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対峙:運命の出会い

《登場人物》


徳永 真実 (35)  警視庁刑事部捜査第一課警部

高山 朋美 (30)     同 巡査部長

東海林 鏡花(32)  パティシエ

東海林 弘樹(故人)  会社員 鏡花の夫

渡辺 マリエ(24)  パティシエ

加藤 啓太 (35)  警視庁刑事部鑑識課係長

 同日 東海林 鏡花の自宅 



 鏡花は、使った凶器を隠滅し終え、新しいチョコ菓子のメニューを考えていた。



 あれから7日が経つ。


 

 彼女はここまでの予定が順調すぎていて、逆に恐ろしく感じている。

 警察が自分の所に来る事は夫を殺して予測できており、実際に2人の刑事がこの自宅まで押しかけてきた。

「あなたの夫が死体で発見された」と。

 


 それもそのはず。彼女わたしが弘樹を殴り殺したのだから。



 まさか高校時代のクラブ活動で得た物を活かせるとは思っていなかった。

 悲しみの演技、泣きの演技を、嘘を見破るプロとしても有名な職業の刑事。この肩書きを持った2人の男の目の前で初めて演技し、見事に騙されている。この結果に満足し、自分が女優としてやっていけるのではないかというぐらいの勢いでいた。

 しかし、1つ不安な要素がある。それは、この隠滅した証拠をどうするか……

 数分が経ち、溶かしたチョコレートが少しずつ、火に温められて、色が薄くなってきているのを目で感じながら、彼女は閃いた。



 人に渡せばいい!



 鏡花は冷凍庫の扉を開けた。

「早く渡せばいい。そうすれば、この家を調べられても大丈夫なはず」

 彼女は、ずっと不敵な笑みをこぼしていた。




 同日 鏡花の自宅 午後4時




 徳永と高山の2人は近くの駐車場に車を止めて歩いて鏡花の自宅へと向かった。

 歩いていく間、周りの住宅街を見ていく。

 どれもこれもが高級感ある土地が広そうな家がズラーっ横に並んで建てられているのを徳永は歩きながら左右を見渡して言った。

「こんなところに住ん出るとはね。僕たちの住んでいる世界とは違う気分だよね」

 高山も頷いて言った。

「ええ、私は苦手ですね」

 その後からは2人共黙ったまま、住宅街を歩いて行き、10分ぐらいして、東海林の家と思われる建物にたどり着く。

「あ、これかな?」

 家はそこらへんの高級住宅と同じ形、色のした庭付き一戸建てで、近所の住宅よりちょっと大きいぐらいの家。

 表札には、でっかく草書体で《東海林》と書かれている。東海林 弘樹は婿養子だったらしく。結婚後は東海林家にいたそうだったが、浮気してからは、弘樹が家を出て、別居状態へと入った。



 そして弘樹は殺された……何者かに。



 2人は東海林家の玄関に備わってあるインターホンに徳永の左親指が強くボタンを押し込んでみる。

 機械音が玄関の前で立つ刑事2人の両耳に響き渡った。1、20秒ほどして、インターホンのスピーカーから女性の声がかかる。

「はい?」

 徳永は今までの普通の顔から笑顔に切り替わって、挨拶する。

「警視庁刑事部捜査一課の徳永です。あ、東海林鏡花さんでしょうか?」

「ええ、そうですけど?」

「ご主人の事でお伺いしたい事があるのですが……」

 インターホンのスピーカーからは何も聞こえず数秒、沈黙が走った。するとスピーカーから声が聞こえる。

「少々、待ってくださいね」

 スピーカーが切られ、玄関のドアが開いた。

 開いたドアの先には茶髪のショートヘアーの女性が立っている。この女性がどうやら東海林鏡花らしい。

 



 鏡花と徳永。対峙の瞬間。




 徳永と高山は、鏡花に向けて、刑事ドラマでよくある場面を実際に繰り広げる。

「お忙しいところすいません。警視庁の徳永です~」

「同じく高山です」

 鏡花は心の中では無理やり、平常を保てる様に落ち着きを持ち、お得意の演技で2人に不機嫌そうに答えた。

「また刑事さんですか? 今度は何の用ですか? 弘樹さんの葬式の準備をしなくてはいけないので手短にお願いします」

 徳永は一礼して、鏡花に告げる。

「すいません。忙しい時にお邪魔いたしまして、実を言うと、弘樹さんについてお尋ねしたい事がありましてね。宜しいですか?」

 彼女が対面している2人の刑事のうち1人で、今、鏡花の真正面に立っている丸眼鏡を掛けた男は自分が人生で出会った中でも厄介そうな男の匂いを感じた。

「前の刑事さんにも言ったとおり、私は別居中ですし、離婚する予定でした。まさか、こんな形になっているなんて思ってもいなくて……」

 高山は鏡花に沈んだ空気を直そうとなんとか言葉をつなげた。

「ご安心ください。必ず事件は解決してみせます」

 この一言を聞いて鏡花は、徳永の目線から外して顔を下に向けながら、頷く。

「お願いします」

 徳永は彼女の一礼を重く受け取りながらも続けた。

「もう一つ宜しいですか?」

 鏡花の顔は、本当に嫌そうで悲しそうな顔をしている。徳永も高山もそれは理解している。

「はぁ……」

「事件発生時どこにいましたか、分かりますか? 一週間前ぐらいなんですけど……」

 鏡花は少し考えて答えた。

「一週間前は、私、自宅で、新メニューを考えていましたね。今はこの状況なので何とも言えないです」

 徳永の隣で、2人のやり取りを高山は手帳に書き込む。

「そうですか~ご主人が最近、何かに追われているとかはありませんでしたか? 行動が怪しいとかないですかね~?」

 鏡花はずっと黙り込んで考えるふりをするが、何も出てこないから答えた。

「よく私に電話はしてきましたけど、ほとんど離婚の話でしたわ。何か?」

 徳永は、少し眉間にしわを寄せたが、すぐ反応する。

「いえ、わざわざお時間を頂きありがとうございました」

「今から葬式の準備をしないと。すいませんが……」

 徳永は腕時計の時間を確認してから言った。

「ああ、失礼しました。行こうか高山君」

「あ、はい」

 徳永は鏡花に一礼して、笑顔で一言告げる。

「ああ、また来ます」

 警部の一言を何も反応しないまま、ただ、立ったまま鏡花は見送った。

 2人の刑事は鏡花の家から出ていく。鏡花は2人の影が見えなくなったのを確認した後で、ドアを閉める。

 鏡花はほっとして、胸を撫で下ろす。彼女の心中は、徳永という刑事に恐れという感情が芽生えようとしているのが自分でも嫌というほど理解できた。ちょっとの間、玄関の前で立ち尽くして、何かを考えながらため息をつく。

「あの男もしかしたら使えるかも……」

 悪魔の囁きというのか、悪魔の閃きというのか。自分でさえも恐ろしく感じていた。


お待たせしました!! 第4話です。長くお待たせしまして申し訳ありませんでした!!


話は続きます!!

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