第二部? 何それ美味しいの?
急ごしらえ、安定の駄作ですとも!
「第二部だッ!!」
事の始まりは年末のある日。リビングに入って来た東京の第一声は今まで以上にエキセントリックかつ尖ったものだった。
「姉さん、大丈夫?」
コタツでリラックスしていた埼玉はひとまず心配した。
彼は何時如何なる時でも姉である東京を見守り、時折見られる奇行にも寛容な姿勢でいる。そのつもりだった。
それでも今回は常軌を逸した事態だと彼は直感的に感じとっていた。
「こんな所で何をしているのだ弟よ!!」
土曜日にも関わらずセーラー服に身を包んだ東京は天板をバンッと叩く。
「何って、温州ミカン食ってるけど?」
「それどころじゃないッ! 第二部間近なのだぞ?」
「ダイニブ? 何ソレ新しい必殺技?」
「ノンノンそうじゃない。アニメなんかでいうセカンドシーズン的なやつだ」
「はい?」
「具体的には第13話辺りだな!」
「・・・・・・」
埼玉は理解したくなかった。いや、本当は理解していると悟られたくなかった。
彼だって隠れアニオタの端くれとして第二期的なものだろうと予想はついていた。
それでもこの会話を続けてはいけない懸念が彼にはあったのである。
「どうしたのだ?」
「いや別に? 」
「そんな肝臓みたいな顔して」
「ひでぇ」
「もしくは第二部みたいな顔して」
「・・・・・・」
埼玉はそろそろ決定的なツッコミを入れたかった。スパッとまとめ上げたくなっていた。
しかし東京のボケ連鎖は止まることを知らない。
「あっ肝臓に戻った」
「どんなギミック?」
「にしても寒いな!」
「制服だからじゃない?」
「第二部鍋でも欲しいな・・・・・・」
「闇鍋どころか混沌だよねそれ」
「となれば第二部を買わねばなッ!」
「あ、単品なんだね」
「あと肝臓も補充せねば・・・・・・」
「備蓄済み!?」
「よしッ二部するかぁ」
「何する気!?」
「具体的には作者をシメてくる」
「メタいわ!! ・・・・・・あ」
ここが埼玉の限界だった。
東京は天井を仰ぎ勝利宣言とばかりに声を張り上げる。
「認めたな、弟よ。外の世界を!!」
これが埼玉が危惧した事態そのものであった。
「そんな・・・まさか◇あとがき劇場◇の世界観が本編にまで侵食してくるなんて・・・!」
「ふはははは! いつまでも意味不明なシナリオに縛られている私ではないのだよ!! さぁ混乱しつつある読者諸君ッ!! 第二部からは東京ちゃん完全監修の大冒険ファンタジーを月一と言わず週二ペースでおとど
作者はここでキーボードから手を放した。
なんだこれ。
◇
年末のある日、リビングに入って来た東京の第一声はありきたりなもので、
「こんな所で何をしているのだ?」
「何って、温州ミカン食ってるけど?」
コタツの定位置に陣取っていた埼玉は抑揚無く返す。
「ふむ、そうか」
「・・・・・・ねぇ姉さん?」
「どうした弟よ」
「なんか忘れてる気がするんだ」
「どうした急に肝臓みたいな顔して」
「ひでぇ」
「もしくは――――」
「もしくは?」
「――――肝臓?」
「あっそれで固定なんだね」
「うむ・・・・・・」
「・・・・・・」
この日、それ以上会話が繋がることは無かったという。
第二部はやりますのでご安心下さい。それでは良いお年を!