第1話 無限のスライムジェル
<スライムジェル×99を獲得しました>
……
<インベントリがいっぱいです>
えっ? スライムジェルがこんなに取れちゃった?
あの、錬金に必須といってもいいあのスライムジェル。
単体でHPポーションが作れてしまう、あのスライムジェルがこんなに簡単に取れちゃった!?
ただし。
喜んでみたはいいものの、ここはれっきとした戦闘可能フィールドの一つ。
草原だ。
ここには沢山のスライムがいる。
そして何人か、彼らを捕獲しようとするプレイヤーもいる。
……逃げよう。危険だ。
近くにちょうどあった岩の下に隠れる。
高さ30cmもない隙間だったが、プレイヤーたちは一向に気がつかない。
うまく隠れられたようだ。
そして、今からやること。
それは錬金だ。
錬金セットの詳細を見てみたところ、
この中には錬金用素材ちょっとと初心者用錬金台が入っているようだ。
とりあえず開封。
<錬金セットを開封しました。スライムジェル×10、初心者用錬金台を獲得しました>
<インベントリがいっぱいです>
<インベントリがいっぱいです>
むむむ?
インベントリがいっぱいのようなのでスライムジェル×10を捨て、初心者用錬金台を獲得。
入りきらなくなったスライムジェルは地面に落ちているがまあ気にしない。
インベントリがいっぱいです、とログが出ると、入りきらなかったそのアイテムは地面に落ちるのだ。
さあ、錬金を始めよう。
このゲームの錬金方法は、錬金台を床などに置いてから手順通りに進めるか、錬金ウィンドウから錬金ボタンを押すかの2通りである。
前者の方がより手間がかかるぶん、良質なものが手に入る。錬金も失敗しにくくなるようだ。
後者はどちらかというと量産用だ。一瞬で終わるが、前者と比べると錬金が失敗しやすい。
僕はどうするか?
もちろん後者を選択する。
(スライムジェル×99)×18を手作業で錬金していったら日が暮れるだろうし。
僕に必要なのは丁寧さとかじゃなくて、純粋な時間だし。
錬金ウィンドウを開く。
―――錬金ウィンドウ―――
錬金する素材の数:1(変更不可)
錬金台:
素材:
[決定]
―――――――――――――
この画面で錬金をしていくらしい。
錬金台は初心者用錬金台、素材はスライムジェルだ。
ちなみに錬金する素材の数は、ジョブレベルを上げると増やせるようになるらしい。
―――錬金ウィンドウ―――
錬金する素材の数:1(変更不可)
錬金台:初心者用錬金台 耐久∞
素材:スライムジェル
[決定]
―――――――――――――
普通の錬金台では耐久は100~1000くらい。
しかし、初心者用錬金台では錬金の質がちょっと低いかわりに耐久は∞になっている。
とにかく素材が多いから、質よりも量を重視する自分にとってはうれしい。
よし、決定ボタンを押そう!
<錬金成功。HPポーションLv1(-1)を獲得>
<インベントリがいっぱいです>
入りきらなくなったポーションは地面に転がっている。
ポーションは瓶がないのに瓶詰されているけど、まあそこは置いておいて。
うむ。錬金はこの方法でしっかりできるようだ。
じゃあ連打。連打。連打。
<錬金成功×85。HPポーションLv1、HPポーションLv1(-1)×3、……、HPポーションLv1(-5)を獲得>
<錬金失敗×112>
<錬金成功×201。……を獲得>
<錬金失敗×374>
……
<ジョブレベルが1から6に上がりました>
<一度に錬金できる最大素材数が2つになりました>
連打すると、ある程度一つのログにまとめてくれるようだ。いいね。
錬金できる最大素材数が2つになったということは、今後は一度の錬金で2つのものを錬金できるようになったということだ。
後で試してみよう。
さっきまであったスライムジェルは99×18+10個、合計1792個。
それを全部使いきった。
できたもの。
・HPポーションLv1(+1)×50:HPを36回復する。
・HPポーションLv1×71:HPを30回復する。
・HPポーションLv1(-1)×182:HPを24回復する。
・HPポーションLv1(-2)×155:HPを18回復する。
・HPポーションLv1(-3)×127:HPを12回復する。
・HPポーションLv1(-4)×87:HPを6回復する。
・HPポーションLv1(-5)×61:HPを0回復する。
計、733個。結構手に入った。
いっぱい手に入った。
じゃあ飲んでみよう。
Wikiには、ポーションを飲むことでもほんの僅かに経験値がたまると書いてあった。
……わずかに苦い。
そういえば、ポーションを無駄遣いしないようにと「ポーションは苦い」という設定が加えてあったっけ。残念。
それは置いといて飲みまくる。
733個のポーション。
全部飲んだ結果。
<レベルが1から3に上がりました>
レベルは上がった。少しだけ。
でも上がるということは事実のようだ。
もっとポーションを作って飲んでいこうかな?
