ベレー帽の美少女
カレー屋に行った次の日は気をつけている。
体臭にカレーが混じっていると
『裏切り者はヤッちゃうよ?』
とカレー臭にうるさい厨二病女が黒い殺人兵器を背中に突き立ててくるからだ。
桜も少し散りかけてきた4月2週目の通学路で俺はそいつと出会う。
『よう、天野。』
切り揃えられた前髪。
黒いロングヘアにまわりから見てもわかるハリのある胸元。黒タイツに頭には紺色のベレー帽がちょこんとのっている。
『はい。天野です。あなたのお名前は?』
『いやだなあ、タケルだよ。狩野タケル。』
『ああ、はい。』
名前は天野ハルカ。
声が高めで控えめなお嬢様という佇まいだ。
しかもぽやんとしていて可愛いのが天野だ。
コミュ障で無口で、でも体つきはエロいのだ。
こんな子とラブコメできたら
よくあるエロゲー的な展開を期待出来そうだ。
『あー結婚したい。』
『はあ、、誰とですか?』
人差し指を頬に立てて首を傾げる。
かわいい。
『天野、教室で見かけなかったけどどこにいたんだ?』
『ああ私は、その、、なんというか。』
モジモジしはじめる。
俺は耳打ちする。
『俺は知ってるんだぜ?』
ニヤリと口角を上げる。
『え、そ、そんな、、困ります。どうしよう。』
ふっふっふ。
慌てふためく天野を見て俺はある妄想をする。
ここで2人だけの秘密にして脅して肉体関係を迫るのもなんだかエロゲー的な展開としてはありのような気がする。
ベレー帽だけ被せたまま組み敷く。
『ぐふ、ぐふふふ!』
『タケルくん、よだれが出てるわ。』
さっとハンカチで俺のよだれをふく。
俺は顔が熱くなる。
こういう不意打ちを天野はやってくるのだ。
なんだか勝てない。
『天野、冗談だよ。でもさ、教室に来いよ。お前がいると教室が華やぐんだ。』
下心なくそう伝える。
『わ、ワタシ人多いとこ、苦手で、、、』
『あ、まあそうだよな。強要はしねえよ。俺がそっちに行くかな。昼休みにでも。』
『あ、うん。気をつけてね。』
『あいよ。』
『じゃあ、バイバイ。』
天野は控えめに手を振り校舎へ向かっていった。
昼休みは天野のところに行くか。
よし、じゃあそれまでは授業をサボるとするか。
校舎を背に進行方向を変えようとする。
『裏切り者はヤッちゃうよ?』
眼帯の美少女が、今度は俺の頭に銃を突き立てていた。
授業はサボらせてくれないようだった。