プロローグ〜孤独な世界〜
私は1人だ。孤独だ。誰も私のことを見てくれない。誰も私のことを理解しようとしてくれない。誰も私のことを……
私の名前は神無張 優香。中学2年生。女子。教室では端っこにいる。私のことをみんなは覚えてるのだろうか。まず私は、とてつもなく陰が薄い。話しかけても気づかれない。肩を軽くつついても、少し大声で話しても。気づかれないのだ。初めはシカトだと思った。でも気づいた。私はおかしいくらいに存在感がないのだと。確かに私は、あまり自分から話しかけるタイプではないし、大きな声を出すタイプでもない。自分の椅子に座って静かに本を読んでいる私。いつからか、1人でいることが当たり前になった。
3年前。これは、小学6年生の修学旅行の時。私はある事件を起こした。私はその頃はまだ、普通の人だと思っていたし、周りの対応も普通だった。よく話す友達も2、3人いて、とても楽しかった時だった。修学旅行も終盤に差し掛かり、全員集合をする時だった。私は集合場所に設定されている、A社のバスの付近でみんなの集合を仲良しのグループのみんなと待っていた。まあ楽しそうに話しているのは私以外の子で、私は一歩後ろで話を振られた時に返事をするだけだったけど……。そして集合時間になり、さて。バスに乗ろうという時に。
「おい!やべえ。神無張がいねえ。探さねえと!!」
あるクラスメイトの男子が言った。それを機に、みんなが言った。
「優香ちゃんは?」
「まさか迷子?」
「嘘でしょっ!ゆ、優香ちゃぁん、どこぉ……。」
みんながみんな、大混乱。私と仲良しグループは必死で「ここにいるよ!大丈夫!」と言っていたけれど、気づいてくれなかった。仕方なく、私は一人一人に「ここにいるよ」と声をかけ、落ち着くように言ってまわった。それでも、数人の早とちりをした人たちは、博物館内で、必死に走り回ってたらしい。申し訳なさと、謎の気配のなさにぼんやりとした疑問を持ちながら、私たちは帰路に着いた。夕焼け空の美しい色が私にとっては何かを忘れて行っているような、そんな物足りない色に見えた。
それから私の口数は減った。元から話さない人だったんだけどますます話さなくなった。
中学へ行く時、私はみんなと違う学校に行った。理由は、居づらかったから。あの事件後、私の存在感は薄くなっていった。これ以上、みんなと話すのが辛くなった。仲良しグループの子とはたまに話してたけど、だんだんその子達にさえ忘れられてきて、それならいっそと連絡を絶った。そして新しい学校でまた1からスタートを切ろうとしたんだ。
初めはみんなと仲良くできた。でもだんだんやっぱり存在感のなさが目立ってきたんだ。それが確実にわかったのが、習字で賞を取った時のこと。流石に先生には覚えててもらったよ?でもね、それでも、クラスメイトは覚えててくれなかったんだ。賞を取った時の、みんなの反応は、「うちのクラスにそんな奴いたっけ」だった。悔しかった。確かにあまり喋らないけど、それでも一応クラスの人間くらい名前くらい覚えているものだと思っていた。でも私は覚えててもらえなかった。これが中学一年生の時の出来事だった。
そして今は中学2年生。流石にもう慣れた。そして、気にも留めなくなった。常に人でいる私に対して、目を向ける人なんて、1人もいなかった。
私は1人だ。孤独だ。誰も私のことを見てくれない。誰も私のことを理解してくれない。誰も私のことを……。