第44話 神への宣戦布告
「神への宣戦布告を決意いたしました」
総理大臣のあまりの荒唐無稽な発言に会場は響めきから沈黙へと静まりかえった。
「皆さん、知っての通り那珂湊教授は遺伝子改造治療技術を手に入れました。その為、この様に平時の服装でいられるのです。そして、ここに並ぶ平時の服装の者は皆、その技術を使いました。『対病原菌遺伝子改造治療薬ゲキメツダー』です。これは今までの既存のワクチンとは全く異なる別の仕組みの物です。人間の遺伝子その物を書き換える遺伝子改造技術です。使用方法はインフルエンザワクチンと一緒で注射一本です。これを使う事で地球上に存在する全ての病原菌に感染しなくなります。全てです。これは明らかに『神の領域』と呼んできた人体改造です。しかし、今はこれを使わない理由が見つかりません。今、流行している新型強毒性インフルエンザには打つ手がありません。
特効薬もワクチンも絶望的、この病原菌は次々に変異しています。今までの医療で戦うというのは限界です。今対抗できるのは、この技術だけです。人類は『神の領域』や『倫理』や『道徳』などの言葉を使い続け、この技術を否定し続ければ、人類滅亡の道が待っているだけです。幸い、那珂湊教授独断で、とある国に協力して貰い、大量製造が可能です。備蓄も30億人分あると返答を得ました。我が国は一億五千人分輸入を決めました。しかし、強制はしません。これは遺伝子を改造する技術です。信教や信念から否定する人もいるでしょう。皆様、国民の皆様一人一人が考え家族や大切な人と話し合い、個人個人が決める事です。『人間』は、器が変われば『人間』ではないのでしょうか?私の個人的な意見としてそれを否定します。『人間』は『人間』と言う『魂』を持った者を言うのではないでしょうか?いずれは必ず来ます。人間が次の進化をするとき。それは今、人工的にすることは『神の領域』なのでしょうか?座して死を待つのが、運命なのでしょうか?使命なのでしょうか?よくよく個人で考えて下さい。私からは以上です。一週間後、『対病原菌遺伝子改造治療薬ゲキメツダー』の投与を希望者に開始します」
そう発表だけして総理大臣は国旗に深々と一礼とて退室していった。
事の重大さに頭が追いつかなかった記者達は、一歩出遅れてしまい質問を出来ずに止まってしまった。
「待って下さい、総理」
「総理、ちょっとなんなんですか」
記者達は総理大臣の背中に向かって声をかけていたが、総理大臣はそのまま退室した。
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