19
翌朝目覚めると、私は泣きじゃくった弟妹達にタックルを受けた。
「ねえじゃー」
「何してんだよもう!」
「うで、無くなるかと…」
「お、おれ、火傷のあとを治すポーションきっといつか作るから!」
ネロもリリエラもレオもリオも泣いていて。
全員を抱き返しながら、ダーツが泣きそうな顔でこっちを見ていることに気づく。
「ほら、ダーツもおいで」
「……ごめん姉さん。俺、どの程度の怪我でどのポーションかわからなくって…」
「そっか、おいで?」
「俺じゃ、俺のポーションじゃ、姉ちゃん治せなくって…」
「姉ちゃんが呼んでるんだから、早く来いよ兄ちゃん!」
そうだそうだ。
泣いてるリオがダーツを引っ張ると、簡単によろめいたダーツも私に抱きついてきた。
抱き返して、ポンポンと背中を叩くとそれだけでダーツは震えて泣き出した。
みんなが落ち着くまで、私は全員をギューッと抱きしめた。
弟妹達が落ち着き始めると、今度は冒険者の皆が見舞いに来てくれた。
「勲章だなあマリィ。お前が守った証だ」
「バカね!マリィちゃんはか弱いんだから守られてていいのよ」
「でもありがとうねマリィちゃん。トール助けてくれて」
「護衛対象に守られるとか、俺たち失格だけどな」
わしゃわしゃわしゃわしゃと代わる代わる頭を掻き回されて撫でられてポンポンと叩かれて。
勲章だと笑ったアイズさんが代表なのか私の横にある椅子に座った。
そして突然表情を変えた。
「今いる階層は21階だ。懸念していた通りあいつらは殲滅スピードが遅くやはり倒す前に追加の敵さんが現れて泥沼になった。あいつらも治癒師は連れていたようだが、国の治癒師はどうも運ばれた患者を治療するのが主な活動だったらしく戦闘に一緒に参加できるような奴じゃなかった……泥沼で、言っちゃ悪いが使えない治癒師。連戦で撤退もできず敵の数ばっかどんどん増えて、このままじゃやばいとなってエレーヌとダーンを貸してやった。だがそれでも回復が追いつかねえで敵さんばっか増えやがってのあの結果だ。もうダメだと判断し、マリィは家にあいつらは宿に放り込んでポーション使いまくって今回は何とか倒したが…今までで一番だりぃ戦闘だった」
うわあ。それは惨すぎる。やたらカゴが揺れると思ったら想像以上の修羅場だったようだ。
「今回マリィが怪我したのはトールの指示ミスだ。つーわけで今は責任取ってあいつらの目的地をここに変えるよう会議に行ってるってとこだな。なんか質問はあるか?」
「私が怪我をしたのは自業自得だと思うけど…」
「いいや、マリィの身の優先をするなら奴らが死んでも治癒師を貸すべきじゃなかった。足手まといさえいなきゃ俺らは何とかできたんだから」
とはいえ、それだと本当に戦死者が出ていたんだろう。
そうならないように気を配ってくれるトールさんだから私は大好きなんだ。
「つってもマリィには悪いが、俺個人としてはトールの采配には異論はねえんだがな。死者が出たら飯が不味くなるからな」
「そうですね。私もそう思います」
「とりあえず今日は移動しねえらしいからここで大人しくしとけ。ポーションで治ったとはいえ怪我したんだからな」
最後にもう一度髪をぐしゃっとしてからみんなは出ていった。
はあーとため息を吐いてベッドに横になる。懸念はずっとしていたけれど。本当に冒険者と軍人さんは違うんだなあ。どっちが上とかそういうものでは無いんだけれど、少なくとも迷宮では段違いに冒険者の方が強いなと感じた。
でも、そうだな。
皮膚がひきつる手を握って開いて、またぎゅっと握る。
迷宮に居る以上、また怪我をするような事態が起こる可能性は大いにある。
なんかこう、自衛出来るような手段が欲しいな。
………その願いは、何となく叶う予感がした。
時間停止が欲しいと願った時に似た感覚。きっとレベルを上げれば叶うだろう。
ならば私はガンガン空間魔法を使うのみだ!




