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その後もちょくちょくとパーティはやってきた。
大半はゴブリンだったが、ちょくちょく角兎を持ってくるパーティも居る。
角兎の方が小さいのに、買取額は高かった。
「角兎は食用ですがゴブリンは食べられないんですよ」
「そうなんですね」
「それと角兎は地下5階から出るモンスターだから、ここまで持って帰って来づらいんだ」
「……角兎を抱えて2階も移動するってことですか?」
「そうよ。だからそこそこ潜れるようになった冒険者は専属の荷物持ちを雇うわ」
空き時間には三人に色々なことを教えてもらう。
10組ほどのパーティから買取が終わった頃、マイクさんに空間を見せてくれと頼まれたので開いてみせるとマイクさんは中を見て凄いですねと呟いた。
「まだ容量の三分の一程ですか。これならば交代時間まで帰らないで済むかもしれませんね」
「となると楽で済むな」
「そういえばギルマスからマリーロズさんがポーションを飲みたがるようなら好きなだけくれてやれ、とも言付けがあったのですが飲みますか?廃棄ポーションなので然程回復しませんが…」
「飲みますぅぅぅぅ!」
くわっと食らいついた私にマイクさんは引きつつも、手のひらサイズの瓶を渡してくれた。
「どうぞ、飲まなければ捨てるだけですので。でもまずいですよ」
不味いのならば、慣れっこだ。
ゴクッと呷ったポーションは………普通にマシだった。薬草そのものより何倍もマシだった。これならば何本だって行ける。
そしてMPは……なんと15も回復した。
え、二本で拡張が三回できるなんて最高なんですけど。
「でも捨てちゃうなんて勿体なくないですか」
「今はちょうどギルドで見習い錬金術師を四人も抱えてましてね。正直な話、瓶の返還が間に合わないんですよ。ですので私はここで暇な時間ポーションの中身を捨てるのも仕事なんです」
「もったいない…!」
話の間にも二本目のポーションを飲んで密かに『拡張』を使う。指先ほど空間が拡張されるのを感じた。
拡張される空間はごくごくわずかだけれど、塵も積もれば、だ。
「すごいわねマリィ。廃棄ポーションはMPの3%しか回復しないし、すごく不味いでしょ?」
「三食これでも行けます」
「体に悪いから飯は食え」
怒られつつも、3%回復なんだと密かにゲットした情報に喜ぶ。
となると薬草そのものは1%回復だったのだろう。
だが長年MPを伸ばし続けた私の現在のMPは500オーバー。
3%でも15、充分嬉しい数字だ。
想像以上に、冒険者ギルドは適職だったかもしれない。
無料でポーション飲み放題とか最高すぎる。
その後黙々とポーション飲みながら仕事に励んだのだけれど……。
「飲みすぎた…」
「当たり前だ」
「ポーションでなくても飲みすぎよ」
「せめて自力で帰れるくらいにしましょうね」
交代の人が来る頃には飲みすぎで口から出ちゃいけないものが出そうな状況になっていた。
仕方がないと苦笑いを浮かべたトールさんに姫抱きされて、短剣を構えたマイクさんとハンナさんに護衛をされて迷宮を出る。
マイクさんはソロでも3階くらいなら往復できる実力者だそうだ。すごいと思う。




