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第0節:ログイン

 とある大学の研究室。

 俺、神谷誠は大学2年で、理工系の専攻である。いわゆる“りかけいのおとこ”である。

 ちなみにヘドロや磁石モチーフの召喚獣を使役したり、パチスロ屋でイカサマしようと企んだり、将来の夢ははぐれ研究員とかではない。


 ちゃんとした企業でちゃんとした研究員として一生暮らすことが夢だ。そんで今日は先輩のある実験の手伝いのため、研究室にお邪魔していた。


 その先輩は、美人でアニメで例えるならA〇IAの〇リ〇アさん的な包容力のあるお姉さんタイプである。

 正直言うとそれ目的で研究室についてきたというのは、脳内会話だけであってほしい。恥ずかしいから。


 研究室には、その実験で用いられる筐体がある。筐体には物を入れることができるケースが内蔵されており、どうやら実験対象物を入れて行う実験であることが推察できる。

 実験概要は、ケースに入れた物体を指定した場所へ指定した時間に空間移動させるというものである。わかりやすく言うと、タイムマシンだ。未来限定だが。

 使い方としては、タイムカプセルみたいなもんで、あとから自分たちで受け取れるようにするとのこと。

 よくSFとかで見る冷凍保存コールドスリープみたいな使い方を目指しているとのことである。

 でも、先輩の白衣姿いいなぁ・・・、と俺はキモイ目つきで先輩を嘗め回すように観察していた。


「神谷君?そろそろ実験始めるけど、スイッチ押し担当してくれない?」

 ボーッと先輩を眺めていたので、いきなり話しかけられ、俺はビクゥッとなってしまった。


「あ、はい、了解承りましたでございます」


 しまった、めっちゃ畏まった言い方になってしまった。ございますって何だ?別に要らんじゃねぇか!


「あら、うふふ、では今日はこのバナナを転送する実験をするね?バナナを装置にセットしたら私がカウントするから」


 バナナでタイムマシンの実験って某タイムリープものまんまですね、先輩!どうせ、ゲル化しちゃうんだろうけど。


 そんな俺の脳内会話はどうでもいい、実験だ実験!


「先輩、バナナのセット完了しました!いつでも行けます!」


 俺は、そういうと先輩は踵を返す。ふわりと先輩の髪の毛のいい匂いが漂ってきた。何て香しいんだ、クンカクンカ・・・。


「カウント10秒前、9、8、7、・・・・・3、2、1、」


 ポチっとな。


 俺は、スイッチを押した。

 ところが、バナナには何も起こらない。


「おっかしいなぁ・・・、この間はうまくいったのに・・・」

先輩はしゅんとした表情になったが、こんな先輩の可愛い表情を間近で見れるなんて、ある意味俺ラッキーだなんて思っていた。


 そんな俺にかまわず、先輩は実験の経過を知りたいがため、しばらくその場を観察すると、


「神谷君、あれ、何?」


 先輩がケースの中を指さす。

 俺もケースの中を覗くが、バナナには変化はないが、その数センチ横のある空間から謎の光が発光している。


「い、いやぁ、何なんでしょうね?」


 と呑気に返事していると、その発光している物質の面積が広がる。


「せ、先輩?これ、何かでかくなってるんですが・・・」

「いや、し、知らないわよっ、男でしょ!?何とかしてよ!」

「実験やるって言いだしたの先輩じゃないですか?うわああああ!」


 パリィンとケースの蓋が割れる。男とか女とか言い争ってる場合ではなかった。

 光はとどまることを知らず、さらに大きくなると、ある大きさでストップするが、何か吸引力のようなものを感じる。

 吸引力が変わらないのは〇イソンだけにしておくれ!って吸われる!?


