弟の人生
今日、弟の娘が久し振りに会いに来た。
俺にとっても可愛い姪が結婚して子供が生まれ俺に顔を見せに来てくれた。
「良く来たなミリア」
「叔父さん久し振りだね。叔父さんにも私の娘を見てほしくて来ちゃった」
姪は隣街の男性と結婚してこの村から出て向こうで暮らしている為に中々会う事が出来なかった。
ミリアが小さい頃に母親が居なくなった為に弟が一人で育てる事ふを決めたので俺達夫婦も良くミリアの面倒を良く見ていたので産まれた娘の顔を見せに来てくれて俺達夫婦も喜んでミリアを家に上げて産まれた赤子見ながらミリアと楽しく会話を楽しんでいた。
「ミリアも娘が産まれて母親になったんだな」
「そうね。子育ては大変だけど大丈夫?」
「うん、ナックも手伝ってくれるから大丈夫だよ」
「そうか、テトの家に寄った後に来てくれてありがとな」
「ううん、今日はお父さん家に寄る前に叔父さん家に寄ったんだ。お父さんを驚愕させようと思ってね」
「テトの家より先に俺の家に寄ったのがバレたらテトの奴は拗ねるぞ?」
イタズラ顔を浮かべてるミリアに苦笑いを浮かべて言うと不思議そうに俺を見詰めてくるミリア。
そうだった。テトは格好つけて娘の前ではそういう事は見せない様にしていたな。
落ち込んだり、拗ねたテトを慰めるのはいつもミリアが寝てから話し合ったものだったな。
「でね。これからお父さん家に行くから叔母さんにミナの面倒を見ててもらいたいんだ。で叔父さんは私と一緒に行ってお父さんを家から出して欲しいの」
「孫なんだからミナを連れて行けばいいじゃないか?」
「だってお父さん今も一人でしょ?家も散らかってると思うから叔父さんの家に連れてきて貰ってそこでミナを見て貰ってる間に家の掃除をしようと思ってね」
確かに今独り身のテトがちゃんと掃除をしているかと言われればしてないかもしれない。
ミリアが居るときは一緒に掃除していたし、俺達夫婦も手伝いに行ったこともあった。ミリアの提案を受けて一緒にテトの家へと向かいながらミリアと会話しながら行けば直ぐに着いた。
ドアをノックしてミリアがテトを呼ぶが返事がなかった。
「あれ?お父さ~ん、いないの~?」
ドアに手をかけると鍵が掛かっていなかったみたいでドアが開いた。
テトが出掛けて鍵を閉めなかった事は今まで無かったので嫌な予感が頭を掠める。
「あれ?開いてる。もう~不用心だな。お父さんは」
そう言って中に入っていくミリアの後に続いて家の中に入って直ぐにミリアが止まっていた。
「どうしたミリア?」
声を掛けても返事をしないミリアが気になって部屋を伺うとそこに首から血を流してるテトがいた。
「お…と…う…さん?お父さん!お父さんなんで?」
テトに近付き揺するがテトからの反応は無かった。
「い…や…イヤァァァァお父さん!」
ミリアの叫びに我に戻りテトにしがみついたミリアを引き離そうとしているとミリアの叫びにに気が付いた街の人が中に入ってきてテトの姿を見て唖然としていた。
「おい、衛兵を呼んできてくれ!」
「あ、あぁ、わ、わかった」
その後衛兵が直ぐに来て話を聞こうとしたがミリアの動揺が激しく俺が替わりに話をしてミリアを家に連れて帰った。
テトが死んだ事を受け入れれない様子で憔悴していたミリアを自分の家に帰すのも躊躇われたので家に暫く泊まる様に伝えてミリアの夫に宛ててその主旨を手紙に書いて貰って出した。
~その二日後、衛兵に呼ばれて詰所に行くと今回の事を調べたが特に事件性が無くテトの自殺として扱われる事が決まったと伝えられた。
納得がいかず衛兵に詰め寄ると封筒を渡されて言われた。
「これは弟さんの遺書だと思われる。これを読んでみたが私も耐えれないと思う」
