表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/4

誕生

王国歴487年、クラウド伯爵邸に新たな命が誕生した。


「オギャアアアアア!!!!!」

「あなた、元気な女の子ですよ。」

「おぉ!ありがとう、元気に生まれてきてくれて本当にうれしいぞ!」


この伯爵邸の当主であるダレン・クラウドはそう言って涙ぐんだ。この国では出生率がかなり低く子を産むのも命懸けだ。


「あなた、この子に名前を。」

「うむ、この子にはクレアという名前を付けよう。」


クラウド伯爵家長女、クレア・クラウドが誕生した瞬間であった。


ーーー王国歴489年。


クレアが2歳の時、クラウド伯爵邸に1人の少女がやってきた。名前はメイ。彼女は15歳という年齢でありながら冒険者ランクB級を持っている冒険者ギルドの期待のエースである。


そんな彼女がここへと来た理由は、クラウド伯爵家の領内の魔獣討伐だ。近頃魔獣による被害が領内で増えたため冒険者ギルドに依頼したのだ。


討伐自体は至極簡単に終わった。メイの使う風魔法により蹂躙されたのだ。そして討伐依頼の報告を行うためにここクラウド伯爵邸へとやってきていた。


メイは応接室に通され紅茶をすすっていた。今は冒険者をしているが元は子爵家の二女である。基本的なマナー等は身に着けているのだ。紅茶を飲みながらゆったりくつろいでいると応接室の扉がノックされた。


「どうぞ。」


メイが返事をするとダレンが入ってきた。


「待たせたね。」

「いえ、お構いなく。」


もう一度紅茶を入れなおしてもらいさっそく本題に入った。


「ハイエイプとレッサーエイプの討伐は完了しました。これがギルドから発行された討伐証明書です。」


ダレンは受け取った討伐証明書をさっと読み頷いた。


「うむ、ご苦労だった。これで村の者も安心して暮らせるだろう。」

「ありがとうございます。」


そういってダレンは、依頼書にサインをしてメイに渡した。受け取ったメイは懐に入れ紅茶を飲みほした。


少しばかり世間話をした後にメイは宿へ戻ることにした。伯爵邸から出て庭を歩いているとき、メイは己の目を疑った。外で元気よく遊んでいる小さな女の子が原因だった。なぜなら、彼女の魔力量がメイの魔力量の半分もあったからだ。


魔力は基本貴族が多く保持していることが多い。魔力量が多い夫婦の子供は多くの魔力を持って生まれてくることが多いからだ。反対に平民は保有魔力量はかなり少ない。少ないが必要魔力が少ない魔法なら使えるものがほとんどだ。


メイの保有魔力量は貴族の中でも多いほうだ。メイの両親はあまり魔力を持っていなかったが、メイは多くの魔力を持って生まれた。たまに両親より多く魔力を持って生まれてくる子供もいる。メイもその事例だった。


しかしメイの見ている女の子は、メイが幼い時に持っていた魔力量をはるかに上回っていた。


とんでもない子を見てしまった、そう思ったメイだった。


ーーー王国歴490年。


クラウド伯爵家に新たな命が誕生した。名前はカレン、女の子だ。クレアは3歳となり姉となった。


ーーー王国歴492年。


クレアは5歳になった。5歳になると王都にある王城でお披露目会をするのがこの国での習わしだ。つまりは貴族として初めての社交界なのである。


クレアは4歳のころからマナーや立ち振る舞いを学んでいた。ダレンが家庭教師を雇ったのである。当初はダレンはあまり期待をしていなかった。クレアもまだ4歳。遊びたがりの時期だ。だがそのダレンの予想は外れた。クレアは真面目に家庭教師との勉強を行っていた。クレアは家庭教師がつけられるや否や貪欲に知識を蓄え始めたのだ。


今までは外で走り回ったり木登りをしたり、また雨の日には雨に濡れ泥まみれになりながら遊びまわっていたが、簡単な本を読み始めていた。そして読んでいた本は子供向けから徐々にレベルアップしていき、今では恋愛小説を読んでいる。さらに算数も足し算は余裕でできるようになってしまった、


このことを家庭教師から聞いたダレンは、驚きのあまり5分ほど開いた口がふさがらなかった。


そして5歳のお披露目会当日、クレアは紅のドレスに身を包みダレンとその妻であるカリーナは王城へ向けて馬車に乗っていた。


「クレア、このお披露目会はお前の初めての社交の場だ。無理をせず楽しむのだぞ。」

「わかっているわパパ。お友達もいっぱい作れるように頑張るわ!」

「クレア、パパではないだろう?」

「はい、お父様。」

「会場でも気を付けるのよ?」

「わかっているわママ……じゃなくてお母様。」

「はぁ、ほんとに大丈夫かしら……。」

「まぁ、大丈夫だろう。クレアなら何も心配いらないさ。」


ダレンの親ばか発言にカリーナは苦笑するが実際その通りなのだ。5歳児がすでに恋愛小説や足し算ができるようになっているのだ。きちんと家庭教師に教わったマナーや作法は覚えている。


