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2度目の結婚は貴方と  作者: 朧霧
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騎士団の飲み会

 ここは宮殿の敷地内にある騎士団棟。宮殿と目と鼻の先であるが棟内には団員の宿舎もある。


二階にある団長執務室の扉を勢いよく入ってきたこの男、副団長のジルベルトだ。まだまだ執務は終わらないのに終業間際に何を言うかと思ったら…。


「団長、これから飲みに行こう!」


この男は調子良い性格をしているが、頭の回転が早いし部下の扱いも上手い。

更に自分の血縁関係であることが疑問に思う。


「団長、たまには部下達と交流を深めて飲みに行こうよ。部下と話をすることは重要だよ?」


だいたい上司が参加したら部下達は気持ちよく話したり飲んだり出来ないのではないだろうか。なぜ俺を誘うのか分からない。


「お前らだけで行ってこい。団員には美味い酒でも飲ませてやれ」


机上に銀貨と銅貨の入った袋を出してジルベルトに持たせようとする。


「何言ってんのかなぁ。日頃、ゆっくり話ができない部下がたくさんいるから交流するんだよ。憧れの団長と。」


ジルベルトはなかなか引かない。


「はぁぁ…、俺が参加して楽しいか?」


「もちろん、じゃあ決まりね。後で来るから仕事を終わらせておいて」


ジルベルトは軽い足取りで去っていった。

仕方ない、たまには参加するかと腹を括る。


俺はレオナード・フィン・ブルーベル、25歳。ブルーベル侯爵家、男3人兄弟に生まれ嫡男である。

14歳までは王都にある学園に通い卒業後、騎士団に入団した。

嫡男であるが騎士になることを厳格な父はしばらく認めていなかったが、兄弟がいたおかげで黙認するようになった。貴族としての入団はせずに平民と同じ入団試験を受けて雑用から訓練まで同じように過ごした。


幸いなことに身長も平均よりかなり高く鍛えれば鍛えるほど筋肉も付き、剣術に関しても幼い頃から鍛えていたため騎士として順調に成長していった。


1年が経つとジルベルトが入団してきて驚いた。ジルベルトは分家の子爵家次男でかなり女性に好まれる容姿をしている。

体付きは標準だが線が細く見え、金髪に薄い茶色の瞳、顔立ちは中性的で性格も明るい。

体付きも大きく、茶色の髪と瞳、厳つい顔立ちの自分とは正反対である。

見た目で騎士になるわけではないがなぜ騎士の道を選ぶのが疑問であった。


「ジル、成績も良かったし文官の道に行くんじゃなかったのか?」


「うん、それもあったんだけどレオといる方が楽しそうだからさ」


「…そんな理由じゃ続かないぞ。」


「えっ? レオが騎士になりたいってずっと聞いてたからちゃんと鍛えていたよ。心配するな」


「それならいいけどな。人のせいにするなよ」


こうして共に騎士団で鍛錬を重ね、前団長の厳しい指導をこなしていった。

20歳になる頃には王族の視察同行や盗賊の討伐など様々な任務経験を経て前団長と副団長が退位する際、23歳で団長に就任した。

ちなみにジルベルトも同様に副団長に就き現在の状況となった。


「団長、迎えにきたから早く終わりにして行くよ」


ジルベルトが早速迎えにきたので仕方なく仕事を終わらせることにする。よく利用する酒場へ先に団員が行き待っているらしく渋々着いて行く。


「店はどこだ?」


「噴水広場の近くにあるラモン亭だよ。あそこの店は料理が美味しいから団員達でよく利用するんだ」


騎士団棟からも比較的近い場所にあり安堵する。少し飲んで過ごしたら残った仕事をしに帰っても大丈夫そうだ。


「お待たせ、団長を連れてきたよ!」


ジルベルトが先に入店すると日勤を終わらせた独身者ばかりの6名がいた。


乾杯をし、料理をつまみながら酒を飲む。ジルベルトの話術で場が盛り上がり程よく酔ってきた頃、団員達は緊張から解放される。


「団長、僕は団長にずっと憧れてて。一生団長だけに付いていくので恋人なんて作りません!」


「作らないんじゃなくて相手にされずに作れないんだろ? お前と団長を一緒にするな」


「そ、そんなぁ。出会いがないだけですよ。団長は毎日忙しいのに恋人と会ったりしてるんですか?」


段々と男同士のくだらない会話に盛り上がっていく。


「俺は婚約者もいないし恋人もいないが仕事が忙しく鍛錬もあるから必要ない。嫡男だからいずれは親が決めると思うが今のところ何も言われてない。

兄弟が爵位を継げば煩わしいこともなくなるんだがな。お前達は結婚したいのか?」


「「「「したいですぅ!」」」」4名が頷き2名は若すぎて結婚なんて考えていないようだ。


「そうか、お前達は自由に恋愛できるだろう? 俺からしてみたら羨ましいよ。相手を良く見て結婚するんだな」


「何を言ってんだか…。レオは縁談も絵姿すら見ないで断っているくせに結婚する気なんて全くないだろ。そろそろおじさんなんだから早く決めた方がいいよ」


「ジル、お前だってそうだろう。1歳しか変わらないんだからお前もおじさんだろうが」


こんなくだらない話をしていたのだが、ふと後の客の話が耳に入ってきた。


浮気、婚約、結婚などの言葉が飛び出して女性の一人が泣き、連れの女性と男性が慰めているようだ。最初は話の内容まで入ってこなかったが後ろの客側に座る4名は他国での話や虫の話に手を止めて固まった。


「どうしましたか? 団長も副団長も?」


ジルベルトが先に反応した。


「いやぁ、後ろの客がさぁ…。話の内容がそれはもう刺激が強くて」


「何の話ですか?」


「それがさぁ、男の浮気やら本能? とか色々」


後ろの客側に座ってない団員が様子をうかがう。


「なんだ、まだ10代みたいな感じですよ?」


「えっ、10代? それにしても人生経験が豊富な感じの内容なんだよな。なぁ、レオ」


「あぁ、そうだな。人には理性? があって考える力があるんだから男の浮気は仕方ないなんていいわけだと。それに他国の話だが嫉妬した女性が男性を亡き者にした後に性器を本に挟んで持ち歩いていたとか虫の世界では交尾が終わると雌が雄を食べるとか…。

本当に10代が話す内容には思えんな」


向かいに座っていた団員達はそのような話は初めて聞いたと口を揃えて言った。


「まぁ、要するに浮気なんてする奴は駄目だと言いたいんだろう。なぁ、ジル? お前も女性から色目を使われるから気をつけろよ」


「何? レオ。僕は女性には誠実に接してるけど一人に決められないだけです」


「そういう奴が一番危ないんだ。全く」


「えぇぇ、副団長、恋人がいるなら誰か紹介してくださいよ。もちろん貴族以外の女性で」


「おう! 恋人はいないけど良い娘がいたら紹介してやるぞ」


そんな話しているうちに後ろの客が帰るようだ。ふらふらと歩いていた女性が端にいる団員にぶつかりもう一人の女性から謝罪を受ける。

そのときに思わず女性の顔を全員で見てしまった。

まだ幼さも残った10代の女の子。容姿も平凡ではあるが礼儀は正しい。


丁寧に謝罪する彼女に団長の俺は気にしなくてもよいと伝えると「ありがとうございます」と笑顔で返された。その笑顔になぜか胸がざわつき視線を逸らしてお酒に逃げた。


それと同時に親が決める政略結婚に何の感情もなく当たり前のように思っていたことに違和感を感じた…。




3話目ですが少し話が長くなり申し訳ございません…

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