなくなり、餓死した…。但し、これは祟りかどうかは不明である。
おしまい…。
『……』
『…さん、…さん…蒼生さん!』
蒼生は朦朧とした意識の中で、大好きな瞳さんの声が聴こえる様な気がした。
苦しみ魘されている自分に必死で呼び掛けてくれて居るのだ。
『瞳さ~ん私はここです。ここですよ~。瞳さ~んいつもありがとう…大好きです♪……。』
そんな事を呟いたかもよく覚えていないが、それが切っ掛けとなったのか、意識が戻り、暗闇からうっすらと灯りが差し込んで来た。
「あ!蒼生さん気づいたのね…良かった。」
目が覚めると自分の顔の上には瞳さんの必死の顔があり、少し涙目に為っている。
蒼生はまだ朦朧としているのか、夢と勘違いしたのかは判らぬが、そんな瞳さんの頭を優しく撫でた。
瞳さんは少し戸惑った様だが、徐に両手を私の頬に持って来ると、いきなり引っ張った…。
蒼生はびっくりして完全に目が覚めた。
すると瞳さんは笑顔で自分の頬を引っ張っている。
『ゲゲッ…夢じゃなかったのか(^-^;…。』
蒼生は驚きの余り、目をまん丸くして固まってしまった…。
「それだけ元気ならもう大丈夫ですね…峠は越したのかしら??」
瞳さんは自分の額を蒼生の額につけると、
「うん!熱は下がったみたい♡」
と可愛らしく言った。
蒼生は突然起きたこのラッキー…いやいやハプニングに嬉しさと恥ずかしさが込み上げてきて、想わず顔が真っ赤になってしまった。
瞳さんは気づいてか気づかないでかは判らぬが、
「あら…まだ顔が赤いよぅよ…しばらく安静にしないといけないわね♪」
と言って、カーテンを開き、窓を開けると新鮮な空気を部屋に取り入れてくれた。
そして優しい声で、「少し食べれるかな?」と訊いた。
私は少しお腹が空いていたのでコクりと頷く。
すると、瞳さんは優しく上半身を起こしてくれて、
「少し水分取らないとね♪」
と言ってお白湯を持って来てくれた。
私は喉が乾いていたので、ゴクゴクと飲み干す。
瞳さんはその間にお粥を温めてくれて持って来ると、
「はい♪ア~ンしてぇヾ(´▽`*)♪♪」
と言ってお粥を大きめのお匙に盛って口に運んでくれた。
甲斐甲斐しい看病に蒼生はとても安らかな気持ちになった。
少々照れてまた顔が朱くなったが、心は和やかだった。
お粥を食べ終わると、瞳さんはニコニコしながら、
「全部食べれたね♪これで身体が回復に向かうから、後は薬を飲んでまた少し寝て下さいな。」
そう言って薬とお白湯を渡してくれた。
そして水枕を代えてくれると、ヒヤッと冷たくて気持ちが良い…。
いつの間にかアイスノンは取り出され、水枕が私の頭の下に敷いてあったところを見ると、だいぶん前から来てくれていたのだろう…。
蒼生は「瞳さん有難う♪…今何時ですか?」
と聞いた。
すると瞳さんは、
「今はお昼の1時頃かな…。」
そう応えたのであった。
私はびっくりしてしまって、
「お店は…気分屋は大丈夫なのですか?」
と聞いた。
すると瞳さんは「……やっぱり…。」
そう応えると、また頬を両手で優しくつねる。
(*^_^)-c<^_^;)…
「そんな事だと思ったのよ…優しさは時には罪よ♪」
そう言って、
「こんな時は遠慮しないで言ってくれなきゃ…一階と三階とは言え、同居してるんだから遠慮しないの♪」
瞳さんは優しく微笑むと頬をさらに摘まむ。
蒼生は嬉しいやら戸惑うやら恥ずかしいやらで、とても幸せな気分に為れた。
これは後で訊いた話だが、朝の販売が終わっても、蒼生のトレイが戻って来ないので、不思議に思ったそうだ。
そこでエレベーターを下げてみると、朝御飯が手つかずでそのまま残っているのをみて、急遽お昼の販売を臨時休業すると、慌てて上がって来たのだそうだ!
一応二人の間では、元々互いの緊急時のために、合鍵を作って持っている。
それを使って恐る恐る入ってみると、蒼生が高熱で寝込んでいたのを見つけたらしかった。
瞳さんは少しぷりぷり怒りながら、
「次からは遠慮は無し!ちゃんと言って下さいね♪」
そう言って、「お大事に♪」と言うと、お粥のお椀を新しいものと替えてくれて、小さな土鍋をベットの傍のサイドテープルに置くと、「お腹空いたら食べてね♪」と可愛らしくウインクするや、自室に引き上げて行った。
去り際にフフフと笑うと、「また後で見に来るね♪」と優しく微笑んだ。
人間は危機に陥った時にはじめてその人柄が表れるという。
蒼生は瞳さんの優しさと気丈さに改めて触れて、そう想ったのだった…。
そして若き王妃様と家族三人が幸せに暮らせるよう願って止まないのだった。
【第14話 了】
【第14話後書き】
このお話は元々かなり短い童話なのです。
そして「藁を金に替える」と嘘を付くのも貧しい粉挽きでした。
アンデルセン童話では、時に話の前後の辻褄が合わなかったり、現実とは想えない出来事が淡々と描かれているという話しは先に述べた。
グリム童話でも似たようなケースは多々見受けられるようだ。
粉挽きが王様に会う?(;^_^Aどこで?
ドワーフに差し出すネックレスや指輪はどこから来たの?(;^_^A
そんなのがあるならそれを金に代えろよ(爆)
急に会った王様がネックレスや指輪を娘にあげるのも変だし…。
この辺の話の流れはまるで理解出来ませんでした。
そのため、実際は話に出て来ない、「庄屋」や「男爵」を登場させる事にして、その辺の辻褄がなるべく合うように仕上げてあります、
その辺りの作者の苦労?を読みとって下さると嬉しいです(*^^*)♪
また塔に娘を閉じ込めて、何度も金を作らせるために豹変する王様が娘と結婚する…その点もかなり気分が悪いです。
女性から見たら余計そう感じるかも知れないですよね?…そこで王は悪党のままにして、麗しい王子様を登場させています。
原作では王子様も出てきません。
そして悪魔の使者ルンペルシュティルツヒェンは、なかなかユニークな存在として描きました。
その身体や言葉遣いなども、実際のドワーフを参考にする代わりに、『指輪物語』のゴラムをイメージして加筆していきました。
気持ち悪さと軽快さが表現出来ていれば嬉しく想います。
今回のお話は人間の内面の本性と危機に直面した時に表れる人柄を表現する事に力を注ぎました。
それに合わせるように、蒼生と瞳さんの内面の誠実さと心の中のちょっとした変化を著したかったのですが、うまく書けているといいのですが…。
また今後も二人の進展と童話の醍醐味を引き続きお伝え出来れば良いなと想っています。
長編を最期まで読んで下さり感謝に耐えません。
また引き続き宜しくお願い致します♪
【作者より愛を込めて】