そんな会話を続けているうちに王城に到着した。馬車から降りてお披露目会の会場である大広間を目指して歩く。その道中には立派な騎士鎧や絵画など様々なものが展示してあった。クレアはキラキラした目でそれらを見ていた。しかしここは既に社交の場だ。もっと近くで見たいという欲を押さえつけ会場に向けて歩いていく。


「レフィーユ伯爵家、ご入場!」


前のほうを歩いていた人たちが家名を呼ばれ大広間へと入場していった。次はクレアたちの番だ。


「クラウド伯爵家、ご入場!」


大広間に入って目に飛び込んできたのはキラキラと輝く人たちだった。あっちもキラキラこっちもキラキラ。まるで夢の世界に迷い込んでしまったように感じる。


まず最初にやることは挨拶回りだ。これもきちんと授業で習った。王族、公爵家、公爵家、伯爵家の順に挨拶していく。王族には、クレアの3つ上にアレン王子がいる。アレン王子は既に婚約者がいるらしいがクレアに向かってウィンクしてきた。クレアもぺこりとカーテシーで返した。王子とのあいさつが終わり公爵家の方々に挨拶に向かうときにちらりとアレン王子を見ると、おそらく婚約者であろう女の子に腕をつねられているところだった。


挨拶回りが終わると子供たちは大広間の中央へと集まりだした。今回のお披露目会の主役は5歳を迎えた子供たちなのだ。


「クレアさん。」


クレアの背後から名前を呼ばれたので振り返ってみると青髪の子がいた。


「エリスちゃん!こんばんは。」

「こんばんは、クレアさん。」


カーテシーで挨拶をし近くにいた侍女にジュースをもらい話し始めた。


「改めて自己紹介いたしますわ。エリス・レフィーエですわ。」

「クレア・クラウドだよ。よろしくねエリスちゃん!」

「よろしくお願いしますわ。」


クレアとエリスは先程の挨拶回りの時に知り合った。ダレンとレフィーエ家当主は学院時代の友人であり家族ぐるみでの付き合いがあった。そのため両家の親から仲良くするようにとのお達しが下ったのだ。まぁ、それがなくともクレアは自分から友達になりに行っていただろうが。


「それにしてもエリスちゃん、きれいだねぇ。その白のドレスとっても似合ってるよ!」

「ふふっ、クレアさんもとても似合っていますわ。私のこのドレスは領地の布を使っていますの。」

「そうなんだ!確かエリスちゃんのおうちって私たちの領地のお隣だったよね?」

「えぇ、そうですわ。」

「じゃあまた会えるかもね!お父様もエリスちゃんのお父様とお友達って言ってたし!」

「楽しみにしておりますわ!」


クレアとエリスはその後、ともに会場内をめぐった。特にめぼしいことはなく早めにお披露目会が終わった。これからは大人たちの時間ということで、当主は残り子供たちは母親や侍女たちとともに帰っていく。


クレアもカリーナとともに王都にある屋敷に帰ることになった。


「お披露目会はどうだったかしら?」

「エリスちゃんとお友達になったよ!」

「まぁ、それはよかったわね。王都には一月ほど滞在する予定だからエリスちゃんとも遊べるかもしれないわね。」

「ほんと!?」

「えぇ、ほんとよ。」

「やったー!」


お披露目会から一週間後、クレアはダレンとともにレフィーエ家の屋敷へと訪れていた。


「やぁ、ようこそダレン。そしてそちらのかわいらしいお嬢さん。」

「おう、一週間ぶりだなカイル。」

「こんにちは!」


レフィーエ家の屋敷は色とりどりのカーペットが敷かれていた。


「うちはね絹の生産が主な産業なんだよ。」


クレアがじっとカーペットを見ていたのが見られたらしい。カイルの言葉にクレアはなるほどと納得していた。


カイルの案内でリビングへ向かうとそこにはエリスがいた。


「クレアさん!」

「あっエリスちゃん!」

「エリス、遊んでおいで。」

「はい!クレアさん私のお部屋に行きましょう。」

「うん!」


そしてクレアとエリスはエリスの部屋へと向かっていった。

ちなみに部屋に残された二人はというと。


「クレアちゃんもかわいいけどうちの娘のほうがかわいいな。」

「何を言っている。クレアの笑顔を見たか?あれは将来美人になる。」


1時間ほど自分の娘の自慢をしていた。

不定期更新だけど頑張ります!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