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2度目の結婚は貴方と  作者: 朧霧
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弟のテオドール

 話しの内容は分かるけど分からないふりをして聞いてみよう。


「それで、私にお話とはどのようなことでしょうか?」


「はい、先日は父が無礼な態度をとり申し訳ございません。父の気持ちも分かるのですがリオナさんには謝罪をしたくて参りました」


「テオドールさんがしたことではないのでお気になさらないでください」


本人が謝らず息子が謝るわけ?


「それで父の気持ちが分かると言いましたが気持ち的には私も兄には家を継いでもらいたいので同じなのです」


「そうですか。テオドールさんのお気持ちはレオナードはご存知ですか?」


「はい、伝えてあります。兄は多分、リオナさんと結婚したいから継がないと言っているんですよね? 父へは兄と私が協力して説得しますので兄に家を継ぐようにリオナさんからもお願いをしていただけませんか?」


「レオナードさんがそう言ったのですか? 私と結婚をするために家を継がないと。申し訳ないのですが私は結婚する話をしておりません」


「でも一緒にこうして住んでいるじゃないですか!」


「レオナードさんから交際の申込みをされたときに私は結婚を誰ともしたくないと伝えてあります。お互い共に生きたいと思っていますので一緒に暮らしておりますしレオナードさんのことも真剣にお慕いしてます。ですから家を継ぐ、継がないの問題は家族の問題であって私が口を出すことはありません。レオナードさんは成人の大人です。自分のことを決められない方ではありませんよね?」


「そんな…、リオナさんは結婚したら平民から貴族になれるんですよ? 結婚するには貴族の養子に入ってからになりますけど」


「貴族になれる…」


「そうでしょう? 普通はなりたくてもなれないんですよ? これから豊かな暮らしもできます」


「テオドールさんは私が結婚すれば貴族になれて豊かな暮らしができるから喜ぶと仰るのですか?」


「えっ? リオナさんが兄と結婚すれば全て問題が解決しますよね?」


「では私の気持ちは? 私がいつ貴族になりたいと言いましたか? あなたのお父様も何か勘違いしていますが私は貴族になりたいと思いません。むしろなりたくないです。存じ上げている貴族の方もあまりいませんが、レオナードさんと副団長さん以外の方は皆同じでした。固定観念で人の話も聞かずに威圧的に脅したり一方的に考えを押し付ける方ばかりです。孤児の私だからといって暴言を吐き暴力を振う。私の中では貴族も平民も孤児も全ての人は皆同じです。優越や差別もありませんので貴族になりたいとも思いません」


「…では兄が別の人と結婚したりリオナさんに子供ができたりしたらどうするんですか?」


「別の人と結婚したら好きな人ができたと思い別れますよ? 愛情が無くなったのですから一緒にいても意味がありません。子供ができたら私が育てますよ? 当然です、自分が産んだ子供ですから。レオナードさんが一緒に育てたいなら二人で育てればいいし、育てたくないなら育てなければいい。育てる気がない人には子供を育てて欲しくありません」


「信じられない…。愛しているのに結婚したくないなんて」


「テオドールさんはご結婚されているのですか?」


「婚約者がいてもうすぐ結婚します」


「おめでとうございます。では愛する人の気持ちは一生変わらないと思っていますか?」


「はい、思っています。だから神に誓って宣言するのでしょう」


「そうですね、テオドールさんのように皆さん神に誓って結婚しますよね? でもどれだけの方が宣言を破ると思いますか? そして子供を育てない人がどれだけいると思いますか? 妻に暴力を振るったり浮気をしたりする方がどれだけいると思いますか? 

神に誓うのは一生その人を愛する宣言で皆が守れば結婚は意味があると思います。ですが、守らなければ紙切れ1枚で繋がるだけですよ? 私の個人的な考えでしたが紙切れ1枚を出さなくても神に誓わなくても自分が一生共に生きたいと願えばいいだけです。

私はレオナードさんを心から愛していますよ」


「では、結婚もせずに兄とずっと一緒にいるのでしょうか?」


「今の私には結婚という行為が必要がないだけで、したくない、できないのがずっと続くかそれは分からないことです。

人の心も変わるものです。結婚したいなと思ったときにレオナードさんも同じ思いならするかもしれません」


「……」


「テオドールさん、話しは少し逸れてしまいましたが家を継ぐ話もお父様やテオドールさんの希望通りにいったとしますよね? レオナードさんが選んで継ぐのなら良いのですが、もし納得せずにお父様やテオドールさんに言われたからと一生思いながら生きていたとしたらどうでしょう。私がレオナードさんにお願いして継いでもらったとしますよね? 私のために継いだと思われるのなんて耐えられませんし、万一私と別れたらレオナードさんの気持ちはどうするのですか? 

人は考え方がそれぞれ違うと思います。大切な家族なら相手の話に耳を傾けて話し合うのが良いのではないでしょうか」


「でも、お互いに納得できなかったらどうするのですか?」


「私は正解を知りませんよ? ただ、貴方達は立派な大人です。個々の考えや意見を聞いて皆で答えを探すのはいかがですか? 個人的な感想ですが、貴族の方々は自分より下だと考えている人の話を聞き入れないことが見受けられますが、人の意見や考え方も貴重です。

全てを聞き入れる必要はないのですが、参考になったり別の見方を知ったりしてやがて自分の糧になることも多いと思います」


そんな熱い話になったところでレオナードさんが帰ってきた。


「ただいま、リオナ。ん? テオ、何しに来た」


「おかえりなさい、レオナードさん。頭ごなしに言っては駄目です。少しテオドールさんとお話していただけですから」


「兄上、お邪魔しています」


レオナードさんは表情が戻り安心したようだ。嘘は言ってないし大丈夫…。






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