カレー屋姉妹
俺は地下マンホール街のうっすらとした市場に入る。
ここは、飲食店が立ち並ぶ市場だ。
食品の流通も行っているが、基本的には飲食店が立ち並ぶ。
寿司に、唐揚げ、イタリアン、中華、東南アジア系の店など様々な食事を楽しむことが出来る。
どの店も人でごった返している。
俺は喧騒の中をくぐり抜け、一つの店にたどり着いた。
『よお、タケルさんですかっ!』
サラッとしたショートヘアの金髪に、健康的な褐色の肌。タンクトップにホットパンツ。タンクトップは見事な双丘ではちきれんばかりになっている。
サファイア色の大きな瞳で俺を覗き込むのは、この店の看板娘の小田ケイだ。
『お前、そのタメ語と敬語が混じった言葉遣い、どうにかならないのか?』
『はあっ!?タケルさん、今日はようこそお越しやがりましてありがとうねです。』
名前がこれで、小田ケイというれっきとしたこの国に馴染む名前だから怖い。
『今日はレンちゃんはいないのか?』
昼時なのにがらんとした、店内を見渡す。
『レンは今、デリバリー中だぜ、タケルさん。』
『そうか。』
このカレー屋は基本的にはデリバリーがメインだ。
というか表向きはカレー屋でなくただの倉庫なのだ。
『こんな、美味いカレー屋なのに、何という仕打ち!!』
『仕方ないよ、タケルさん。お前もワタシらの事情は知ってやがるだろうか?』
『ああ、まあでもこうやってお忍びで食べれるしデリバリーで飲食店街の店員にだけしられてる隠れ家的な店、俺は好きだからいいんだけど。』
『タケル、ワタシらの店好き?つまり、ワタシのこと好き?』
ケイは顔をぽっと赤くする。
日本語が通じない、というかせっかちで思い込みの激しい女なのだ。
『タケル・・・・。』
ケイがスリ寄ってくる。
なぜか尻を振りながら。
(む、胸があたる!)
ああカレーのスパイスやら、なんやら香しいにほいが、、、、
『あちょー!!!』
頭に痛みが走る。
痛みの方を見るとフライパンが目の前にあった。
『姉ちゃんを拐かすな、この色ボケ勃起マシーンが!!』
銀髪ロングに褐色肌のタンクトップにホットパンツ、姉とは違いまな板さんの小田レンの般若のような顔が目の前にあった。
『だから!ケイの勘違いだっつうに!あ痛っ!』
ケイは俺の顔に消毒液をドボドボかける。
『タケル、Mだろう、よく染みるし治るよ。』
ケイは天然なのか。
レンがきっしっしと笑う。
『笑うな!お前のせいだろうがっ!』
『悪かったよ、タケル。だから、店主に頼んでカレーただにしてやってんだろ?』
この店の店主は顔を出さない。
キッチンでカレーをかしゃかしゃ作ってるのは聞こえてくるが、顔を出したことがない。
レンがキッチンにすっ飛ぶ。
『はい、チキンカレーお待ち!!』
目の前にはゴロッとしたチキンがたくさん入った黄色のカレーと炊き立てのライスがある。
『いただきまーす!!』
もしゃもしゃ食べる。
『美味い!ああ美味すぎる!』
『えへへ、よかったタケル。』
ケイは俺の頭を撫でてニコリと笑う。
ケイのこういうあざとさというか、かわいさは悪意や下心がないから罪深いのだ。
天然の姉とシャキシャキした妹。
対照的な2人だが、うまく噛み合っている。
『なあ、レン。』
『なんだ?タケル。』
『お前らもさ、学校通わないのか?』
レンもケイも俺と歳はあまり変わらないはずだ。
『はあ?いかにお胸はなかろうが、アンタより一回りも年上なんよ?あちょー!』
なぜか貧乳アピールをする、レン。
必ず脳天に炸裂する空手チョップ。
痛い。
『そうか、そうだったな。』
もしゃもしゃ食べ続ける。
なんとなく会話が止まってしまった。
気まずいな。
知ってるはずなのに。
知ってるはずなのに。
『はーい、タケルさん?お口の周りにカレーついてるよー??』
胸元が見える体勢でナフキンで俺の口元を拭う、ケイ。
む、胸がっ!
『この勃起マシーンがっ!』
脳天に踵落としが炸裂した。
意識が飛びかける。
そんな最中思った。
やはりこの姉妹とのやりとりはずっとこんな感じなのだろう。
これでいい。
何も
何も変えない方がいいのだ。