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2度目の結婚は貴方と  作者: 朧霧
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出産

 お腹が大きくなるにつれてレオナードさんの過保護度が増してきた。

階段の昇り降りも危ないと休日に非番の団員を引き連れて手すりを作り取付けたり、栄養のある物を食べさせたいと色々な食材を買い込んできたりと大変だ。


前世の妊娠中の辛い経験も思い出すことなくレオナードさんは愛情を注いでくれた。


いよいよ出産月に入り少し前から仕事の日数を減らしている。仕事中に腹痛を感じトイレに行くと下着に血が付いていた。おしるしだわ…。


ミシェルさんのところへ行き、事情を説明してから早退させてもらった。これから陣痛が始まるから1日くらいかかるかな。自宅に帰り陣痛の間隔を紙に書いておく。


間隔は長いからまだまだ大丈夫と考えていたらレオナードさんが凄い勢いで帰ってきた。


「ん? おかえりなさい。お仕事中ですか?」


「何を言っているんだ! 産気づいたとミシェルさんから連絡があって急いで帰ってきた」


「そうなんですか? 陣痛の間隔も長いのでまだまだ産まれませんよ? 痛みは徐々に強くなってきていますから順調です」


「は? そうなのか? すぐに産まれるのではないのか…」


「はい、大丈夫ですよ。それより産婆さんのところへ行ってこの紙を渡してもらえますか? 陣痛の間隔が書いてあるので出産に間に合うように来てくださいと伝えてください」


「任せろ、すぐ行ってくる。本当に一人で大丈夫か?」


「まだ耐えられる痛みですから大丈夫です」


レオナードさんは多分すぐにスポンと産まれてくると思っているんだろうけどね。前世のときにはずっと一人で長い陣痛も耐えたからレオナードさんの優しさに感謝していた。

しばらくすると玄関の扉が開き産婆さんが引きずられるようにして付いてきてレオナードさんが帰ってきた。


「リオナ、まだ大丈夫か?」


「えっっ! どうして産婆さんまで?」


「産まれるから連れてきた」


「はい? まだまだかかると言いましたよね?」


「もう心配で堪らないから一緒に連れてきたんだ」


「はぁぁ、産婆さん。どうもすみません…」


「いやぁ、この男は強引で話しも聞かん。とにかく来てくれとうるさいから早めに来たわ。どうだ、痛みは」


「ありがとうございます。まだ間隔も短くないのですが痛みが更に増してきました」


「そうか、ならあと半日くらいかかるかもしれんなぁ」


「半日? なぜそんなにかかるんだ。リオナがこんなに痛がっているのに何とかしろ」


「お前さん、だいたい赤子が出てくるのに時間がかからんわけないだろうが。ゆっくり出てくるんじゃよ。いいから黙って腰でも摩ってやらんか」


「はい…」


レオナードさんは少し落ち着いてきた。

しばらくすると本格的に我慢できないくらいの痛みが短い感覚で襲ってくる。力みたいけど「まだ我慢」と産婆さんの指示で我慢する。


歯が折れそうなくらい口を噛み締めているとレオナードさんが手を握り絞めてくれた。


「もうすぐだな、力んでいいぞ、それっ。ずっと力んではいかん。息を吸い整えて…もう一度じゃ」


何回か力むのを繰り返しやっと出てきて痛みから解放されてくる。


「男の子だな」


その言葉に涙が出た。前世も息子だったから思いを重ねてしまった…。


「ありがとう…、リオナ。大切にする」


お湯で綺麗になった我が子を抱きながらレオナードさんは泣いてはいないが目に涙を溜めている。それにとっても嬉しそう! 我が子は茶色い産毛が薄く生えていて瞳の色もどうやら茶色で顔立ちはレオナードさんにそっくりだった。


後産も問題なく終わり初めての母乳をあげる。たしか初めて出る母乳には赤ちゃんに必要な物が含まれている記憶がある。ちゃんと母乳も出ているし上手く吸えているようで一安心した。


産後の疲れから何度も眠くなるが母乳以外はレオナードさんが赤ちゃんのお世話をしている。副団長さんが、翌朝レオナードさんに会いにきた。


「リオナちゃん、レオおめでとう! リオナちゃんベッドに居なくちゃ駄目だよ。僕はレオに用があっただけだから」


「ありがとうございます。今この子も起きていますし寝てばかりだと駄目なので少し座って過ごしていたんですよ」


「どれどれ、顔を見せてもらおうと」


ジルベルトさんが我が子を覗き込む。


「はは! レオそっくりだなぁ。まるでレオが小さくなったみたいだ」


「はい、そっくりですよね。母乳を飲む力も強くて元気な子です」


「名前はもう決まったの?」


「あぁ、俺が決めた。ルーク」


「ルークかぁ。良い名前だな。ジルおじちゃんです、よろしく」


「ルークが笑っていますよ、副団長さん」


それからルークがぐずりだしどうやらおしめの交換のようだ。レオナードさんが早速交換しているのを副団長さんが見て笑っていた。


「見て、リオナちゃん。レオが大きすぎて猛獣が子供を襲っているみたい。でもレオがこんなに子煩悩だとは思わなかったな」


「ふふ、そうですよねぇ。母乳以外はレオナードさんができるだけ手伝ってくれるので助かります」


「そっかぁ、出産を頑張ったリオナちゃんに優しい副団長さんから贈り物。レオはしばらくお休みできることになったからゆっくり身体を休めてよ」


「えっ、皆さんにご迷惑じゃないんですか? 産後の経過も良いので大丈夫ですよ?」


「元々レオは休暇をほとんど取っていなくてね。今のところは団長がいなくても僕が代わりにするから気にしないで」


「そうですか…、お気遣いありがとうございます」


副団長さんはレオナードさんと話をして帰っていった。レオナードさんは本当に子煩悩で私より世話をしているから感謝の気持ちでいっぱいだった。



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