いや、ここはポーションの上級版を作ってみるか。
ポーションを錬金すると、上位のポーションを作れるのだ。
さっそくやってみよう。
まずスライムジェルを獲得する。
体に意識を向ける。
<スライムジェル×99を獲得しました>
<スライムジェル×99を獲得しました>
<スライムジェル×99を獲得しました>
……
<インベントリがいっぱいです>
よし。スライムジェルがたまった。
というか、スライムジェルは地面にまき散らしておいてもいいか。
スライムジェルを回収しまくる。
もちろんインベントリはいっぱいだが。
<インベントリがいっぱいです>
<インベントリがいっぱいです>
……
うむ。
地面には大量のスライムジェル×99の表記が見えている。
さあ、ポーション作りの再開だ。
―――錬金ウィンドウ―――
錬金する素材の数:1(1~2で選択)
錬金台:初心者用錬金台 耐久∞
素材:スライムジェル
[決定]
―――――――――――――
そういえば錬金する素材の数を増やすことができたな。
2つの素材で錬金する、ダブル錬金というものだ。
増やしてみるか。
たしか、一度に同じ種類の素材をつかって錬金をするとよいことがあったはず。
出来上がるポーションの補正が良くなりやすいのだ。
ここでの補正というのは、HPポーションLv1(-3)の(-3)などのことを意味する。
補正の値が高いと、僕があとでやろうとしている錬金に役に立つのだ。
だから、ダブル錬金をして、よい補正がかかるようにする。
―――錬金ウィンドウ―――
錬金する素材の数:2(1~2で選択)
錬金台:初心者用錬金台 耐久∞
素材:スライムジェル×2
[決定]
―――――――――――――
これでよし。
決定ボタンを連打。
<インベントリがいっぱいです>
<インベントリがいっぱいです>
<インベントリがいっぱいです>
……
インベントリがいっぱいでポーションは入らない。そうしてポーションは地面に落ちる。
また、ある程度スライムジェル×99を消費しても、その時は自動的に地面に落ちているスライムジェルが拾われる。
よって、継続してポーションがつくれる。
結果。
<ジョブレベルが6から7に上がりました>
できたもの。
僕が使ったスライムジェルはちょうど100スタック、9900個だったらしい。
(1スタックは99個ね)
そして、錬金する素材の数を2(ダブル錬金)にしたから、得られるものは半分の個数になる。
つまり4450個だ。
そこから得られたものは……2371個だった。上々な量だと思う。
・HPポーションLv1(+2)×203:HPを42回復する。
・HPポーションLv1(+1)×611:HPを36回復する。
・HPポーションLv1×751:HPを30回復する。
・HPポーションLv1(-1)×504:HPを24回復する。
・HPポーションLv1(-2)×302:HPを18回復する。
(ちなみにほぼすべては地面に落ちている
インベントリは20枠、というか20×99個までしか入らないから)
うむ。そんなもんか。
ジョブレベルはそこまで上がらなかった。
これは、あまりにも同じ素材で錬金しすぎたということのようだ。
だから、今度は別の素材を使おう。
次は、ポーションでの錬金だ。
ポーションで錬金をすると、ポーションのレベルが上がった物を作れる。
つまり、HPポーションLv1を錬金するとHPポーションLv2がつくれるということだ。
しかし、マイナス補正のかかったポーションで次のレベルのポーションをつくることは難しい。
補正が(-2)くらいまで低いならまだ作れる。
だが、(-5)くらいまで下がってしまうと、錬金しても次のレベルのポーションは作れない。
だから、さっきのポーション作成ではなるべくプラス補正を掛けたのだ。
僕がさっき、「ポーションの補正が高いほうが、後々僕がやろうとしていることにいい」と言ったのはこれのためだ。
じゃあ錬金しますかあ。
ポーション同士で。
―――錬金ウィンドウ―――
錬金する素材の数:2(1~2で選択)
錬金台:初心者用錬金台 耐久∞
素材:HPポーションLv1×2
[決定]
―――――――――――――
ぽちっと。
<錬金成功。HPポーションLv2(+1)を獲得>
<インベントリがいっぱいです>
うむ。うまくいくようだ。
じゃあこっちも連打。
<ジョブレベルが7から10に上がりました>
できたもの。
2371個の半分、1185個(と単体錬金の1つ)からできたものは。
524個のポーションだった。
・HPポーションLv2(+2)×89:HPを84回復する。
・HPポーションLv2(+1)×140:HPを72回復する。
・HPポーションLv2×150:HPを60回復する。
・HPポーションLv2(-1)×74:HPを48回復する。
・HPポーションLv2(-2)×71:HPを36回復する。
合計524個。
量が減った。インベントリにも全部入っちゃった。
ではどうしようか?