「きゃあああ!神谷君、助けてよ~!」


 光に吸われていると感じた俺よりも早く先輩は光に吸われていたのだ。先輩は手を差し出してきたので、俺は部屋のデスクに手をかけ、先輩の手をつかんだ。


「何かよくわからないっすけど、今引っ張り出しますからね!?」


 俺は後輩ではあるが、男だ。

 ここで先輩を助けられないんじゃあ、人間以前に男として失格だと思った。決死の覚悟を決め、力を籠める。

 ところが、吸引力はさらに強まりついに握った手が滑るように剥がされ、先輩は光に吸い込まれた。


「いやあああああああああああああああああああああああああああああ」

「せ、先輩~!!うわあああああああああああああああああああああああ」


 何てことだ、と思うのもつかの間、吸引力は加速度的に上昇し、俺も、周りに物体ごとその光に吸い込まれた。


 ―――――――――――――――俺の意識が戻る。

 目を開けると、周りは水で10数センチほど満たされており、天井は無く、丸く空が見えていた。


 その丸の縁からロープが垂れ下がっていて、床までそれは伸びていた。

 そう、どうやらここは井戸の様である

 水は冷たくこのままだと凍え死ぬので助けを呼ぶため大声を出す。


「助けてくれぇええええええええええええええええええ!」


 人気があるかどうかはわからないが何もしないよりはましだろう。

 しかし、シーンと反響音のみでまた静まり返る。

 返事がない、俺はここでただの屍となるようだ・・・ポクポク、チーン・・・ってそんな場合じゃねぇ!


 もうワンチャンだ!せーの!


「助けてく」

「うっさいわい!」


 井戸の外に居るらしき人の返事が返ってきた。おっさんの声である。


 とりあえず俺は救助された。



 救ってくれたのは、がっちり目の体格で何かにつけて「技は見て盗め」だとかぬかしそうな、いかにも職人然とした“おやっさん”な中年男だ。


「助けてもらったのに礼もないのか、このあんちゃんは?」


 周りのおそらく弟子であろう男たちに言われる。

 言葉は一応わかるようである、ただ、いったいどこにいるのかは定かではない。


「助けてくれてあ、ありがとうございます・・・」


 周りの状況があまりできてはいないが、俺はとりあえず感謝の意を表す。


「でもボウズ、見たことない服装だな?どこの出だ?いや、これ“転移者”じゃねえのか?」


 転移!?よく最近Web小説産のアニメなんてよく見かけるけど、異世界に転生とか転移とか・・・。

 まじで?いや、この流れだとエルフのヒロイン登場とかだったりして、てそれは考え過ぎか?とりあえず出身国言えばいいのかな?こういう場合。


「日本の出身ですが・・・」

「ニホーン!?う~んそんな名前の地名聞いたことがあるようなないような・・・、まぁいい、お前、仮に転移だとしても町の井戸の中で本当運いい奴だな?」


 確かにそうだな、運悪ければ魔物がうじゃうじゃいるダンジョンにいきなり放り込まれていたかもしれないんだ。

 人間がいるところでほんと助かった。

 おっさん、おやっさんどっちで呼ぼうか?おじさんかなぁ?


「おじさん、その転移者って何なんですか?俺、ある日突然光に吸い込まれて、そのまま死んだんだと思ったんですがね」

「おやっさんでいい、別にアンタは死んじゃいないよ。ここらではたま~に見かけるのさ、アンタみたいなのを」

 おやっさんでよかったのかよ。

 この世界って電気とかの概念はあるのだろうか?

 “りかけいのおとこ”としてはその辺是非すぐにでも知りたいものだ。今後の生活を考えて。


「ところで、ここってどこなんでしょうか?」


 まず居場所の名前くらいは知りたいものだ。

 なのでベタな質問だが、ここが異世界か元の板世界なのかくらいは判別しておきたいので。


「スターツだ。ようこそスターツの町へ!俺の名前はクリフトだ。鍛冶職人をしている」


 スターツ・・・スタート・・・。何てわかりやすいネーミングなんだ。


「よろしくお願いします。ところでおやっさん?俺、これからどうすればいいんですかね?飯の食い扶持とか、今後の生活とか」

「まず、お前は“異世界者”の登録を“職業人酒場”で行って来い!場所を示した地図を後で渡す」


 やっぱあるんだ。〇イーダの酒場的な場所。ここの人から見たら俺って異世界人なんだなやっぱ。


「そんで、登録を済ましたら。俺のところで働くことになるだろう。どうせロクなスキルはないんだからこの世界で生きていくために俺らのスキル叩き込むよ。んでこちらは人手不足だしな。ガッハッハッハ!」

 WinWinってやつか?まぁとりあえず助かるようだ。ちなみに魔法とかってあるのだろうかと俺は質問をした。


「おやっさん、この世界って魔法とかってあるのですか?」

「あるよ?でも俺らのスキルは“錬金術”だけどな!」

予想通り過ぎやしませんかね?これ。

「あと、電気っていうものは通っているのですか?」

「デンキぃ・・・!?何だそりゃあ?」

ほんっと“異世界”だなここは!まるでゲームやファンタジーの世界じゃないか!電気の概念はなさそうだな、いや、あったとしても雷とか雷呪文の魔法とかかな?とりあえず技術的に電気は組み込まれてはいない様である。

