プロローグ VRMMOを始めた
毎週1~3話更新ですすむ予定です。
僕、大空 仁は高校生だ。
今日から、小遣いをためて買ったVRMMO「Whatever Life」(略称WL)を始める。
βテスターにはなれなかったが、製品版が遊べるだけでも満足である。
<キャラクターの新規作成をしてください>
キャラクター作成画面に入ったようだ。
肉体のない、人工知能的な声だけが聞こえる。
Wikiに載っていた情報。
βテスター曰く「キャラクター作成では名前と種族とジョブが決められる。また、外見もちょっといじれるぞ」と。
内容はすでに決まっているので素早く打ち込む。
名前は「スカイ」。僕の苗字「大空」からとった。
種族は人間。
外見は変えすぎると体に違和感が起こるようなので変えない。βテスターが言っていた。
ジョブは錬金術師を選択。決定。
<キャラクター作成中……完了>
<あなたのプレイヤーIDは503です>
βテスターのプレイヤーIDは1~500番らしい。
つまり、僕はβテスターの後の相当早い番号を取ってしまったようだ。
みんな遅い気がするがまあいいや。
<チュートリアルを受けますか?>
「いいえ」
チュートリアル内容は……ウィンドウの説明とか残虐表現の除去とからしい。
その辺りはもうwikiで読んでいるから大丈夫だ。
ウィンドウは脳裏で「ウィンドウオープン」「ウィンドウ開いて」とか唱えると開く。
錬金などはウィンドウのボタンを押して行える。
残虐表現は相当減らされていると聞いた。
さらに、顔面や首への物理攻撃不可、その辺りの痛覚無効とか。
一部の恐怖表現は人工知能によってカットされるとか。
ちなみに痛覚はほぼカットのようだ。これも変えられない。
<ではあなたを「Whatever Life」の世界へお連れします……>
すると、視界が暗くなり気がつくと自分は「ルマーズの町」にいた。
俗に言う「はじまりの町」というやつだ。
そして自分は全力で走って町を出た。
そしてルマーズの町のとなりにある「ルマーズ草原」に出た。
ここには、モンスター最弱といわれるスライムしかいない。
そしてインベントリを確認する。入っていたのは青銅の剣と錬金術セット。
そして初期資金の500C。
Wikiに書いてあった通り、錬金術師という生産系のジョブでもしっかり剣は入っていた。
これを使ってスライムを倒してみよう。
実は、スライムからとれるスライムジェルはめちゃくちゃ重宝すると見たことがあるからだ!
このゲームには掲示板がある。
そして、掲示板ではプレイヤーがブログを経営することもできる。
Wiki曰く、これはそこに書いてあった情報だ。
◇β時代からの情報『スライムジェル万能説』byらららん☆(ID:245)
錬金術に最適な素材はズバリ、スライムジェルである。
その魅力はなんといっても万能性。
スライムジェルは様々なアイテムを錬金するために重要である。
下記のレシピを見てもらえれば分かるであろう。
スライムジェル系→HPポーション
スライムジェル系+木の葉→MPポーション
スライムジェル系+HPポーション→HP自動回復ポーション
スライムジェル系+MPポーション→MP自動回復ポーション
スライムジェル+光るキノコ→暗視
スライムジェル+赤のオーブ→火属性ポーション
スライムジェル+青のオーブ→水属性ポーション
スライムジェル+緑のオーブ→風属性ポーション
スライムジェル+黄のオーブ→雷属性ポーション
スライムジェル+白のオーブ→光属性ポーション
スライムジェル+黒のオーブ→闇属性ポーション
etc…
要するに、全てのポーションはスライムジェルから生まれるのだ!