……じゃあこっちも全部飲もう。いただきます。
けっこう苦い。
健康食品の青汁をさらに蒸発させた感じ。
しかし結構経験値にはなるとは思う。
そうして全部飲んじゃった。
524個のポーション、ごちそうさま。
<レベルが3から4に上がりました>
お。ちょっと上がった。
じゃあもっとレベルの高いポーションを作ってみようか。
もう一度スライムジェルを回収、そして錬金。
スライムジェルは500スタックくらいすでに錬金したと思う。
何度も錬金の詳細を載せるのは飽きてきたし、出来た高レベルポーションだけを見てみるか。
合計504個のポーションが出来た。
・HPポーションLv3(+2)×95:HPを140回復する。
・HPポーションLv3(+1)×141:HPを120回復する。
・HPポーションLv3×129:HPを100回復する。
・HPポーションLv3(-1)×98:HPを80回復する。
・HPポーションLv3(-2)×41:HPを60回復する。
また、ジョブレベルも上がった。
<ジョブレベルが10から13に上がりました>
いい上がりっぷりだ。
じゃあこれも飲んでみるか。
飲んでみた。
結果。
<レベルが4から6に上がりました>
結構上がったらしい。
よし。
日が暮れてきたけどポーション作りは続けるぞ。
スライムジェル量産。
HPポーションLv1量産。
HPポーションLv2量産。
HPポーションLv3量産。
HPポーションLv4完成。
<ジョブレベルが13から15に上がりました>
合計、ポーションは305個。
・HPポーションLv4:HPを150回復する。
(一部略)
飲んだ。
<レベルが6から7に上がりました>
スライムジェル量産。
HPポーションLv1量産。
HPポーションLv2量産。
HPポーションLv3量産。
HPポーションLv4量産。
HPポーションLv5完成。
<ジョブレベルが15から17に上がりました>
合計、ポーションは90個。
・HPポーションLv5:HPを200回復する。
(一部略)
全部飲む。
<レベルが7から8に上がりました>
スライムジェル量産。
HPポーションLv1量産。
(一部略)
HPポーションLv5量産。
HPポーションLv6完成。
<ジョブレベルが17から18に上がりました>
合計、ポーションは20個。
・HPポーションLv6:HPを300回復する。
(一部略)
全部飲む。
<レベルが8から9に上がりました>
スライムジェル量産。
HPポーションLv1量産。
(一部略)
HPポーションLv6量産。
HPポーションLv7完成。
ジョブレベルは上がらず。
合計、ポーションは5個。
・HPポーションLv7:HPを400回復する。
(一部略)
全部飲む。
<レベルが9から11に上がりました>
レベルはなぜか2上がった。
スライムジェル量産。
HPポーションLv1量産。
(一部略)
HPポーションLv7量産。
HPポーションLv8完成。
<ジョブレベルが18から19に上がりました>
合計、ポーションは1個だけできた。
・HPポーションLv8(+1):HPを600回復する。
(一部略)
たぶん元の効能は「HPを500回復する」だと考えられる。
<レベルが11から12に上がりました>
レベルは順調に上がってくれているようだ。
僕がそうこうしている間にも時間は流れていっていた。
周りを見渡すと、いつの間にか日が暮れてきていた。
夕焼けがきれいだ。
そろそろログアウトするかなあ。
しかし、フィールドでログアウトするのは危険だ。
フィールドでログアウトしても、アバターは残っている。
それが攻撃されてもプレイヤーはログアウトしているから、反抗もできない。
それが倒されると、普通に倒された時と同じように、コインを奪われてしまう。
この世界では、死んでもアイテムはなくならない。
しかし、コインを奪われるのはちょっと痛い。
僕の場合はそれに加え、このスライムの体が死んでも復活するのかが不明なのだ。
この体がないと、ポーションをここまで簡単に作ることはできない。
つまり、この体はポーション作りの命なのだ。
しかし、ログアウトしても問題ないところがある。
それは町だ。
町では、基本的に戦闘ができない。
敵対モンスターが現れたときなどは例外だが。
また、町でログアウトをするとアバターが消える。
つまり、安全になるのだ。
よって今後は町に行く必要があるだろう。
自分の姿はスライムそのもの。
怪しいモンスターとして倒される可能性はある。
しかし、僕はそれを回避する案を考えているので大丈夫だ。
◇◇◇◇◇ 第三者目線 ◇◇◇◇◇
このゲーム「Whenever Life」には掲示板がある。
この掲示板には、様々なスレッドが立っていて、常に最新の情報が入っている。
ここではその掲示板の書き込みをまとめた。主人公のスカイがログアウトした地点ぐらいでの書き込みである。
ちなみに、主人公は錬金術師。ジョブレベルは19である。
また、主人公が作ったHPポーションの最高レベルはLv8である。
◇ゲーム内掲示板『錬金術師 らいふ1』
1:らららん☆ id:245
このスレに来てくれてありがとう!
