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勝った。もう大丈夫だよね、勝ったんだよね。
力が抜けてその場にへたり込む私をグリーンさんとリオが支えてくれた時だった。
『ぴんぽんぱんぽーん』
そんな、間の抜けるような声が突如何処からか聞こえて来た。
聞こえた瞬間冒険者達は全員警戒態勢に入ったけれど、声の主はどこにも見えない。
『やあやあ、凄いね!あの蟻達を倒すなんて』
……どこかで聞いたことのあるような耳に馴染む声の主は興奮してるようだ。
嬉しそうに言うけれど、何となくムカつく。
『迷宮ボス討伐記念に僕からもお祝いをするよ。そうだね、今から一ヶ月間鉱石の出現率倍増、レア鉱石の出現率倍増してあげるよ。何なら魔金もちょこっとだけ、出してあげるよ』
けれど、その言い分は聞き逃せない。
そして言葉が真実であることを証明するかのように………ぱっと、キノコ蟻が剥がれて地面が剥き出しになったところの一部が、魔鉄へと変化したのだ。
『討伐おめでとう。君たちを見ていてよかったよ、面白いものを見れた!じゃあ、これからも冒険頑張ってね』
そう言って声は聞こえなくなった。
でも、先程の声が夢ではないことの証明のように壁のあちこちに剥き出しの魔鉄が発生している。
「……まさか、迷宮の管理者か」
冒険者の誰かがぽつりとつぶやく声が、とても大きく響き渡ったーーー。
頭が居なくなった蟻は烏合の衆だ。
一部は要治療者としてトールさんに回収されつつも大多数は無事で後はサクサクと事後処理が進む。
そして状況が落ち着いたので宿屋の扉を大穴の入口に直で置いて、中の従業員達も解放し私達も事後処理を始める。
「…………」
動かなくなった、頭の割れた女王蟻の死体もグリーンさんが石を操って分割することなく中に持ってきてくれた。
キャンプ場の半分を陣取る巨大な女王蟻の死体。クリハラさんはそれをじっと見て……座り込み、メルディさんがその背を叩いて寄り添っていた。
彼にとっては冒険者を引退する羽目になった原因で、メルディさんにとっては仲間の仇だ。思うところも多分にあるのだろう。
二人は見なかったことにして、外の様子を見に行くと相変わらず緑色に光ったグリーンさんがニコニコ笑いながら冒険者達が上がってきやすいように階段を作っていて。
その隣ではガドルさんが漢泣きをしていた。
グリーンさんは階段を作りながらも器用にガドルさんの頭を撫でてあやしていて、こちらも念願の精霊石を手に入れたから思うところがあるのだろう。
「あ、マジックバッグ使えなくなった」
「おーい、マリィちゃんお願いー」
「良いんですか?」
回収作業の途中、また迷宮の魔力が満ちてきて魔道具が使用禁止になったようだ。
再度使えるようにして欲しいと言うエストラさん達に疑問を返すと、エストラさん達は首を傾げた。
「感覚的に多分あと一回くらいしか使えないけど今使っていいんですか?……帰還スクロールがあるなら一瞬で帰れるようになりますけど」
「誰か帰還スクロール持ってねえか!!」
「おい、転送魔法使えるやつ居ねえのか!!」
話を普通に聞いていた作業中の人達がこぞって帰りが楽になる道を模索し始めるのを笑ってみながら、上からキノコや事切れた蟻達の回収を手伝う。
そうそう、女王蟻がずっと食べていた巨大モグラ。こちらは残念ながら肉は腐り始めていて人間には食べられたものじゃなかったけれど……硬くて食べられなかったからか、モグラの巨大な爪だけが沢山女王の周りには落ちていた。
一番高価な部位が大量に手に入ってクリハラさんも何故かガドルさんも喜んでいた。
ガドルさん、貰う気満々だろうなあ。