「俺の名前言ってな」

 クリフトという中年男は突然立ち上がると、

「坊主!これが錬金術だ。よく見とけよ」

 おやっさんは、目の前にある石の塊をハンマーで砕いていく。40センチくらいの棒状にまで削り砕いたら、おやっさんはパンと地面に両手を置き、両手の間には棒状になった石が配置されている。何やらぶつぶつと呪文のようなものを唱え出す。

「闇に抱かれる漆黒の刃、この世に生まれし煉獄の賛歌、錬成!」

 おやっさんの目がクワッとなり呪文が実行される。うわ、すげー厨二だ、これ。


 しかも微妙に韻踏んでるし。

 そうこう思っていると、何故かどういう原理か、棒状の石にヒビが入り割れた。


 しかし、それは折れたのではなく中から光る刃が現われ、その刃は暫くすると発光が収まり普通の刃になった。おおっ!


「とまぁ、こんな感じだ。あっちの方ではゴーレムがお手伝いしているがこれも、錬金術の賜物だ。操作者の魔力喰うからめんどいけど」


 おやっさんによるとゴーレムはいわゆる自動人形、俺が前に居た世界では人型ロボットみたいなもので、これらで人手不足を補っているとのことだ。

 でも、ゴーレムを動かすのに魔力がいるから、人手は居るだけ居た方がある意味楽なのである。

 ちなみにゴーレムは錬金術で作れるとのこと。


「今度、ゴーレムの錬成の仕方も教えたいのだが、今はまず武器・防具の錬成から覚えてもらう予定だ。あ、そうだ!異世界者登録に行くんだっけな?はい、地図!」


 俺はおやっさんから、職業人酒場へ行く地図をもらい、今いる建物から外に出た。


 この鍛冶屋の建物は一階が武器・防具・アクセサリーを客に売ったり、修理受付を行う小売店となっており、地下1階が工場となっている。

 正直言うと工場は男ばっかりでむさ苦しい。

 外に出て新鮮な空気を一呼吸すると、地図を確認し、職業人酒場へ向かった。



 職業人酒場に着いた。

 いかにもファンタジー然とした風貌の建物で、木の看板に扉も木でできている。

 扉をギィと鳴らして開き、酒場の中に入り、とりあえず受付のお姉さんに声をかける。


「すいません、異世界人登録を行いたいのですが」

「異世界人ですね~。少々お待ちくださいませ~」


 受付のお姉さんは、何かを取りに行ったのだろうかその場から席を外した。すげぇ対応慣れてそうな感じだった。

 ここから見ての異世界人ってそんなありふれた存在なのだろうか?


 暫くしてお姉さんは戻ってきて、石板のようなものを持ってきた。

 その石板から文字が浮かぶ。何故か俺でも読めるようだ。

「こちらが、あなたの現在のパラメーターとなっておりま~す。えと、職種は・・・もう決定しているようですね」

どうやらタブレット端末のようにパラメーターが閲覧できるらしい。


氏名:マコト カミヤ

職業:錬金術師Lv1

HP:12

MP:5

攻撃:5

防御:4

魔力:5

精神:2

速力:7

運:10

スキル:なし


 と記載されている。精神力ひっく!


 お姉さんから一通りパラメーターについての説明を受けると、HPはそのまんま体力、MPもそのまんま魔法をどれだけ使えるかの許容量、攻撃は腕っ節の強さ・打撃・関節技などの物理攻撃の値、防御はそのまんま防御力、魔力は魔法の出力する強さ、精神は魔法に対する耐性の強さ、速力は足の速さ・敏捷性、運はそのまんま運のことである。

 運が比較的高い様だな、俺。職種は錬金術師になっているが、これは事前におやっさんからの申請で決まっていたようである。


「これで、異世界者登録は終了となります。お疲れ様でした」

とりあえず、登録は終わったので俺は鍛冶屋に戻った。


「おー!坊主!戻ったか!では早速錬金術の研修に入るか?」

「俺は坊主って名前じゃないです。マコト、マコト カミヤって言います」

先ほど、言いそびれたので名前を自己紹介した。

「マコトって言うんだ坊主。ではまず適当な石を用意してだな、坊主!」

「は、はい!」


 暫くは“坊主”ってニックネームに決定したようである。

さあ、俺の戦いはこれからだっ、てマジどうなんの?これ?まさかここで打ち切りじゃないよね?

 こうして、俺の異世界生活がスタートした。


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