第3節:それは突然に(後編)
「どうじゃ?遊び人としてわしの弟子にならないか?」
「弟子って、お前賢者で遊び人が弟子なわけ・・・・・、あ、そうか、そういうことか・・・」
昔遊んだRPGで賢者に転職する条件が遊び人の経験とかあったな。
「左様じゃ、遊び人でレベルカンストすると賢者に転職できることになっとる。おっと、そう言えば、お主の名を聞いてなかったな、わしの名は大賢者ワイズ・インテリジェンヌという。」
うわぁ・・・、自分で自分を大賢者と名乗りやがった、この女。
ってちょっと待った―――!
カンストだって―――!?
「マコト・カミヤと言います。カンストって遊び人だとレベルいくつなんだ?」
「ふっふっふ・・・・・、それは・・・・・」
「それは・・・・・・」
そこから焦らすこと15秒ほど、ここでCM入りま~すとかは無しだぞ!
「レベル100じゃ!」
おい、冗談だろ?
そんな気の遠くなるような修行やってられるか!
「ところで、お主最近体に異変は感じないか?」
「う~ん、強いて言うならばやたらと転びやすくなったとか、突然睡魔に襲われることが頻繁になったとか、さっきも突然躓いたしな・・・」
「うむうむ、わかった。では今からわしと一緒に職業ギルドに向かうか」
「どういうことだ?」
「お主、最近職業酒場での個人情報更新しとらんじゃろ?まぁ、今にわかること・・・」
「お、おう・・・」
俺は何が何だかわからないまま、年寄口調の賢者少女について行くことにした。
―――――職業酒場に着いて、
「ちょっと、そこのお姉さん、こやつの現在のステータス表示してくれないかの?」
「畏まりました~、少々お待ちくださいませ」
今俺は、ワイズと職業酒場にいる。
そういえば、就活忙し過ぎてステータス更新怠ってたなぁ・・・・・。
しばらくして、職業酒場の受付のお姉さんが石板を持って戻ってきた。
俺たちは石板に表示された俺のステータスを閲覧した。
氏名:マコト カミヤ
職業:遊び人Lv1
サブ職業:錬金術師Lv50
通常時 錬金術師状態時 ゴーレムアーマー装着時
HP:81 162 変わらず
MP:62 124 変わらず
攻撃:57 114 250↑
防御:50 100 350↑
魔力:73 146 変わらず
精神(魔法防御):35 70 200↑
速力:92 184 50↓
運:133 266 変わらず
スキル:武器錬成、ゴーレム錬成、ゴーレムアーマー改、アイテム錬成、魔物使役、運操作Lv1、昼寝Lv1
おいおい、俺、いつの間にか遊び人になってるぞ?
訳が分からないのでお姉さんに事情を聴いてみる。
「私、遊び人になった覚えはないのですが」
「それはあなたが遊び人になる条件を満たしたからです。条件の一つに求職活動30回以上というものがあり、貴女の場合それかと」
お姉さんに指摘される。
お姉さんによると、遊び人になる条件は下記のいずれかとのこと。
・求職活動30回以上で内定の出ていない無職
・学生・主婦(主夫)、自営業、職業訓練中、病気などではなく、求職活動をしていない無職
だそうだ。
就活連敗しているといつの間にか遊び人になっていることもざらにあるケースだとのこと。
しかも遊び人状態になると、基本ステータスもLv1となり転職補正がかかり元の能力の半分になってしまうので就職内定率はさらに下がるとのこと。
無職期間1か月の間は猶予期間のためステータスは保留されるらしい。
よって能力も全部半分くらいにまで下がってるし、スキル欄に運操作と昼寝がある。
「お主が最近眠いとか石に躓くとか言っておったのは、遊び人スキルが制御できていない結果なのじゃ、クックック、うひゃひゃひゃひゃ!」
くそ、何がおかしくて笑ってるんだこの女。
「わしにはお主が遊び人になることくらい、未来眼でとっくに知っておったわ。さっきわしの胸揉んだじゃろ?お主の絶望に満ちた顔を拝めたから、特別にチャラにしてやろうぞ。寛大なわしに感謝するがよい」
べ、別にお前のちっぱい通り越して、まな板同然の胸なんて興味ないんだからねっ。
俺は、出てるところは出てる女の方が好みだ。
つーか、今この女賢者自分のこと寛大なとか言いやがった。
こんな痛い娘リアルで見たのは、人生で5本指にも満たないぞ。
ここ異世界だけどな。
どうやら未来眼というスキルは1か月先くらいならある程度の誤差があれど、見通せる能力である。
「それを見越しての、勧誘だったわけなのか・・・・・」
「左様じゃ」
すげぇな、未来眼。
「ちなみに運操作を極めた遊び人や未来眼を覚えている賢者は、ギャンブル場立ち入り禁止になっているから要注意じゃぞ、確実に勝手しまうからな」
スキルを使ったズルはできないらしい。
俺はまだまだ分からないことがあったのでお姉さんに質問する。
「お姉さん、錬金術師がサブ職業になってて、錬金術師状態時とかどういうことです?」
「それは、あなたが錬金術師のスキルを実行している時だけに適用されるパラメーターですよ。例えば、貴女が武器を錬成している時や、ゴーレムを操作しているときなどに適用されますね。スキルを起動・実行していないときは遊び人のパラメーターが適用されます」
どうやらスキルは死んだわけではないらしい。
「ちなみにサブ職業のレベルアップは可能なのですか?」
「もちろん可能ですよ?ただし、錬金術師のスキルを発動させることが条件で、本職の時と違ってレベルアップに必要な経験値は多いのでレベルアップにはより多くの時間を要しますが・・・」
「そ、そうですか・・・」
サブ職業のレベルアップは可能だとのことでほっとする反面、錬金術師のスキル上げがかなり面倒になってしまったようである。
「マコトよ、おおかたのことは理解したかの?お主にはわしの弟子として、遊び人として、わしの冒険ギルドに入ることを勧めるぞ?時々お主の錬金術スキルも活用したいところだしな」
「わ、わかったよ、それが一番効率がよさそうだからな。ただの遊び人じゃ何もできないままだからな」
「よし、決まりじゃな!お姉さん、この場で早速じゃが、この者、マコト・カミヤをわしの冒険ギルドのメンバーにしたいので、登録手続きを頼むぞ」
「了解しました、大賢者ワイズ様」
こうして、俺は女賢者ワイズの弟子入りが確定し彼女の冒険者ギルドに入ることとなった。