第37話 久慈川拓馬
スイスの空港に到着した久慈川拓馬は、公衆電話から一本の電話をしていた。
護衛という名の監視人が3人いたものの、離れなければ電話が出来ないと、少し離れた所に追いやり番号を押した。
とある国の大統領執務室へ直接つなぐ電話番号。
「大統領、私です。久慈川拓馬です。今、スイスに到着しました。那珂湊教授の指示で今流行っている病原菌に対処するため対病原菌遺伝子改造治療薬ゲキメツダーの増産のため、そちらに向かいたく」
「うむ、わかった。迎えを出させる。そこで待っていなさい」
電話を受話器に置くと5分もしないうちに防護服に身を包んだ男達5人に囲まれた。
あまりの咄嗟のことで監視人が一歩出遅れると、空港の外にはとある国の大使館の車が止まっており、久慈川拓馬はそれに乗り込んだ。
監視人はその大使館の車を護衛していた警察官に阻まれ追跡が出来なかった。
久慈川拓馬は車内で指示通り服を着替え、荷物も念入りに確認して、何度も車を乗り変え陸路でとある国に入国した。
入国した国は『シベリア連邦』と言う大国だった。
通されたのは、シベリア連邦政府保健省対病原菌学研究所。
そこで働く人達全員、防護服やマスクなどの保護具は一切着けておらず平服に白衣と言うラフな服装だった。
「大統領閣下の命で我が国でも感染者が出て死亡者が出ていると発表していたのですが、生きている人間を死んだことにするのって大変ですよ、意外と」
そう苦笑いをしながら言うのは、シベリア連邦政府保健省大臣ウラル。
「もうすぐ、それも終わりかと」
「我が国では強制的にアレを使いましたからね。しかし、なんの偶然でしょうか?未知の病原菌など出るなど」
「那珂湊教授は、そのことには一切関与していませんよ。本当に偶然です。ただ、研究を重ねているうちに突然変異種の病原菌があることを把握していたので、大流行が近いと予感していたみたいです」
「我が国でも勿論です。そのような無差別の病原菌など、なんらメリットがない。まぁ~今となっては疑われてしまいますけどね」
「そうですね、ですが、あの薬を無料提供すれば国としての名誉はあがります。それと同時に自作自演だと決めつける者も出てくるでしょう」
「わかっていますとも、大統領閣下と那珂湊教授の契約は絶対、今、他の弟子の方々も争力をあげて作っています、もうすぐ30億人分は出来るかと。あっ、そうそう、那珂湊教授のお子様は大統領閣下の別荘で大切にお預かりしています。大変元気で、こないだなど、ヒグマ狩りにまで行くくらいでしたよ」
「それを那珂湊教授が聞けば大変喜ぶでしょう。では、対病原菌遺伝子改造治療薬ゲキメツダーの出荷の時期は、日本国で那珂湊教授が発表次第という事で」
「世界は受け入れましょうかね?我が国では独自に開発したワクチンだと言って強制的に打たせましたけど」
「宗教的価値観を大切にしている方々には反発にあいましょうね。那珂湊教授は史上最悪の悪魔と罵られることも覚悟しているみたいですが」
「我が国では、いつでも人間を進化させた神としてお迎え出来ますことをお忘れなく」
「配慮感謝します」




