出会い
「クレアさん、こちらです。」
エリスについていった先はとてもかわいらしい部屋だった。
壁一面に様々なぬいぐるみが設置されており種類も様々だ。特にクレアの目についたのは、ベッドの上に置いてあるクマのぬいぐるみだ。
「このクマさんものすごく大きいね!」
「それは私のお気に入りなんですの。毎晩このベアー君に抱き着いて眠るととてもよく眠れんですよ。」
「ベアー君かぁ。かわいいね!」
「クレアさんもあちらにあるぬいぐるみで良ければお渡ししますよ?」
「え!いいの!?」
「はい!お友達ですもの!」
そしてエリスとの議論の末クレアの手には狐のぬいぐるみがあった。
「エリスちゃんありがとう!一生大切にするね!」
嬉しそうに狐のぬいぐるみにギュッと抱き着いた後部屋の隅で待機していた侍女にぬいぐるみを預けた。
その後はお茶を飲みながらエリスと談笑し気づけばもう夕方となっていた。
「クレア、そろそろ帰るぞ。」
「はーい。」
「また来てくださいねクレアさん。」
「またねエリスちゃん!」
エリスとまた遊ぶ約束をしてからクレアたちは帰っていった。そしてその2週間後、クラウド家一行は領地へと帰還した。
お披露目会から3か月後。
クラウド家の屋敷にメイがやってきた。
「ご無沙汰しております。クラウド伯爵。」
「久しぶりだな「風刃」殿。」
メイはこの2年間、さらに実力を磨きはれてAランク冒険者となった。そんなメイにダレンがとある依頼を申し込んだのだ。
「ご息女の魔法訓練ですか。」
「うむ、クレアも魔力を持っているからな。それにクレアも教えてほしいと言っていてな。頼めるかね?」
「もちろんお受けいたします。期間はどうしますか?」
「まずは一年お願いしよう。その後は『風刃』殿の空いている時間でいかがかな?もちろん拘束期間が長いため報酬も色を付けさせてもらうよ。」
「わかりました。」
「クレアのことをよろしく頼むよ。」
ダレンの依頼を受けたメイは早速明日からクレアに魔法について教えることとなった。さらに最初の1年は伯爵家に部屋を用意してくれるとのことだったので、まずは宿へ戻り荷物を整理した。そして宿を引き払い伯爵家へ再び戻る。
伯爵家へ戻ると既に部屋は準備してあるとのことだった。クレアとの顔合わさせは今夜の夕食の時に行うとのことだったので夜まで部屋で過ごすことにした。
特にやるべきこともないのでぼんやりと過ごしているといつの間にか夜になっていた。そしてドアがノックされ夕食の準備が整ったと知らされたので移動した。
メイが席に着くと次々と料理が並べられた。どれもこれもメイの実家ではあまり食べられない料理ばかりだ。
「ではいただくとしよう。」
クラウド家の主であるダレンが食事に手を付けるとそれを合図に各々が食べ始める。メイも子爵家の出身なのでテーブルマナーはしっかりとしていた。
「ほらカレン、お野菜も食べなきゃだめだよ。」
「むー、やぁ。」
メイはちらりと妹の世話をしているクレアを見た。やはりメイの目にはクレアの年齢にはそぐわない魔力量が見えていた。2年前に見た時よりもずっと増えているようだ。対して妹のほうはあまり魔力を持っていないようだった。
「さてクレア、前に魔法について学びたいと言っていたことは覚えているかな?」
「うん!覚えてるよ!」
「それはよかった。こちらのメイ先生が明日から教えてくれることになった。」
「メイと申します。明日からよろしくお願いしますね。」
「メイ先生ですね!よろしくお願いします!」
こうしてクレアとメイの出会いははじまっていった。