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弘樹の浮気相手 1

《登場人物》


徳永 真実 (35)  警視庁刑事部捜査第一課警部

高山 朋美 (30)     同 巡査部長

東海林 鏡花(32)  パティシエ

東海林 弘樹(故人)  会社員 鏡花の夫

渡辺 マリエ(24)  パティシエ

黒沢 一樹 (46)  久留嶋ホテル支配人

加藤 啓太 (35)  警視庁刑事部鑑識課係長

 



 同日 久留嶋ホテル 3階




 徳永と高山の両名は、久留嶋ホテル内で、テナントの一つとして設置し、被害者と浮気をしていた第三者の存在で捜査線上に上がった渡辺マリエに会いに向かっていた。

 2人を乗せたホテルのエレベーターがゆっくりと下へ降りていく。

「高山君はお菓子、好きかい?」

「私ですか? ええ、大好きですけど。何か?」

「いや、ちょっとね。なんでもないよ」

「なんですか? 教えてくださいよ。というよりも警部はお菓子、好きなんですか?」

「教えないよ」

「教えてくださいよ」

『3階です』

 警部と巡査部長のたわいのない話をしていると、エレベーターが目的の階に到着したことを女性のアナウンスで2人に知らせた。

 ドアが開き、2人は降りて、3階フロアへと一歩一歩踏みしめて歩いていく。洋菓子店チューリップはこのフロア奥にあると知った。

そのお店には弘樹の浮気相手であるマリエが勤務しているという情報も掴んでいた事から会って話を聞かなければいけないという状況に入った。

 徳永は3階の床をゆったりした重みのある足でゆっくりと歩いていく。

「お、これかな?」

 お店の看板には《洋菓子店:チューリップ》とデカデカと記されている。

「ここですね?」

 刑事2人はお菓子店の店内に入り、ショーケースの商品を見てみるとどれも美味しそうなお菓子のラインナップ。

 綺麗なカラメルソースで色鮮やかに整えられたチョコレートケーキ、いちごがふんだんに使われたタルト、真っ白いチーズが平面にコーティングされたレアチーズケーキ。

 どれも人の目には美しい印象を与えているが、こんな世界に似合わない2人には若干の抵抗がある。特に徳永はお菓子店に寄ることは少なかった。

 ましてや徳永はお菓子について「食の種類」という概念でしかとったことなく、お菓子に対する美学、芸術には全く興味がない。

 若々しい女性店員がお客に元気な声を届けていた。

「いらっしゃいませ!」

 徳永は女性店員に向かって、話しかける。

「渡辺マリエさんですか?」

「はい、そうですが……?」

 黒沢と同じやりとりをもう1回することになり、2人は再度、警察手帳を開いてマリエに見せた。

「警視庁の徳永です」

「同じく高山です」

 警察手帳をスーツの胸の内ポケットにしまい、マリエに話し始める。

「東海林弘樹さんについてお話があるのですが……」

 マリエは弘樹という単語を聞いただけで、表情が一変した。

「すいませんが、今は業務中で、今はちょっと……仕事が終わった後で自宅の方に来ていただけると、夜7時には家にいると思うので」

 徳永は少し黙り、こちらから折れる事にした。

「そうですか……では、その時に自宅の方へお伺いします。お忙しい時におじゃましましてすいません。高山君行こうか」

「えっ? あ、はい……」

 徳永はマリエに対して軽く礼をして、店を出ていく。高山もそのあとで出ていく。

 高山は背伸びをしながら歩く徳永の隣で、訊いた。

「いいんですか? あれで?」

 徳永は軽く背伸びをする時の変な声が混じりながら返していく。

「渡辺マリエさんは犯人としての要素が薄い。でも結構恨んでいたみたいだね。被害者の名前だした時に、嫌な顔していた」

 高山は少し考えながら、マリエの応対の素振りを省みて、考えてみると確かに嫌な顔をしていたことが理解できた。

「確かに」

 徳永は隣の彼女の反応を見ながら続けていく。

「それに、恨みがあったとしてわざわざ浮気をする時に別荘まで呼ぶかい? 被害者夫婦は今は別居中の上に、離婚調停中。そんな中、勤務地とは正反対で山奥の別荘なんかに彼女を呼ぶかな~?」

 高山は警部の言葉の内容について納得しながらも再度、確認をした。

「なるほど、ってことは、怪しいのは……被害者の妻ってわけですか?」

 警部は巡査部長の言葉に首を縦に振った。

「東海林鏡花さんね~可能性は充分ありえると思うよ」

「確かにそうですけど……まだ確実ではないんでしょう?」

「そこなんだよ。そこが問題だ。肝心な狂気は持ち去られているし、死後、一週間以上で発見されてるとすれば、もう既に犯人は、凶器を隠滅した可能性が高いだろうね」

「あっ、すいません。電話です」

 高山はカバンから震える携帯電話を取り出し、通話ボタンを押して耳に当てる。

 相手は加藤だった。

「もしもし。なんですか?」

 大きな声が高山の耳を通す。

『おい、その言い方やめろ! 課は違っても上司だぞ?』

 電話の相手が加藤である事を警部は大体見当がついていた。

「加藤か?」

 高山は徳永に嫌な顔をしてい電話の相手があたっていることを示す。

「ええ! そうですよ」

 徳永にも聞こえるくらいの大声が電話越しで聞こえた。

『聞いてんのか?』

「はいはい。すいませんね。どうせ、また警部に用があるんでしょ?」

 加藤は電話の内容を当てられて、キョトンとしている。

『えっ? なんで分かった……?』

 高山は加藤の言葉を聞いてため息をついた。

「今ので確証を得ました。また電話番号聞いてないんですね? 頼むから私の携帯から掛けるのをやめてもらっていいですか?」

『分かった。今度聞くからさ。徳永を出してくれ』

「これっきりにしてくださいね」

 高山は加藤に呆れながら、徳永に電話を手渡して、通話相手を交代させる。

「はい」

『お前か。被害者の頭に面白いもんが乗っかってたんだ』

 徳永は少し、眉間にしわをよせた。

「なんだ? チョコレートとかじゃないだろうな?」

 沈黙が10秒ぐらい続く。

「図星か……」

『当てられるとは思ってなかったよ! 頭にチョコの成分カカオと鉄分やミルクの成分が表示されてな。これは大分面白い事件になってきたなと思って連絡したわけ……』

 徳永は加藤の話を聞いて、首を縦に振りながら頷いた。

「確かに、いい情報だな」

『だろ?』

「切るぞ」

『お、おいおい、ちょっとまっ……』

 徳永は通話を切り、高山に携帯を返す。

「何の話だったんです」

「ただの世間話だよ」

 徳永はメガネを外してメガネレンズ拭きで、ついた埃を掃除していた。


第6話です。 さて今回は浮気相手である渡辺マリエと初対面ですな~徳永警部はどう切り開いていくのか、次回をお楽しみに!!

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