カンダタ、曰く。
「こっち、くんな!!」
掴みよろうとする手を弾き落とした。
なにせ、ひと一人を支えるのに精一杯だ。
いくら頑丈とはいえ、蜘蛛の糸ではどうしようもない。
遥か後方では夥しいまでに列を成している。
まさか、これほどまでにも罪人とはしつこくて業が深いとは思ってやいなかった。
地獄から天国へと向かう道。 奈落の一本道。
たった1本の糸が支えである。
必死に抗い、歩み寄る弱者を突き落とし続ける。
そうするしかなかった。
ただ……まさかの結末に辿り着くとは思いもよらなかった。
プチプチと切れてゆく音は気のせいではない。
繊維のひとつひとつが、重さに絶えきれないのは目に見えていた。
「俺も連れていってよ~~~」
「アタシを嫁にして~~~」
知ったことか、と。
踏みにじり、ようやく日の目を見れた時。
灼熱に熔けた。
太陽に負けたのは、罪の深さというより我が儘だったのか。
若しくは、欲望の成せる業か。