第5節:チュートリアルPART2
「とまぁ、さっきみたいな感じで、遊び人スキルは使えるのじゃ、遊び人のスキルは磨かないとただの足手まといじゃがな」
「これから当分、その運操作と昼寝の修行かぁ。ご指導のほどよろしくだ」
パスタ屋を追い出された後、ワイズの所属する冒険ギルドの仲間と合流するため、待ち合わせ場所に指定した、職業酒場に向かうことにした。
理由は職業酒場でクエストのエントリーができるからだ。
職業酒場に着くと、ワイズの仲間たちが出迎えてくれていた。
メンバーの中には、俺が知っている者も含まれていた。
戦士ゴルドンと僧侶レストである。
「おー、久しぶり!元気してたか?」
「あらぁん?話には聞いてたけどぉ、どぉしたのん?」
顔見知りということもあり、結構歓迎されている。
「お久しぶりです。まぁ、いろいろあって・・・・・、こうしてあなたたちのギルドに合流することになりました」
「職業は?」
「紆余曲折あって、今は遊び人ということになっています」
「遊び人かぁ、パーティに見たのは何年振りかな?」
ゴルドンは、俺とワイズを見比べながら言う。
「わ、わしをチラチラ見ながらいうな!」
「この賢者さん、昔遊び人だったからな」
ワイズにとっても、遊び人時代は恥ずかしい過去の様だ。
「そちらの娘さんは?」
俺は、パーティ内で初顔合わせの一人の少女について聞く。
その少女は、日本にいた時でいう黄色人種で黒髪でミディアムカットくらいの髪型だ。
背は低めだが、胸はワイズよりはあるといった具合だ。
黒いローブを着ていることから黒魔法使いだろうか?
「クックック・・・、我のことか?我が名は暗黒騎士クロミ・クロイワ・・・。またの名を漆黒の闇・・・」
すご~く、痛い娘である。
あれ?
ローブ来てるけど暗黒騎士なんだ。
「普段の彼女の格好がローブなのは、戦闘時のみ暗黒騎士用のアーマーを装着するからじゃ」
あ、またこの賢者俺の心読んだ。
「ワイズよ・・・、明日のクエストがきまったぞ、概要はこれに記載してある・・・」
「バーンボアじゃな」
バーンボアとは、炎属性の魔法やブレスを操るイノシシ型の魔物で、たまに農村や町に降りてきて、農作物を荒らしたり、その場で魔法やブレスで焼いてバーベキューの様に食べるといった何とも贅沢で迷惑な魔物である。
増えすぎると山火事の原因になることもあるので、ジビエとして狩猟を行うことがたびたびあるそうだ。
今回のクエストもまさにそのような概要である。
「マコトよ、バーンボアはとにかくすばしっこい。用心することじゃな」
「忠告ありがとう、対策を考えとくよ」
「あと、主要メンバーが一人いるのじゃが、あいにく今ここに居合わせておらんのじゃ。ま、そのうちアウトは思うのじゃがな」
「わかった、では俺は、明日のクエストに向けての準備があるのでこれで」
今夜は、忙しくなりそうだ。
夜、町の公園でスキルの開発の訓練を始めた。
まず、ターゲットとしてのゴーレムを数体錬成する。
ターゲット用のゴーレムは、これまで使役したものと比べてややスリムな体系をしている。
そして、それらは素早く動くことができる。
「地を組成する物相当、わが身に纏いしその装甲、錬成!」
俺自身も錬成でゴーレムを身にまとう。
ゴーレムアーマーも以前のものを改良していて両肩に砲門が装着された使用になっている。
ゴーレムアーマーの鈍足性を補うために、牽制手段として魔法を弾丸として飛ばす術式を砲門に仕込み、中距離戦闘に対応できるようにした。
技名はエレメンタルキャノンということにしておこう。
ターゲットのゴーレムが素早い動きで俺に襲い掛かるので、このエレメンタルキャノン、今回は、バーンボア対策ということで弱点属性の弱点属性の氷属性の魔法弾を放つ。