私たちはキミを歓迎するよー!
集まれ錬金術師~
……
302:ネームレスな名無し id:0zam
結局、現在の錬金術師の最先端って誰?
レベルどれくらい?
303:らららん☆ id:245
そりゃあ私ですわ
すでにジョブレベル7ですわ
これ以上の人はさすがにいないと思われ
304:塁男 id:3049
レベル7!?
ゲーム開始数時間でそれってすげえなあ
俺なんて錬金回数5回のひよっこだぜ……
まだレベル2だぜ
305:らららん☆ id:245
スライムジェルを錬金するとレベルが上がりやすいよ
レベルが上がればいろいろとできることが増えるよ
できることが増えればお金が得やすくなるよ
お金が得られたらスライムジェルが買えるよ
さあ君もスライムジェルを使って錬金しようじゃないか
306:塁男 id:3049
そういっても素材屋でジェル買う金ないぞ
307:太楼 id:10492
俺も俺も
金がないとジェルって買えないよな
308:ネームレスな名無し id:n4pv
いや狩ろうぜ
生産職でもスライム位なら余裕で狩れるぞ
俺なんか10体くらい倒したぜ
309:太楼 id:10492
戦闘職乙
310:ネームレスな名無し id:n4pv
ちげーよ、錬金術師だよ
初期装備の剣もって余裕で倒せるぜ
スライムの核にさえ当てられればの話だけど
倒せなかったやつは情報不足乙
……
361:ネームレスな名無し id:2iny
そういえば
ポーションの最高レベルってどれぐらいになるの?
362:ライスカレー id:403
β版で確認された最高レベルは33
MPポーションLv33(-5):HPを0回復する。
残念ながら作成方法は不明。
効果のあるポーションでの最大レベルはたぶん13
HPポーションLv13:HPを4,000回復する
競売にかけられて、最終金額は2,000,000コインになった
ちなみに2,000,000コインは家が買える相当だぜ
あれはめっちゃ話題になった
正式版サービスでの最高レベルは不明
363:らららん☆ id:245
ちなみにそれを作ったのも私だ! えっへん<(`^´)>
当時はジョブレベル35ぐらいまで行ってたな~
正式サービス始まって元に戻っちゃったけど
余談だけど今の私が作った最大レベルのポーションはこれね
たぶん現行最大だと思う
HPポーションLv7:HPを400回復する。
364:ネームレスな名無し id:2iny
らららんさんすげえ
β版ってたしか3か月くらいしかなかったから
3か月でジョブレベル35まで行ったのか
これを超える猛者って現れるのかな
365:らららん☆ id:245
それは私になるぞ!
3ヶ月で今後はジョブレベル40目指してがんばります
◇主人公のステータス(現在)
―――ステータスウィンドウ―――
スカイ:Lv1→Lv12 ジョブ:錬金Lv1→Lv19 年齢:0 所持金:500C
種族:ブルースライム
ステータス:
HP:9/9→22/22
MP:2/2→5/5
攻撃:3→7
防御:3→6
俊敏:2→6
器用:17→82
魔法:
酸弾(MP1):酸性のスライムジェルを飛ばす。種族固有スキル。
スキル:水魔法Lv1
ジョブスキル:なし
インベントリ(2/20):初心者用錬金台、青銅の剣
装備:なし
ブルースライム:モンスターランクF
ドロップアイテム……「スライムジェル」「魔石・青」
ルマーズ草原などにいるモンスター。水色。
この世界の最弱モンスター。剣で核を切るか火魔法を浴びせれば倒せる。
体のジェルは酸性であり、触れたものを溶かす。
水魔法を使い、たまに敵に酸弾を浴びせることも。
戦闘などで経験値が入り、Lv20でグリーンスライムに進化できる。
―――――――――――――