(4)“借り物”
4話目です。どうぞお楽しみください(^_^)
因みに、ダニエルさん宅に行くには車で10分かかる距離を通らねばならない。時間がない。方法は、一つだけだ。
「如何するの!?」
私が云っても改人からの反応はない。
「…自転車。」
「え?」
「自転車なら間に合う!早く創るんだ!」
「わっ、解った!」
慌てて外に出る。自転車?車でも10分かかるのに?戸惑い乍らも掌を向かいあわせる。
私の“借り物”「創造」は掌を向かいあわせ、創りたいものを頭の中で正確に思い描くことで発動する。よって、しっかり構造が解っていなければ創ることが出来ない。
ハンドル、ボディ、サドル、ペダル、タイヤ、チェーン、ギア、ライト、反射板…
パーツを思い浮かべ、頭の中で組み立ててゆく。私の手に光が集まり、思い浮かべた通りに出来上がっていく。
「…完成。」
私の目の前に自転車が現れた。時間を省く為、真っ黒のデザインとなったシンプルな自転車。その直後、後ろでガチャリと玄関のドアが開く音がした。改人も準備が終わったみたいだ。
「お、流石は葉月。もうできたのか。」
改人が早くしろって云ったのよ!
怒らせてしまった。
改人はサドルに、私は後ろのところに座る。
「…飛ばすよ。」
「え?」
「しっかり掴まってないと振り落とされることになるからね。」
と、笑いながら改人は云った。そして、自分の腰の部分を指す。此処に掴まれ、と云う事だろうか。とりあえず掴まる。
「…じゃ、行きますか。」
そして指をならした。青く光るなにかが足元を駆け巡るのを見た。
「“身体強化”。」
次の瞬間、とてつもないスピードで自転車が走り出した。あまりのスピードに振り落とされそうになる。なるほど、彼の云う通り。此のスピードであれば、ダニエル宅まで15分もかからない。
「ん?」
突然、前に大量の車が見え始めた。この村ではこんなに在るのは珍しい。矢張り、事件のせいか。
「よりにもよってこんな時に…!」
改人が忌々しそうに前の車を眺める。私も同感。
「…なぁ葉月。」
「なに?」
「一寸揺れるぞ。」
ゾクッと寒気が来た。なんだか非常にイヤな予感がするのだけど…
「…浮け!」
その刹那、本当に私たちの乗った自転車が浮いた。
改人の“借り物”は「静電気」。私が思うに、この世界で最も応用の利く能力だ。
次はアクションシーンあり…かも?
お楽しみにー