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知ってる。街の正体をお祖母様は気づいた。
「あれか、兵隊等をぎょうさん入れたっていう宿屋かいな?」
「そうどすえ。使わん言うて貸してくれはったんよ。うちもう楽しゅうて楽しゅうて。旅しながら街を持つ日が来るとは思っとらんかったわ」
にこにこと笑っていると、一番初めに…食のカイザー兄さんが笑みの質を変えた。だけど、それだけだ。食いついたのはカイザー兄さんだけに過ぎない。カイザー兄さんの担当は食。つまり時間停止マジックバッグを最も欲しとるから反応しただけや。
マリィの影響力を考えたら…少なくとももう一人は噛ませたい。
「言うて、ただのデカいマジックバッグやろ?」
ただのマジックバッグ。うちも初めはそう思っとった。
ーーーでも、今はそうは思わない。
今まで孫として
親戚の娘として
ーーひよっこ商人として無邪気に笑った笑みを
哀れみを乗せた笑みへと変貌させる。
「お祖母様は『見た』ことあらへんさかいなあ…百聞は一見にしかずをあれほど痛感したの初めてや。あんなやばい空間見れば……一生を賭けたなるわ」
一生を賭ける。五人に喧嘩を売った以上、商人として叩き潰されるかもしれない。
けど勝算は大いにある。あの空間はそれだけの期待値を孕んでいる。たかだか収納に適したマジックバッグなんてどうでもいいと感じる程に。
「……あのちびっこが随分と大口を叩くな」
不快感を顕にしたのはゴロウ兄さんやった。
でも、まだや。まだ賭けには負けとらん。
「そら、なあ。叩きたくもなりますわ」
あんた達は『見て』無いから。
『知らない』から。
大商人達からの威圧を、笑っていなすも指先の震えまでは止められん。
「………せやな。うちらは『見て』へんからな。そこまで言うならちょお見せてやマキちゃん?」
来よった!!お祖母様が来よった!
内心で興奮しはりながらも、にっこりと笑って頷く。
「ええ、構わんどす。いつ来はりますか?」
本来ならばマリィが戻ってきてからがパフォーマンスの質が最高に高いけれど、それだと店を開く1週間後には間に合わんかもしれん。痛し痒しやけど、マリィが居らんでもパフォーマンスは出来る。
と、思ってはいたけれども。
「今や。転送師を連れておいで」
「会長!?」
「え、いま!?」
「おば様!?」
「マジかよ」
今。今来る。それはさすがに早すぎや。
「ほらあんたらも準備せえや。せっかくマキちゃんの人生賭けた代物や、一緒に見るよ」
唖然としてる間にお祖母様の後ろに青年が現れると姿が消えて、カイザー兄さんのところに。
そこでも姿が消えてフェルン兄さんの所に。ファレナ姐さん、ゴロウ兄さんと来て…ほんに直ぐにうちの目の前に勢ぞろいしよった。
…さすが人材と情報のお祖母様や。
とんでもない転送師を持っとるわ。