この内容は実際に正しいようで、ゲーム内の本に書いてあるレシピの素材は半分ぐらいがスライムジェルに置きかえられるらしい。
つまり、スライムジェルは錬金に重宝するようなのだ。
生産系だけどまあスライムなら余裕で倒せるだろう。
あいにく、Wikiでこの辺がどうだったかは読んでいないがたぶん大丈夫だろう。
余裕そうだし、死亡フラグも立てちゃうか~。
僕はスライムを倒したら結婚します! はい、死亡フラグ立てたわ~。
でもめっちゃ余裕だわ~。
僕は青銅の剣でスライムに攻撃を仕掛けた。
しかし。
スライムは思ったより素早かった。
僕の適当にふるった一撃は外れた。もう一度振る。外れた。
その隙を見てスライムは飛び掛かってきた。案外重い。
まるでタイヤが襲いかかってきたようだ。
僕は倒れた。
スライムは僕に絡みついて僕を消化している。
僕のHPゲージがみるみる短くなっていく。
……あれ? フラグ、回収しちゃった?
もがいてももがいてもスライムがへばりついてくる。脱出できない。
とうとう僕のHPは0になった。
<あなたは死にました>
<運営の気まぐれによりあなたを転生させます>
<あなたはLv5以下のためデスペナルティはありません>
<あなたはLv5以下のため、死亡してもCを落としません>
僕は死んだんだなあ。
……転生?
……はい!?
Wikiに載っていた情報。チュートリアルでも紹介されるであろう情報。
「プレイヤーは死亡した場合、プレイヤーが最後に入った町で復活できます」
しかし、一度死亡して復活したであろう僕がいるのは最初の町、「ルマーズの町」ではなかった。
ここは「ルマーズ平原」。さっき僕が死亡したところだ。
そして視界に違和感がある。なんだか視点の位置が低い。なぜだろう。
下を見てみる。なぜか水色のゼリーのようなものが見える。なぜだろうか。
そして、その水色のゼリーを僕は体だと認識している。なぜだろうか。
そういえばステータス機能なんてものがあったなあ。
『ステータス』と唱えると、自分のステータスが分かる。
さっそくやってみよう。
『ステータス!』
―――ステータスウィンドウ―――
スカイ:Lv1 ジョブ:錬金Lv1 年齢:0 所持金:500C
種族:ブルースライム
ステータス:
HP:9/9
MP:2/2
攻撃:3
防御:3
俊敏:2
器用:17
魔法:
酸弾(MP1):酸性のスライムジェルを飛ばす。種族固有スキル。
スキル:水魔法Lv1
ジョブスキル:なし
インベントリ(20/20):初心者用錬金術セット、青銅の剣、(スライムジェル×99)×18
装備:なし
ブルースライム:モンスターランクF
ドロップアイテム……「スライムジェル」「魔石・青」
ルマーズ草原などにいるモンスター。水色。
この世界の最弱モンスター。剣で核を切るか火魔法を浴びせれば倒せる。
体のジェルは酸性であり、触れたものを溶かす。
水魔法を使い、たまに敵に酸弾を浴びせることも。
戦闘などで経験値が入り、Lv20でグリーンスライムに進化できる。
―――――――――――――
結論。『種族:ブルースライム』。
僕、転生したらしい。
しかもスライムに。
ステータスが弱い……。攻撃職はLv1でも平均ステータスが8くらいあったはず。
とにかく敵とか人がいたら逃げないとすぐ倒されちゃいそう。
そういえばそんなスライムに負ける生産職Lv1って本当に弱いのかもなあ。
あと、器用だけ高いのも気になる。これは生産職だからかな?
というかモンスターなのにジョブが選択できるというのがちょっと面白いところだなあ。
案外魔法の酸弾が強そう。
強くなったスライムがこれを木とかに飛ばしたら、木がジューっていって白い煙がでて木が解けるとかあるのかな? あったら面白そう。
一応今の最大MPは2で、酸弾は1回MP1だから2回だけ発射できるようだ。
『生物を食べたりやっつけると経験値が入り、Lv20でグリーンスライムに進化できる。』
というのは種族進化かな?
今後強くなるためには人間たちと同じく経験値を集めればいいようだ。
グリーンスライムへの進化もちょっと興味がある。
あともう一つ気になることがある。
このスライムの体、素材として取れない?
体のジェルを回収するイメージを膨らませてみた。
<スライムジェル×99を獲得しました>
<スライムジェル×99を獲得しました>
<スライムジェル×99を獲得しました>
<スライムジェル×99を獲得しました>
……
<インベントリがいっぱいです>
えっ?