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第5話 隠し事が必ずしも悪では無い

「街に入ったら取り敢えず宿を取りましょうか」


セレスが後ろを振り返って俺達に声をかけてくる。正確には俺以外の2人に対してだが、勿論、俺が反対する訳はなかった。


「キョウスケ、大丈夫?」


マリアベルことマリーが心配そうに声をかけてくる。まさか年下の小柄な女の子に体力を心配されるとは思ってなかった。ちょっと情けない。


「ああ、少し休めば大丈夫だよ」


息を整えながら返事を返したけど、本当はとてもキツい。地元は都会って訳じゃないし、運動も平均程度で体力的に人より劣ってるとは思って無いのだが、そもそも基準が違いすぎた。


近くの街と彼女達が言い続ける・・・隠れ里から一番近い、【マルクトの街】で冒険者登録をする為に野を越え山を越え、何事も無く順調に進んで2日半。ようやく目の前に街が見えてきた。ぜんぜん近くねえよ。


慣れ、不慣れもあるのかも知れないけど、この子等歩くの早いんだよね。参った。そんな訳で疲労中の俺を気遣って宿で休ませてくれる様だ。早く荷物を降ろして休憩出来るなら、文句なんて有りませんとも。


しかし、今この瞬間の話とこれからの話は別である。早くもハーレムと言う野望を絶たれた俺には、この世界は苦行以外の何物でもない。


ちょっと隣街に・・・で往復5日である。家からコンビニまで徒歩5分程度で遠いと文句を言っていたあの頃が懐かしい。


やっぱり帰れば良かった。


最後にあのバーさんが『責任を取るなら大歓迎さ。男不足は問題になってるからね』と言っていたが、1人と添い遂げるなら別に元の世界の方が便利で安全だ。この世界である必要が無い。


これは欲望に流された罰なのだろうか?。


「前に泊まった宿が悪く無かった」


「そうね。部屋が空いてたら良いんだけど」


俺の考えを他所にメイベルとセレスが相談をしている。俺は元よりマリーも街に来るのは初めてだと言う話で、その辺りの事は2人にお任せである。


遠目から見る街には囲いが無かった。歩き易い道を街道として使ってるだけで整備している感じも無い。人が歩く事で雑草なんかが生えて無いんだろうな。

中規模程度の街だとそれが当たり前で、逆にもっと小さい街とか村とかでは柵で、もっと大きな街なんかは壁で守られてるらしい。


俺の方に振り返りながら『理由は知らないんですけど』と言った時に見せたセレスの笑顔が可愛かった。



★☆★☆★



「凄い、なんか色々あるよ。ねぇ、ねぇ、ちょっとだけで良いから見ていこうよ!」


初めての街にテンションが上がるマリーが微笑ましい。勿論、俺も興味が湧く。何と言っても異世界最初の街である。


街道から伸びる一本道がそのままメインストリート的な役割をしている様で、露店や商店が並んでいる。活気があってなかなか良い街だ。


俺達2人のテンションが上がってもしょうがないよね?。


「宿が先。その後は組合に行かないといけない」


「そう、宿が取れないと大変なの。あんまり安い宿は危ないし、高いところは泊まれないし」


メイベルとセレスがマリーを嗜める。しかし成る程。それなら宿が先だね。


だって俺、金持って無いし。村からお金を預かったセレスに頼るしかない。早いところ冒険者登録して稼がないと不味い。


「宿を取って、冒険者登録が済んだら良いんじゃないか?別にその後直ぐに冒険者活動をするわけじゃ無いんだし」


物価や貨幣価値のわからない俺としては出来るだけ早く市場調査をしたい。1食辺り幾ら必要なのかもわからないとまともな生活が出来ないしね。


俺にとっては必須事項なだけだけど、これにマリーが反応する。満面の笑みで俺の腕にしがみついてくる。小柄とは言え、すでに膨らみ始めてる胸が腕に当たる。嬉しいけど反応してしまうので止めて頂きたい。


「やった!キョウスケもこう言ってるし、良いでしょ!じゃ、早く用事済ませちゃおうよ」


苦笑いするセレスと軽く頷いたメイベルを見て俺の手を引きながら弾むように歩きだすマリー。


先頭を意気揚々と歩いているが、お前宿の場所知らないんじゃないか?


そんな事を考えながらも手を引かれているので一緒に歩きだす。

この時、俺は腰に付けていた水筒代わりの皮袋から一口水を飲んだ。


・・・腰に戻さず手に持ったまま、そっと前を隠したのは俺だけの秘密だ。


★☆★☆★


宿に行く途中も、宿を取る時も、そしてここ冒険者組合でも女性からの視線が凄い。アイドルってこんな感じ何だろうか?。


「仕事が終わった後になりますが、冒険者の仕事に付いて詳しくお教えしますよ。その時に一緒に食事でもいかがですか?」


冒険者組合の受付で登録をお願いすると受付嬢から逆ナンを受ける。この人はニコニコとしているが他の受付嬢や周囲の女性冒険者の多くが彼女を睨んでいる。俺達を取り巻く空気がマジで怖い。


仲間が冒険者だからと丁重に御断りし、登録をお願いすると残念そうに書類を渡された。


記入事項はわかっていたので、戦争前まで存在した街を出身にしたりと対策済みだ。ついでに言語理解の御陰かこちらの世界の文字もわかる。こう言うところはまるで物語だな。


カードとペンダントを渡されて簡単な説明を受ける。隠れ里や移動中に聞いてた通りだ。


初めに渡された状態が銅色。素材の色である。

これが、装着者の力量に反応して銅、青、紫、赤、銀、金の順に色が変わるそうだ。


ペンダントに血を垂らすことによって本人とのパスがつながり、装着する事で効果を発揮するって話だ。


いざ本番・・・になったが、凄く緊張している。


魔法が使いたいだとか、剣士なら大軍相手に無双したいとか希望を膨らませていた。

何故なら、転移したのだからチートでしょ!と疑って無かったのだ。これで戦闘職じゃ無かったらどうしよ。


仕方ない。結果は一緒と血を垂らしてから首にペンダントをかける。ペンダントは淡い光を発したかと思うと直ぐに収まった。


色は銅のままだ。一般的に銅色のままだと説明されていたけど転移したのに普通ってどう言う事だ?。

やっぱり、神様に会ってないのが問題なのだろうか!?。

転移してチート無しで魔王倒せとか無理ゲーじゃね!?いや、落ち着け俺。まだ、アビリティとやらがある筈だ。


ショックを見せない様に平然を装う。銅色で当たり前と言われてるのに取り乱すとか、小物臭全開になってしまう。


グッと気持ちを押さえていると突然頭に何かが思い描かれて、そして理解する。たぶんこれがアビリティなんだろうと。しかし、これは・・・。



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