【悲報】街から出ずに殺された件【撲殺神官】
ゲームスタート直後、俺たちプレイヤーはランダムの教会に降り立つという。
そうやって出迎えてくれた神官は、恐らく10代前半の少年だった。
「始めまして、稀人の皆様。私は邪神官のリク・ターヌと申します」
いきなりツッコミどころのある自己紹介。
何やねん邪神官って。
「当教会は闘争と死、安寧を司る神、ボルグバール様を崇める教会です。信者は私1名ですが、ちゃんとミスラ王国認可の教会です。皆様が……ええと、死に戻り?をされた際は、こちらの祭壇にて復活される…筈です」
自信なさげだな!?というか物騒すぎる神様ですね!?
インパクトから立ち直れずにいる俺たちを尻目に、一人の青年が進み出る。
「あー、めんどくせぇ…おい?」
「はい、なんでしょう」
「俺はさっさとスタートダッシュ決めたいんで、チュートリアルは飛ばしてほしいんだが」
ため息混じりに告げる彼は、恐らく廃人とか攻略組気取りとかそんなんだろう。それを見る俺以外の3人も嫌そうな顔をしていた。
かなり横柄な態度。キャラクリエイトで端正な顔立ちにしていても、嫌な気分にさせられる。
案の定というか、邪神官の少年は困り顔だ。
「え?ええと、説明を飛ばされますと、多分すぐ死に戻りされると思うのですが…」
「いいっての。βテストもやったんだ、すぐにフィールド出て経験値稼ぎたいんだよ」
「…なるほど」
邪神官は俯くと、背中の杖を…って杖が変形してごっついメイスになった。とにかくメイスを手に取って。
「ボルグバール様から事前に神託を受けていました。『ちゅーとりあるを無視する奴は自殺志願者なので、装備の代わりに死の祝福をリク、汝の手で授けよ』と。そのような方がいらっしゃるとは思いもよりませんでした」
「は?お前、何言って」
「汝に死の祝福を授けん!」
跳躍、からの鉄槌一閃。青年のアバターは頭から一息で潰され、ポリゴンになって消えていく。漫画みたいに出来たクレーターの真ん中で、ため息を吐く少年に四人揃ってあんぐり口を開けるしか出来ない。
開幕直後チュートリアルで神官NPCに殺害されるってナニコレ。
唖然とする俺たちの前で、少年神官はため息を吐く。
「………これで、よかったのですよね?流石に稀人に一方的な暴行はあまり…あ、すみません!お話の途中でした!」
こちらに視線が来ただけで、つい一歩引いてしまう。しかし、友好的な笑顔は俺たちに向けられており、先のプレイヤーに向けたような冷たい感じはない。
意を決して、応える。
「つ、続きをお願いできますか…?」
「…!はい、もちろん!」
ぱあっと表情を華やがせ、チュートリアルの続きを説明する少年にどこか癒やされながら、俺たちのアザーワールド•トラベラーズ初日は始まった。
「ところでリクさん」
「なんでしょう?」
「さっきの彼ってどうなるんです?ほら、チュートリアル拒否の」
「あ、私も気になります」
「(ブンブンと頷く)」
「ええと、そうですね………チュートリアルで貰える武器とお金が貰えません。戦いたいみたいですけど、素手ですね」
「「「うわ…」」」
「あと、一応死の祝福を授けてあります。ですぺなるてぃ?が少し減る祝福です」
「まじで!?俺にも祝福ってくれたりする?」
「大丈夫ですよ!では早速」
「あ、殺されないと駄目なん」
グシャッ