その言葉と共に渡されたテトの遺書を持って家に帰り、ミリアにテトの遺書の話をするとミリアが取り乱してしまった。
「そんな事無いよ。お父さんが私を残して自殺するなんて。私が結婚した時に孫が楽しみだって言ってたんだよ?そんなお父さんが自殺するなんて、うぅぅ~」
ミリアは泣き出してしまったので抱き締めて背中を擦ってやり落ち着かせようとしたが涙は中々止まらなかった。
ミリアが泣き出してから二時間が経った頃には大分落ち着きを見せたミリアには遺書を一緒に読んでみようと言い聞かせて遺書に目を通していくと驚きの事が書いてあった。
手紙にはこう書いてあった。
~~~~
兄さんへ
俺は生きていく事に疲れてしまったよ。自殺してしまったら兄さんに迷惑を掛けるけど許してくれないかな?なんで俺が自殺をするのかこの理由をここに書いておく。後は兄さんに任せるよ。ごめんね。
カレンがミリアを置いて居なくなったのは兄さんも知ってると思うけどカレンはね、隣街で能々と男と暮らしているんだよ。まぁここまでなら別に死のうとは思わなかったんだけどね。娘のミリアはカレンが家を出て行ってからも会っていたんだ。あの日カレンが帰ってこないと泣いていたミリアが俺に内緒で会っていた。
俺はミリアが寂しくないように出来るだけ頑張ってきたつもりなんだが、兄さんにも助けられて大切に育ててきたんだ。ミリアが産まれた日を祝おうとするとその日はいつも友達が祝ってくれると言っていつも次の日に兄さんの家で祝っていだよね?
でもその日はカレンとその男と一緒にいたんだよ。
毎年毎年毎年毎年毎年毎年毎年毎年毎年毎年毎年毎年毎年毎年毎年毎年毎年毎年毎年毎年毎年毎年毎年毎年。
妻に裏切られ、あんなに愛していた娘のミリアにも裏切られた事で俺は壊れていくしかなかったんだ。こんな人生に先が在るとは到底思えない。
兄さんには迷惑を掛けるけど家に在るのは全部兄さんに譲る事もここに書いておくよ。
ただ俺が残した物や金等はミリアには渡さないでくれ。ここまで俺を裏切った奴には何も渡したくないから。
本当にごめんね。
~~~~
ここで遺書は終わった。
ミリアを見ると顔を伏せて声を圧し殺して泣いていた。
「ミリア、この事は本当なのか?」
信じたくなくてミリアに聞くと嗚咽しながら頷く。
弟のテトが死んだ理由を知りやるせない気持ちで一杯になる。
ミリアの事は妻に任せてミリアの旦那に迎えに来るように手紙を書き直ぐに出した。
手紙を出し終えてからは最低限の会話しかぜすに妻を呼びテトが亡くなった理由を伝えると妻もこの感情をどうしたらいいのかわからないようだった。小さい頃から可愛がっていた姪が原因ともなる今回は何故素直にテトに言わなかったのかと怒鳴りたくなったが赤子がいる手前そんな事は出来なかった。
手紙を受け取ったナックが迎えに来てミリアを連れていった。
ミリアが帰り際に言った一言には我慢が出来なかった。
「叔父さん、お父さんの葬式には連絡下さい」
頭を下げて頼むミリアにふざけるなと怒声を上げてしまい赤子が泣き出してしまったが辛そうな顔を浮かべて帰っていった。
帰った後にひっそりとテトの葬式を行った。
風の噂では帰った街ではカレンが住んでるらしく、お前のせいでお父さんが死んだんだとカレンを責めているらしい。カレンはその事を気に病み床に臥せっているらしい。
テトの葬式を行ってから一週間が過ぎた頃に妻が妊娠していることが解った。
そして月日が流れて産まれた子は男の子だった。妻とはテトの生まれ変わりかも知れないと話をしてこの子を幸せにする誓いあった。
願わくば本当にテトの生まれ変わりだったらと二人で話し合って居ると二人の耳に懐かしい声が聞こえた気がした。
(よろしくね。お父さん、お母さん)