第8話 言葉にしないと気持ちは伝わらない
「早く早く!ちゃんと『市場調査』したのに売り切れちゃったらどうするのさ!」
自分の装備を買えるとあって浮かれ気味に先頭を歩くマリー。その後ろから付いて行くセレスとメイベル。更に後ろには重たい足を引きずる俺が居た。武具を購入するためだ。
冒険者組合を出た俺達は街の商店に向かった。鍛冶屋じゃ無いのは単純にオーダーメイドで作って貰うほど金が無いからだ。
未だアビリティの問題を打ち明けられず、ヘタレてる俺としては、どうして良いのかわからない。
いや、当然、打ち明けた方が良いのはわかる。でも、その時の3人の失望を考えるとね。
それも仕方無いか。彼女達も、あの村の人達も、勇者や英雄を呼んだつもりで居るのに、俺のアビリティってどう考えても『種馬』じゃん。戦闘なんか出来ないよ・・・。ちゃんと話して・・・。
・・・あれ?話した方が良くね?。『子作りの為に呼ばれたみたい。あははっ。』って感じで。
でも、1人だけでハーレムとか無理なんだよね?乱れた生活送ると神罰有るんだよね?。
いやいや、それなら異世界から呼び出さず、この世界の人でも良い訳じゃん。エッチな事するだけなんだから。地球に居た時から【必中】のアビリティ持ちだったとか?
だいたい、1人とそう言う関係になって結婚したって、増える人数なんか微々たる物でしょ?。
って事は複数の嫁さん貰えるのか!?。
でも良く考えろ、俺。失敗すれば『一人息子』がアイ・キャン・フライするかも知れない訳で・・・。
「ねぇ、キョウスケ。着いたよ」
マリーに声を掛けられて店に到着した事に気が付いた。ちょっとだけ俺を心配そうに見てる。
「キョウスケさん、考え事ですか?」
セレスが質問してくる。見れば、メイベルもこちらを見ていた。勇気を出せ!ここで打ち明けるしか無い!。
「あっ、うん。実はさ・・・俺・・・どうも、戦闘・・・」
途中まで言い掛けた俺の言葉をマリーが引き継ぐ。
「あっ!うん、わかるよ。キョウスケの気持ち。・・・本当はね、ボクもちょっと不安なんだ。今まで戦った事とか無いし。世界を救って来いとか言われてもね・・・でもね、4人で頑張れば世界を変えるきっかけぐらいは作れるかも知れないじゃん」
俺の手を取って熱弁するマリー。うん、全然わかって無いね。
「大丈夫。私達も経験が無いから。一緒に頑張ろ」
メイベルも勘違いしている様だ。そして、その言葉はベットの上でお願いします。
「そうですよ、キョウスケさん。無理せず、私達でも出来る範囲で頑張りましょう」
ありがとう、セレス。でも、出来る範囲が子作りなんだ。
「・・・ありがとう、皆。一緒に頑張ろうか」
口から出たのは言いたい言葉じゃ無かった。だって、この子達、良い子過ぎる。
あっ、クロスボウ買って貰いました。
★☆★☆★
必要な武具や道具を買った翌日。俺達は朝から組合で貼り出された依頼を選んでいた。
出来れば危険の無い街中の仕事が良かったが、そんな物は無かった。大規模工事とかが有れば別だけど、そうでなければ職人組合や人足組合の管轄だそうだ。
そうなると、採取系か討伐系の依頼、護衛系もしくは常に出ている狩りの様な常時募集している依頼しかない。
「銅ランクパーティーに護衛は無理。採取も討伐もキツそうね。やっぱり無難に狩りの仕事が良いと思うの」
「えぇぇぇ!ボク討伐系して見たかったのに」
「無理してケガしたら大変でしょ?」
「キョウスケが居れば大丈夫じゃない?」
「あ、あはは・・・前に話したけど、俺は戦った事が無いんだよ」
「キョウスケは『才有る人』。アビリティの数でもわかる。今すぐ無理する必要無い」
アビリティは2個程度が普通らしい。3人娘はそれぞれ3個。優秀だなぁ。
マリーが【身体強化】【俊足】【軽業】
メイベルが【身体強化】【見切り】【不屈】
最後にセレスが【光魔法】【神聖魔法】【調合】
セレスの話しを聞いた時には『魔法有るんだ!俺も使えるかな?』などと考えてワクワクして居たんだけどね・・・。
形の上では5個もアビリティを持つ俺は、バーさんが最初に言っていた『力有る者』か『才有る者』の内、才有る者だと思われて居るらしい。
ごめん、メイベル。それ勘違いだから!。
まあ、本題に戻って・・・全員が銅ランクで初めての仕事となれば、これは狩りしか選べない。別に組合が禁止している訳では無いんだけど。
採取は遠い所だったり、魔物や猛獣が跋扈する危険な所の依頼ばかりだ。報酬は悪く無いけど、それに見合う実力と努力が必要だった。
そりゃあ、隣町まで2日も3日も歩く人達なんだから徒歩半日程度の場所に生えてる薬草なんて自分で取りに行くよね。
勿論、依頼の途中とかで摘んで組合に持って行けば小遣い銭くらいで買い取ってくれる。どうしても取りに行けない人はこれを買うそうで、お陰で余計に近場の薬草採取なんて依頼にならない。
討伐系は、野犬や熊等の獣から、魔物、魔獣退治。もしくは盗賊や山賊等の無頼の輩の討伐。
常時依頼の狩りとの違いは依頼者が居るかどうか。正確には狩りにも冒険者組合を通して商業組合と言う依頼者が居るけど、危険的状況下に有る人か村や街が助けを求める時に出されるのが討伐依頼だ。
始めに弾かれた護衛系の仕事は依頼者がランクを指定してくる。新人の銅ランクなんて俺でもなれる訳で・・・剣を持っただけの素人に大金を払って命を預ける人は居ない。
最後に残った常時依頼。主に食肉を取って来いとの依頼が多い。何より他の依頼と違って失敗してもペナルティが無い。その分、安いけど。
だけど、狩りすら出来ないんじゃ他は絶対無理だろう。新人にとっては登竜門ってヤツだ。
因みに依頼を受けて無くても食肉は勿論、魔獣や魔物を倒して討伐の証明部位を組合に持って来れば報酬が出るとの事。
盗賊なんかは衛兵に引き渡す事で領主から報酬が出る。この時、生死は問わずとの事だけど奴隷として売る分、生きてた方が幾らか割増になるって話。
なお、依頼者が居ない分はどうしても安くなる。
「ちぇっ。じゃ、今は我慢するからさ、実力が付いたらダンジョン行こうよ!」
「直ぐには無理だけど迷宮都市には行くつもりよ」
そうなんです!有るんですよ迷宮都市が!。
異世界の御約束だからね。・・・ついでに実力も御約束が良かったんですけど!。どうなってんの神様!?。
「今はウサギと鹿が高値みたいだし、この辺りを狙いましょうか」
セレスが相場を見ながら提案する。勿論、誰もその提案に異存は無かった。
仕方無い。イメージとはかなり違うけど・・・
さあ、冒険の始まりだ。
稚作を読んで下さって有難う御座います。
これにて導入部の終了となります。
長いプロローグにお付き合い下さいまして有難う御座いました。
次回から冒険編に突入致します。
当然、出来る限りで頑張らせて頂きますが、常にストック0で書いておりますので、突然の不定期更新になるかも知れません。
御理解の程、宜しくお願い致します。
尚、本日深夜を持ちましてタイトルの変更を致します。
旧 I want to go Home
新 銅の冒険者 キョウスケ
今後とも宜しくお願い致します。