捕捉だが、魔法弾を発射するときは呪文を唱える必要はない。
この技術は鍛冶屋時代のとき、魔法銃と呼ばれる数弾使い捨ての属性魔法を呪文詠唱なしで発射するアイテムを製作・販売していたことがあり、その技術の応用である。
具体的には魔法銃より発射弾数を数倍増やし、火力も上昇させたものとなっている。
しかし、ターゲットのゴーレムが予想以上に素早く、氷属性の冷凍弾がいともったやすくかわされてしまう。
そして、ターゲットのゴーレムからのパンチの猛襲を受ける。
「が、こ、この・・・」
一応攻撃には耐えるが、一旦ターゲットのゴーレムの動作を停止させる。
「やっぱりこのままでは良くないな・・・、あれを試すか?メイルカット!」
身にまとうゴーレムアーマーの分厚い鎧がパージされ、かなりシェイプアップされたパワードスーツの姿になる。
例えるなら、某平成複眼英雄ものの2人目とかによく見かける感じのスリムな強化外骨格がイメージである。
メイルカットすることにより、移動速度は数倍に調整することができる。
まずは、3倍から。
とりあえず、前方向にダッシュする。
「うぉ!?速えぇ!!」
3倍調整でのダッシュなので、素の状態での100m走のタイムが12秒フラットくらいなので時速30km×3で約時速90kmとなる。
魔力での動作・パワーのアシストをこのシェイプアップしたアーマーで行っている。
ピッチがシャカシャカとゴキブリのように細かく、蹴る力も強化しているのでストライドも広い。
そりゃ、速いわ。
次にそのスピードで曲がってみるが、結構な遠心力を受けた。
そして、ブレーキ!
キキッと制動距離30m以内くらいで何とか止まることができた。
この辺は車の急ブレーキのような感覚に近く、結構な負担がかかる。
後で筋肉痛が怖い。
次は、4倍速で試す。
ダッシュをしてみたが、これ、速い!速すぎる!
速度にして時速120kmくらいとチーター並みか?
うぉ!
止まれん!
「ぎゃああああああああああ」
どかぁぁぁぁぁん、と公園の壁に激突する。
アーマーに覆われているので、怪我はなかったが、かなり痛かった。
しかもすんごい疲れる、これ。
というわけで当分は3倍速に決定。
今現状の能力では4倍速は危険なので、自身の身体能力と、動力制御のスキルが上がったら、その時にまた4倍速以降を試していくことにしよう。
通常の三倍速いってやつだね!
しかしながら今のところボディは赤くする予定はない。
そして、先程パージされたアーマーの残骸は再利用することにするため、再錬成を行い、ゴーレムアーマーの姿にする。
自動操縦や魔法弾発射はできるが動きは、俺が来ていた時と同じく、鈍足なため、撹乱用兼盾としてのドローンなゴーレムとなった。
俺は、この状態でターゲット用のゴーレムを再起動させる。
ゴーレムは先ほどの様に襲い掛かってきたので、3倍速で斜め前に移動し、そこからターゲット用のゴーレムの背後に回り込み、背中に正拳突きをお見舞いする。
その正拳突きは、先程より重さは失われているが、パワー・スピード共に強化されているため、ゴーレムをいとも容易く貫通した。
強えぇ!
しかし、このメイルパージした形態は結構魔力・体力の消費が激しいため、休む必要がある。
セーフティモードとして、パージされる前の状態に戻る必要があったため、ドローン化していたゴーレムの残骸を一時分解し、それを俺の体の周りに再構成する。
これで、一時休憩ができるようになったので、パージのタイミングはよく考えないといけないということが分かった。
身体への負担もでかいので今後は、基礎体力の強化も必要だな。
「はぁぁ、もう一回やったら今日は寝よう」
この後も訓練は続いた。