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第6話 取り調べ2

「なら、話を変えましょう。那珂湊教授、あなたが作り上げた遺伝子改造治療は、どこまで出来るのですか?どこまでやったのですか?」


「どこまでとは?具体的に」


「癌を消すまで?アルツハイマーで傷ついた脳を修復するまで?ケガで失った運動機能を修復するまで?損傷した手足を再生するまで?不老不死まで?他の生物遺伝子を組み込んだとか?」


と、遺伝子改造治療の可能性を聞き出そうとした宇都宮秀男に対して、那珂湊教授は鼻で笑った。


「ふふふっ」


「私は可笑しい質問をした覚えがないですが?」


と、あからさまに不機嫌を見せる宇都宮秀男。


「人間が考え得る全ての事は出来る。だが、今回の治験者はそれぞれの病気に対する治療と少々病気にかかりにくくなるように手を加えただけ」


「その病気にかかりにくくなるようにと言うのは具体的には?」


「さぁ、それを君にだけ教えるのはフェアーではないと私は考えている。厚生労働省など正確な情報など発信などしないからな。この私の事など兎に角、精神異常者として片付けたいのだろう」


「あなたはなにもわかっていない。世界の宗教を敵に回したのですよ。間違いなく『神への冒涜』だと言う声は上がる。そうなれば貴方だけじゃない。日本国がテロの標的になるんですよ。わかっていますか?」


「『神』か。神がいるなら祈れば病気を治してくれるのか?神は祈れば痛みを苦痛を取り払ってくれるのか?答えは出ているだろうNOだ」


「私も科学者です。その答えにはNOと言わざるを得ない。しかし、人類が築き上げてきた『道徳』をあなたはあなた一人の考えで壊そうとしている。今までの文化の全否定に等しい」


「その『道徳』と、言う言葉にも私は思うところがある。医者が手にした最高の技術で患者を助ける。それは『道徳』の道から外れているのかね?医者は全力で患者と向き合うもの。そして、患者を治し、苦しみから抜け出させてあげる、それが医者としての『道徳』のはずだ。違うかね?」


そう言われてしまうと言葉が詰まってしまう、宇都宮秀男。


長い沈黙が取り調べ室に続いた。


論破などと容易い言葉では言い表せない言葉と言葉の、そして信念と信念のぶつかり合いだった。


那珂湊比呂志教授の新しい道徳と、宇都宮秀男の人類が守ってきた道徳のぶつかり合いと言っても良いだろう。


小さな戦争だった。


言葉の決闘なのかもしれない。


この取調室は実は戦場なのかもしれない。


新勢力と旧勢力の戦い。


新秩序を作ろうとする者と、守り抜こうとする者の戦い。

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