魔法
翌日のお昼過ぎにクレアとメイは庭に立っていた。
「ではこれから魔法について勉強していきましょう。」
「はい!」
「まずはクレア様は魔法についてどのぐらい知っていますか?」
「えーと、詠唱したら撃てるの!」
「それは詠唱魔法ですね。まずは魔法について教えていきましょうか。」
魔法は大きく分けて3つの種類がある。
一つ目は詠唱魔法。
自分の持つ魔力を用いて詠唱を行い魔法を発動するものだ。もちろんイメージ力も必要とされているため強力な魔法を放てるようになるまではかなり長い道のりだ。だが貴族は学園で様々な見聞を深めることができるため魔法が得意なものも多い。なので貴族は詠唱魔法を使うことが常である。
二つ目がスクロール魔法。
これは魔力をためることのできる紙に魔法陣を描き、少ない魔力で発動させるものだ。これは主に平民が使用することが多い。平民は魔力をあまり持っていないのでスクロール魔法が開発されたときは歓喜したていた。
そして三つ目が精霊魔法だ。
精霊魔法は精霊と契約し空気中の魔力を用いて精霊に魔法を行使してもらうものだ。この精霊魔法はかなり特殊なもので、そもそも精霊と契約を交わすことができた事例がかなり少ない。精霊はあまり人前には出てこずこの国で精霊魔法使いが確認されたのはもう400年も前のことだった。今では当時の文献を頼りに研究を進めている状況である。
「……とまぁこのように三つの魔法があるわけです。クレア様は詠唱魔法を勉強していきましょう。」
「先生も詠唱魔法を使うのですか?」
「そうですよ。といっても私は風属性と無属性しか使えませんが。」
「属性ですか?」
人によっては得意な魔法や不得意な魔法がある。
メイの場合は、風の魔法が一番得意で次に無属性となっている。逆に水属性や火属性は苦手な魔法だ。
この得意不得意は魔力の消費量に影響する。通常の2分の1の消費量ですむのでかなり大きなアドバンテージとなる。よほど苦手じゃなければ苦手な魔法も使えるが、人によってはまったく使えない人もいる。
「ではまず魔力を感じてみましょう。クレア様、手を出してください。」
「こう?」
クレアはメイに言われた通り両手をメイに向けるように手を出した。そしてその手をメイがやさしく握る。
「これから私の魔力を動かしてみるのでクレア様はその動きを感じてみてください。では行きますよ。」
クレアは目を閉じ、メイとつながっている手に意識を集中させた。すると僅かにだが何かが動いているのを感じた。それは時間が過ぎるごとにどんどん動いているのが感じ取れるようになった。
「わかりますか?今動いているのが魔力です。クレア様もこの魔力を持っていますので動かすことができますよ。まずはおへその上あたりに意識してみてください。」
メイに言われたとおりにおへその上あたりに意識を向けるとなんだか温かいものがあることに気づいた。そしてそれはクレアの思い通りに動き始めた。
「お上手ですよクレア様。この魔力操作は魔法を発動するうえでとても重要なことです。なので寝る前などにしっかりと練習しておいてください。
「はーい。」
「では一通り魔法を使ってみましょう。そうすればどの魔法が得意なのかわかりますよ。まずは魔力を練って私の詠唱を真似してみてください。」
「はーい!」
「我が先を照らせ、『灯火』」
メイの人差し指の先に小さな炎が揺らめいていた。
「これは灯火という魔法です。属性は炎属性ですね。この魔法が使えれば夜のトイレも怖くありませんよ。」
「先生は怖かったのですか?」
「………いえ、怖くありませんでしたよ。ではクレア様、灯火を使ってみてください。」
「我が先を照らせ、『灯火』」
クレアが魔法を使うと指の先に小さな炎が揺らめいていた。
「できた!」
「はい、よくできましたね。魔力の消費量はどうですか?」
「全然減ってないよ!」
そしてクレアはメイの指示通りに魔法を使っていった。
「火、水、風、光、闇、それに無属性。得意属性は全属性ですか…。すさまじいですね。」
「すごいの?」
「はい、それはもう。得意属性は普通一つか二つなのですよ。私も全属性が得意属性の人は冒険者活動をやってきましたが、見たことありません。」
「では、そろそろ終わりにいたしましょうか。また明日訓練しましょう。」
「はーい!」
こうして今日の魔法訓練が終了した。